ワレモノ注意
「では、勝負の内容を説明しよう」
外に移動して九兵衛達と対峙する。
「君達の側から無理矢理押しかけてきたんだ。ルールは柳生流に従ってもらう。異存はないな?」
「上等だよ。なんでもこいコノヤロー」
『ヤりたいモンに付き合ってやるよ』
「ぼっちゃん剣法がコラァ、オセロでもやろうってんじゃねーだろうなコラァ」
「言っとくけどオセロ強ェーぞ私は!!四つ角全部とるぞォォォォ!!なめんなヨ!!」
嘘つけ四つ角全部取られて泣いたくせに。
「ここに皿がある。これを各々自分の身体のどこかにつけてくれ」
門下生が小皿を差し出す。
「勝負は柳生が六人、そちらが七人のサバイバル戦。この柳生屋敷全てを使ってとり行う。この敷地内であればどこにいってもいい。敵の大将の首を先にとった方を勝ちとする。つまりこの皿は、戦でいう首級。これを割られた者は、その場でこの合戦勝負からぬけてもらう。だが、たとえ何枚皿を割ろうと、大将の皿を割らねば勝利にはならん。逆にいえば、仲間が何人やられようと大将さえ生き残っていれば負けにはならん。ルールはそれだけだ。あとは自由」
まあ、とにかく大将が生き残らなきゃなんないのか。
「大勢で一人を囲もうが逃げ回ろうがいいってわけかィ。まるで喧嘩だな。いいのか?型にはまった道場剣法なら、あんたら柳生流に分がある。俺達ゃ、喧嘩なら負けねーよ」
「これは柳生流に伝わる合戦演習。我々は年に一度これをとり行い、士気を高め、有事の際幕府がため、戦にはせ参じる準備を整えているんだ。柳生流がただの道場剣法でないところをお見せしよう。君達の誇る、その実戦剣法とやらを完膚なきまで叩き潰して、全ての未練を完全に断ち切ってやる」
生意気なクソガキめ。
「上等だよコノヤロー。喧嘩なら負けねーぞ」
『ぼっちゃん方に喧嘩の恐ろしさ思い知らせてやんよ』
「ちょっと待て。六対七って、そっちは五人しかいねーじゃねーか。騙そうたってそうはいかねー」
「オイ、なめんじゃねーぞ。数くらい数えられんだヨ!!あやうく騙されるとこだったアル!!」
何言ってんだこいつらは。
「七対五って、二人もこっちの方が有利だろーがァァ!!アレ?こっちの方が有利アル…ゴリラぁぁぁ!!有利だぞどーするコレ」
「さ…さっき言った事はナシの方向にしろコラァァァ!!」
「さっき言った事はナシにしろォォ。ナメてんじゃねーぞコノヤロー!」
バカだこいつら。
「先に宣言しておこう。僕とこの柳生四天王この五人の中に大将はいない。我等の大将は既に、この屋敷のどこかにいる。我々を相手にせず、そいつを探して倒せば勝てるぞ」
「なにを…」
「あっと、君等は教える必要はないですよ」
あ?
「精々、僕等にバレないよう気を配ってください」
ああ?
「どのみち、私達はあなた方の皿を全て割るつもりなので。大将が誰でも関係ありませんから」
「「「『あんだとォォコルァァァ!!』」」」
舐めくさりやがって坊っちゃん共めがァァァ。
「それでは勝負開始は20分後」
「うるせー10分で始めてやるよ!!」
「しっかり準備しておいてください」
「するかァぶっつけでいくわボケェ!!」
今すぐぶっ飛ばしてェェ!怒りをバネに今ならお妙にも勝てる……気はやっぱりしないから坊っちゃん共首洗って待ってろやァ!
「腹立つんですけどォ、すかしやがってホント、ムカつく奴らだよ!!あんな奴に絶対お妙さんはやれんん!!」
「いやアンタのものでもないですけど」
柳生共と別れて作戦会議。
「もうムカつくからさァ、こっちも大将ムキ出していこうぜ!丸出しでいこうぜ、いつやられてもOKなカンジで!!」
「OKじゃないっスよ!!一発KOです、そんなトコってか僕が大将!?」
股間に皿を装着されていた新八がぎょっと驚く。
「あたりめーだろ。不本意だが俺達ゃ一応、恒道館の門弟って事になってんだ」
「んな事いったって、もっと強い人が大将の方が…」
「心配いらんぞ、新八君は俺が命を張って護る!色々話したい事あるしな。ウチに住むか俺がそっちに住むか…」
「すいません誰か他の人にしてください!」
新八顔が死にそう。
「んな事より、みなさん、どこに皿つけるんでェ?これで、けっこう生死が分かれるぜィ。土方さんは負けるつもり一切ないんで眼球につけるらしいでさァ」
「オイ、眼球えぐり出されてーのかてめーは?」
うーん…。
『皿の位置なァ…どーすっかな』
「グダグダ考えても割れる時は割れるんだよ。適当に張っとけ適当に」
『だね』
「よし俺はココにしよう」
『なら私はココで』
「ふがふがもごー!!(だからなんで俺だァァァ!!)」
何言ってるかわかんね。もう片目に銀ちゃん、口に私が皿を取り付けるも、すぐに返品された。
「てめーらの皿だろーがァァ!!てめーにつけろや!!」
「片眼だけだとむこうの九兵衛君と、両眼だとメガネの新八とキャラがカブるだろーがァ!空気を読めェェ!!」
「読んでみろ土方!!お前なら読めるはずだ土方!!」
『空気も読めない奴に呼吸をする意味はないぞ土方ァ!』
「だまっとけやドSトリオ!」
「架珠ー!!」
ん?
「私スゴイ事考えたアル!足の裏コレ歩いてたら見えなくね、スゴクネ?コレ?」
ヒョイ、と得意げに神楽が見せる足の裏には皿がある。
「これなら絶対気づかれないアル!キャッホォォォォ」
ーーーーパキッ.
神楽の足下から軽い音が響いた。地面につけていた足を持ち上げてみると、皿は粉々に割れていた。
「痛っ〜、なんか踏んだアル。切れたアル、足」
『ごまかしてんじゃねェェ!!お前何してんだァ!!勝負始まる前に皿、粉砕って!!』
しゃがみ込む神楽の頭を力一杯引っ叩く。もうホント、バカ!!
「どうすんだコレ!?どうなるんだコレ!!」
「まだ勝負始まってないから取換えてもいいんじゃないすか?」
「ちょっと取換えてこい!柳生の人に言って皿もらってこい!」
「オイ待て」
ん?
「敵の作戦がわからねー以上、単独行動は危険だ。近藤さんともう一人で大将の守備、残り四人は二人ずつ二手に分かれて、別ルートで敵の大将を狙うぞ」
「汚職警官とタッグなんてご免こうむるネ」
「てめーらと組むつもりなんざサラサラねェよ。丁度ツラ見んのは嫌になってたトコだ。大将の守備はそっちに任せる。いくぜ総悟」
「じゃっ、俺こっちいくわ」
「俺こっち」
『私向こうにする』
「土方さん。ドSトリオ勝手にガンガンいっちゃいました」
「…………」
とにかく皿割れなきゃいいだろ。多串君の話は中途半端に切り上げてさっさと歩き出した。
next.
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