昨日の敵は今日もなんやかんやで敵
「うがァァァァ!!」
ーーーーズシャァァアア.
「なんだァァァコイツらァァ!!」
「まるで歯がたたぬぞ!!一体どこの門下だ!?」
田舎者舐めんなよ。息なんて合わせる気ゼロで、私らは目の前の門下生達をぶっ飛ばしていく。
「新八ぃ。てめェは減給だぜバカタレェ!!なんでこんなマネする前に俺に一言言わなかった!一人で煮つまりやがって!」
『万事屋カルテットの決めポーズも、披露すんのに適した場所じゃんか!私らを蚊帳の外にするなんて新八の癖に生意気だぞ』
「そうアル!一人でこんな面白そうな事シコシコ計画して。一言声かけろヨ!お前はもう今日からシコッ八な!!」
「貴様らァ!新八君の気もしらんで勝手ぬかすなァ!!新八君は貴様らを巻き込みたくなかったというのがわからんかァ!!」
「うるせーゴリラ。じゃあなんでお前は巻き込まれてんだよ!さては、てめーが新八たぶらかしたな!」
『ウチの子に何すんだァ!』
「こいつは俺達のエゴだからよ!!」
振りかぶった鉄扇を受け止めて叫んだゴリラから離れ、再び門下生達の相手をする。
「お妙さんは自ら望んでここへ嫁ごうとしている!理由はしらん!だが俺達はそれが気にくわん!あんな顔でさよならなんて、できるわけもねェ!!」
怯み出した門下生達から勢いがなくなる。
「こんなマネしても誰も喜ぶ奴なんていないのかもしれん!お妙さんはこんな事望んでないのかもしれん!それでも自分の我を通したい奴だけここに来た!お妙さんにもう一度会いてェ奴だけここに来た!」
「退けェェ東城さんを、東城さんを呼んでこい」
気絶した奴らはその場に、残りの奴らは慌てて奥へと引っ込んでいった。
「大義もクソもない戦いに余計な奴、巻き込むワケにはいかんだろ!なのになんでお前らまで来るかなァァもォォォ!!」
心底困りますって顔してゴリラは多串君達に振り向く。
「近藤さん、心配いらねーよ。俺も我ァ通しに来ただけだ。柳生には借りがある、そいつを返しに来ただけさ。ちなみに今日は仕事休みだし、そこんとこも心配いらねェ」
「近藤さん、俺も我ァ通しに来ただけでさァ。このままいけばゴリラを姐さんと呼ばなきゃいけなくなる。ちなみに今日はバリバリ仕事でしたがサボって来ました」
「オメーはホントに我だな!!」
多串君のマネして、タバコの代わりに葉っぱ持ってる沖田クンはホントに我だ。別に関係ないけれど。
「なんでィ、近藤さんだってサボリのくせに」
「俺はちゃんと有給とってきました!!」
「銀さん…」
前を向いたまま、今まで何も言わずにいた新八が口を開く。
「僕ねェ…もうシスコンと呼ばれてもいいです。僕は姉上が大好きですよ。離れるのはイヤだ。できる事ならずっと一緒にいたいです。でもねェ…姉上が心底ほれて連れてきた男なら、たとえそれが万年金欠のうさん臭い男でも、ゴリラのストーカーでも、マヨラーでも、ドSでも、マダオでも痔でも、姉上が幸せになれるなら、誰だって構やしないんです。送り出す覚悟はもうできてるんだ。泣きながら赤飯炊く覚悟はもう、できてるんだ…僕は仕方ないでしょ、泣いても…そりゃ泣きますよ。でも、泣いてる姉上を見送るなんてマネは、まっぴら御免こうむります」
震える声に新八が泣いてる事が伝わった。
「僕は姉上にはいつも笑っていてほしいんです。それが姉弟でしょ」
兄弟なんていた事ないから、よく分かんないけど…新八がそう言うなら、そうなんだよ。
新八の気持ちを聞いた私らは、新八の横をすり抜け歩き出す。
「銀ちゃん、架珠。アネゴがホントにあのチビ助にほれてたらどうなるネ。私達、完全に悪役アル」
『今更なに言ってんの。悪役にゃ慣れてんでしょ。人の邪魔すんのも任せろって話だよ』
「新八、覚えとけよ。俺達ゃ、正義の味方でもてめーのネーちゃんの味方でもねェよ」
なら誰の味方か。そんなのは決まってる。
「てめーの味方だ」
新八が柳生に挑むってんなら、私らだってどこまでも付き合ってやるさ。
とりあえずどこに行くかとなり、道場へと私らは向かった。
「チクショオ!!」
「東城さん!?」
糸目の、さっきも門下生が言ってた「東城さん」がお膳をひっくり返す現場に遭遇。あー、いま昼時か。
「オババの野郎ォォ!新鮮な卵を仕入れとけっていっただろーがァァ!!また黄身が崩れたぞォォォ!!ちょっとスーパー行ってくる!!」
あー、卵かけ御飯にこだわり強い人っているよね。
「落ちついてください東城さん、食べ物くらいで!!」
「うるせェェェ全身男性器!!」
「全身!?なんかどんどん侵食が進んでるんですけど!!」
なんだこのコント。芸人の集まりかよ。
「!」
んでやっと気づくし。遅いし。あと、神楽にタイミング良く卵かけ御飯がぶっかけられたし。
「オイ、チャイナ。股から卵たれてるぜィ。排卵日か?」
ーーーーガッ.
ーーーードゴォ.
横からちょろっと言った沖田クンの顔面をわし掴みして、神楽は力一杯投げ飛ばした。
「今のは総悟が悪い」
ウン。
「いってェ、何しやがん…」
ーーーーカチャ.
「!」
起き上がろうとした沖田クンの後頭部に、チャラ男とメガネと大男が刀の切っ先を突きつける。
「いやァ、よく来てくれましたね。道場破りさん」
糸目が言う。
「天下の柳生流にたった六人で乗り込んでくるとは…いやはや、たいした度胸。しかし快進撃もこれまで。我等柳生家の守護を司る」
「北大路斎」
「南戸粋」
「西野掴」
「東城歩」
なんだよ東西南北かよ。
「柳生四天王と対峙したからには、ここから生きて出られると思いますな」
「あん?てめーらみてーなモンに用はねーんだよ。大将出せコラ。なんだてめーら?どこの100%だ?何100%だ?柳生100%かコノヤロー」
「アンタらのようなザコ、若に会わせられるわけねーだろ。俺達が剣を合わせるまでもねェ。オラッ、獲物捨てな。人質が…」
うおりゃあああああああ。
ーーーーブロロロロロ.
「「「「「ぎゃああああ!!」」」」
ーーーーズドドドド.
チッ。避けたか。
「ちょっ、何してんの!?」
「捨てろっていうから」
「どんな捨て方!?人質が見えねーのか!」
全員で力一杯投げ捨てた武器は沖田クン達がいた辺りに見事命中したけど、残念ながら誰にも当たらなかった。
「残念ながらそいつに人質の価値はねェ」
「殺せヨ〜殺せヨ〜」
「てめーらあとで覚えてろィ」
日頃の行いだよなやっぱ。
「東城殿。こ奴らの始末、俺に…」
「やめろ」
「!」
あ。
「それは僕の妻の親族だ。手荒なマネはよせ」
「若!!」
出たな眼帯。
「まァ、ゾロゾロと。新八君、君の姉への執着がここまで強いとは思わなかった」
「今日は弟としてではない。恒道館の主として来た」
真っ直ぐと眼帯少年と向き合う新八。
「志村妙は当道場の大切な門弟である。これをもらいたいのであれば、主である僕に話を通すのが筋」
「話?なんの話だ」
「同じく剣を学び生きる身ならわかるだろう。侍は口で語るより、剣で語るが早い」
「剣に生き剣に死ぬのが、侍ってもんでさァ。ならば」
「女も剣で奪ってけよ」
「私達と勝負しろコノヤロー!!」
「勝負?クク…バカバカしい」
『女奪っといてシティー剣法のお宅が負けたら恥ですものねェ〜。それともセレブ様は剣より金で片付ける方が、怪我もしないから身の丈に合ってますかァ〜?』
「…我が柳生流と、君達のオンボロ道場で勝負になると思っているのか?」
「なりますよ〜坊ちゃま。僕ら恒道館メンバーは実はとっても仲が悪くてプライベートとか一切つき合いなくて、お互いの事全然しらなくてっていうかしりたくもねーし死ねばいいと思ってるんですけどもね〜」
ホントホント。
「お互い強いってことだけは、しってるんですぅ〜」
少なくとも、おたくらよりはな。
next.
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