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「新八、今日も来ないネ」
『あいつ今日、買い物当番なのに』
「パシリのくせに無断欠勤たァ、クビにしてやろーか」


ゴリラに酷い目にあった日から数日。ちょっと前から新八は万事屋に姿を見せなくなった。おかげで神楽のオセロの相手が私に回ってきて四六時中オセロ。


「ねェ架珠、アネゴもう帰ってこないアルか?アレから一度もウチに帰ってきてないって…なんか、修業してるから帰れないって手紙がきたんだって」
『花嫁修業。嫁ぐ前に色々勉強してんでしょ。柳生家といえば、名家中の名家だからね。女の憧れの玉の輿だよ』


あの眼帯の少年、後から新八に詳しく聞けば柳生の跡取りだとか。かつては将軍家の指南役もしてたようで、セレブだセレブ。お妙達と幼馴染なようで、結婚の口約束を叶えに来たそうな。


「ガキの頃の約束だかなんだかしらねーが、適当にしとくもんだな」
『新八ん家の道場も援助してくれるらしいよ。願ったり叶ったりだわ』


いえーい、盤面が白に染まっていく。


「銀ちゃん、架珠…私のマミー言ってたヨ。結婚する、笑ってられるの最初のうちアル。鬼ババになる事もアルネ。でも最期の時、また笑えたらそれ上々な人生ネ」


心配そうに神楽の眉尻が下がった。


「アネゴ…笑って死ねるアルか」


笑って死ねるか、か…。ごろりと、ソファに寝転がる。


「アネゴなんか隠してるネ。なんか無理してるネ。間違いないアル。これ女の勘ネ」
『バーカ。女の勘以前に、あんなモン誰だって分かるっつーの』
「何考えてんのかわかんねーけどよ、あの女自分で選んで行ったんだろ」


社長椅子でジャンプ読んでた銀ちゃんは、くるりと椅子を回転させて背を向ける。


「だったら…笑うだろ。あの女なら」


お妙の年なら、自分で選んだことに責任持たにゃならん年でしょう。だけど、最後に見せたあの涙を見てしまっては…。


「チッ」


社長椅子から聞こえた舌打ちに、私も神楽も顔を向ける。


「いやなもん見ちまったぜ」


見ちゃったものは、しょうがないよね。起き上がって盤面を見たら神楽のやつ、全部黒に変えてやがったので一発殴り、私らは出かける準備をした。


「「「「『あ』」」」」


柳生家の前まで来ると、向こうから歩いてきた多串君と沖田クンと遭遇。非番らしく私服姿で、恐らく似たような用事だろう。


「オイてめ、隣歩いてんじゃねーよ並ぶな、仲良いと思われんだろ」
『そっちは仲良くしたくてもマジ勘弁なんで。生理的にごめんなさいなんで』
「お前らが後ろを歩け。短い足動かして俺の歩幅に付き合おうとすんな」
「落ちろォォ」
「お前が落ちろォォ」


階段の半ばで、ここまで無言だった私らも我慢の限界でやっぱり口論。つかなんでコイツらの為に我慢しなきゃなんないんだ、蹴落としてやる上から。


「姉上を返せェェェ!!」
「お妙さんを返せェェェ!!」


柳生家の開け放たれた門の向こうから、新八とゴリラの声がする。ピタリと、私らは互いを突き落とそうとした手を止めて、真っ直ぐ上を目指した。


「賊めェェ!!」
「斬れェェェたった二人だ!!囲んで斬り捨ててしまええ!!」


ーーーードシャアアア.


「!!」


たどり着けば、勇ましく門下生達が二人を取り囲もうとするから、手近にいた門下生を銀ちゃんと二人で薙ぎ倒す。


「なっ…なんだ貴様ら!?」
「わりーな、二人じゃねェ」


雨をしのいでいた笠を脱ぎ捨てる。


「新八ぃ、今日から俺らも門下だ。なんだっけ?天然パーマ流?」
「銀さん!!架珠さん!!神楽ちゃん!!」
「お前ら!!」


天然パーマ流には入りたくねェわ。



next.

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