火曜7時は坂田家を食卓で
「オイオイ、何やってんだお前、こんな所で」
屋根の修理に来た料亭で、ゴリラと倍以上デカイモノホンのゴリラと遭遇。
「女にモテないからってついにゴリラと交際スタートアルか」
「いいすぎだぞ神楽、冗談でもいっていい事と悪い事があんだろ。弟さんかなんかだよ」
『失礼なのはどっちだよ。妹さんでしょう着物見てみ?』
モノホンのゴリラの着物は女物でしょ。
「オ…オイオイ、冗談よしてくれよ〜。コレ、ペットだよペットォ」
はァ?
「ペット?マジでか。こんなデケーの飼ってんだ」
「ペットショップで哀しげな目でこっち見てたからついな…」
さすが幕府の犬。金はあんだなやっぱ。
「よーしよーし、これ食べな」
「ちょっと何勝手に食べさしてんの!!」
銀ちゃんと一緒によじ登った神楽はペットのゴリラに何か食わせてる。なんだあれ?
「豆パンの豆アル」
「豆パンの豆!?お前王女に何食わしてんの!!」
『王女って何よ?』
「えっ?いや、あの、オージョって名前なんだよ!」
えらく洒落た名前にしたな。キラキラネームかよ。
「とにかくさァ、あの、ウチのオージョちゃんは今おなか一杯…ホラ吐き出した!!お願いだから、もうやめて、あの…」
「食いもの粗末にすんじゃねェェ!!」
「ちょっとォォォォ!!」
豆パン吐き出したオージョを渾身の力で平手打ちした銀ちゃん。オージョ鼻血出しちゃったよ。
「ちょっともうホントやめてっ!」
「ダメだよ〜お前、幾らかわいくても怒る時は怒らにゃ」
「わかったから!ちゃんと躾するから!もう離して!!」
グイグイとゴリラがオージョ引っ張るもんだから、仕方なく二人はオージョの肩から降りる。
「あの、俺達散歩の途中だから。もう行く…」
ーーーーガス.
ん?
歩き出したゴリラの袴の裾から、何か転がり出てきた。
「アレ、何それ?」
「あっ、ウンコアル」
『ホントだ』
どっからどう見ても。
「今お前の袴の裾から転がり出てこなかった?」
「一回蹴ったよ。ワントラップいれたアル」
『おいおい、アンタこんな所で脱糞…』
「オージョォォ!!」
ーーーーガバァン.
「どこでもウンコすんじゃねーって言ったろーが!!」
言い終わるより早くゴリラはオージョを池の中に投げ飛ばした。
「ホントっ、しょーがねーな!どこでもウンコたれてね、この子はホントもうまいってんの!てんてこまいなの!」
「いやお前から出てきたってアレ」
「ちょっとちょっと坂田君〜いい加減にしてよ〜。俺、年幾つだと思ってんのォ。もうすぐ三十路よォォ!んなワケないじゃん!!」
「オイ三十路、ミソの路できてんぞ」
「!!」
点々とゴリラの後を続いている。
「違げーよコレ、コレはアレ!!道に迷わないようビスケットを目印に置いてきたの!!」
「もう迷ってるだろ、人生という名の迷路に」
見苦しいぞゴリラ。
ーーーーズゴォォォ.
凄まじい勢いで池の中から復活したオージョは、私らから見ても怒り爆発の顔面してた。
ーーーードゴォ.
「「「『ぐぇぶ!!』」」」
怒りマックスのオージョに殴り飛ばされて、私らは揉みくちゃしながら障子を突き破った。
「いででででで!!」
「オイぃぃお前!アレなんとかしろよ、お前のペットなんだろ!!」
「違う!!実はアレ王女!!」
『名前はどーでもいいんだよ!!』
「いやだから、王女なんだって!!」
何言ってんだこんな時にこのゴリラは!ゆっくりと私らを見下ろすオージョは、これマジギレだ………ん?
「アレ!?お妙さん!」
飛び込んだ部屋にはお妙だけじゃなく新八と、あとなんか知らん眼帯の少年がいた。
「アレ、何コレ、なんかマズイトコ入ってきた?」
『サーセン、お取り込み中ですか?』
「アネゴ!!こんな所で何やってるアルか!?」
「…みんな」
ん?
「さようなら」
…………は?
目に涙を溢れさせたお妙の告げた訳れの意味がさっぱりで、だけど、ただ事じゃない事だけは十分に分かった。
「オイ」
ーーーードォン.
「げェェェェ!!オージョ来たァァァ!!」
銀ちゃんがお妙に手を伸ばそうとしたらオージョの邪魔が入った。しつこいな!そんなに怒らなくても良くない!?
「ちょっ、とりあえずみんな謝って!!」
『なんて?』
「ウホって!!」
こっちでギャーギャー騒いでいたら、その間に眼帯の少年がお妙を抱えて離脱しやがった。
「姉上ェェェ!!」
「いや、姉上じゃなくてウホって…」
ーーーードォォン.
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
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