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「はい、どいたどいたァァ!!」

「うわァァなんだァ!?」



ん?なに?



「あああっ!!アレは…力士!!力士です!!」



おお…でかい。



「突如現われた力士の集団が、人ごみを押しのけテーブルを占領!すさまじい勢いで団子を食べていく!まるで団子がマルボーロに見える!!怪物!まさに怪物です!」



おお…。



「餡泥牝堕500皿!魂平糖450皿!50皿も差がついた!これはくつがえし難い!」

「旦那ァ!」

「心配いらねーよ」



うん。



「ここまでは腹ごしらえです」

「腹こしらえちゃったの!?」



あー…もー…うえっ。腹から団子が逆流しそう…。私や銀ちゃんや新八はなかなか限界。



「ダメじゃん!!もうダメじゃん!!」

『バカ言っちゃいかんよ。こっからが、仕事の時間さ』



うっ。腹重…。



「カモーン」



重たい動きの私らとは違う、軽いフットワークの神楽と向き合う。



「前菜の時間はおしまいだヨ」

「!!」

「『新八ィィィ!』」

「はいィィィィ!!」



串から取り出された団子を、神楽目掛けて投げとばす。



「たらふく、喰らいやがれェェ!!」



投げ飛ばされた団子は神楽の大きく開けた口の中へ次から次へと吸い込まれる。掃除機みたいだな。



「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛こっ…これはなんだァァァ。一人は団子を串からとり食べやすくし、二人はそれを絶妙のタイミングとコントロールで果断なく少女の口に放りこんでいくぅぅ!!コンビネーション!!絶妙のコンビネーションの為せる業です!!早い!とんでもない早さだ!負けじと力士も食らいつく!!互角!!互角だァ!!両陣営一歩もひけをとらないせめぎ合いだ!!」



やっぱスゲーわ神楽。



「しかし、恐るべきはあのチャイナガールの胃袋。底がないのか!!力士五人相手に互角…いやそれ以上の…あ゛あ゛!!」



ん。



「ご飯を食べている!?なんと!!団子の合間にご飯を!!」

『お前バカかァァ!!もうご飯はいいっつってんだろォォ!!』



いつの間にご飯用意したよお前は!!



「欧米流なんてクソくらえじゃ!!」



ーーーーパン.

あ。



「ぐあああああ!!目が…目がァァァァ!!」

「神楽ちゃんん!!」

『飯なんか食うからだよバカたれがァァ!』



団子が両目にクリティカルヒットしてしまった神楽に慌てて私ら駆け寄る。



「目にタレがァァァ!!」

「おおーっと目にタレが入ったァァ!!これは痛い!しばらく立ちあがれそうにありません。これは餡泥牝堕、絶好のチャンス!!ああーっと、しかしこちらも限界が近づいている」



さすがの力士もあの量は辛いか…よし。私と銀ちゃんは横目に目を合わせた。



「新八…さっさと神楽病院につれてけ」



動くたびに腹がもげそう。



「あとはこの、糖分王に任せな」

『糖分の守護神もいるからね』



糖分と書いた鉢巻をしめて気合いを入れる。



「銀さん、架珠さん、無茶だそんな腹じゃ!!それに銀さん、これ以上甘いもの食べたら…医者に止められてるのに!」

『無茶だァ?何言ってんの、糖分の守護神舐めんなよ』

「近頃の奴ァ諦めが早くていけねーよ。なぁオヤジよ」



ふにゃりと、オヤジの顔が苦笑に変わる。



「ああ、まったくだね」



さて。ラストスパートだ。



「おおーっと、まだやる!まだやるのか!!」



当たり前だろーが。勢いは落ちたけど、私も銀ちゃんも団子を両手に口に詰める。



「あれだけの団子をたいらげ、もはや胃袋は限界のはずよ!!なのに何故食べるの!?そんなに甘い物が好きなの!?」

「…………悪いがこちとら、ガンコで諦めの悪い、アナログ派でね」



そういうことだよ。うっ…辛ァ。



『もうギブ…あとは頼んだ…』

「うぐ…」



わかんねーよ。多分任せろとかそんなとこか。しかし、隣の力士共も限界の様子で、一人を残して撃沈。



「もはや両陣営限界!!気力だけで団子をのどに押しこんでいる!時間はあと一分!!皿は全く互角!!」



ーーーーピタ.



「ああーっとここへ来て、両陣営とも動きが止まったァァ!!」



脂汗ヤバイなどっちも。



「最後の最後に障害となっているのは何なのかァァ!?」

「どうしたのよ!!なんで食べないの!あと一つ食べれば勝ちなのよ!」



そのあと一つが辛いんだよ。



「う…う…団子見ただけで吐きそうだ」



あらら。



「ムフフフ。飽きがきたか」

「!」

「何百皿も同じ団子食べてりゃ普通飽きもくるわな」

「飽きたですって。そんなバカな!今まであらゆる甘味を味わい、それを生かし、様々な甘味をつくり出してきた私の一品を…飽きるですって。そんなハズないわ。私の団子はないわ。あなたのビンボーくさい田舎団子とは違うの!大体あなたの方だって動きが止まって…」

「世界にある千の味をつくるのがアンタなら、団子しかしらねェ俺は、団子で千の世界をつくるしかないだろ」



オヤジかっけー。地面に座り込んでいた重たい体を起こす。



「旦那。アンタ、ウチに千回もきたか?さすがに飽きたかね」

「バカ言え。飽きちゃいねェ…飽きちゃいねーが、胃袋もなんもみっちりで入れる袋がねェ」



団子を手に取り、身動きひとつしない銀ちゃんの口に突っ込む。



「金玉袋にでも入れな」



うし!!勝った!!



「銀さぁぁん」

「いだだだ」



大歓声に拍手喝采。銀ちゃんはオヤジの娘の巨体に押し倒された。



「…色々やって初めてわかる事もありゃ、一個の事だけガンコにやって初めて見えるもんもあるってことさね」



うわぁ…あっついキスされてる…。



「そーだろ?旦那」

「……ああ。やっぱりアナログ派はキツいぜ」



銀ちゃんの顔はキスマークだらけだった。どんまい、アンドおつかれ。
そして私も頑張った。おつかれ。しばらく体重計とは向き合いたくないな。





next.

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