2
「その通り!!」
帰ってきた神楽は旦那となぜかさっちゃんを連れてきた。
「俺がこのメス豚と父クリクリ合ってたらアンタの旦那…見事にワナにかかってくれましてね〜。俺の父に触るなァァァと言わんばかりに飛びかかってきました」
「そんなこと一言も言ってないぞ!というかみち子ォ!お前こんな所で何やってんだ!!」
「とぼけちゃいけねーアルぜ。みち子のジェラシーは置き去りに、アンタは一丁前に愛人にジェラシーたァどういう了見アルか」
「グラさん、いくらなんでもそりゃ決めつけすぎじゃないの?あれで愛人と決めつけるなんて思い込み激しすぎだって」
「このスケベ野郎がァァァ!!どこまでいったァァァ!Aか?Bか?Zかァァァ!!」
「奥さんもォォォ!!」
修羅場ってんな〜。奥さんの怒号と新八のツッコミが激しい。
「おっ、落ち着け!お前まだあの事疑ってんのか!?俺は猿飛さんとは浮気なんて…」
一瞬の沈黙。
「とはってなんじゃコラァァ!!」
「ぶへっ!!」
奥さんに蹴り飛ばされた旦那が襖破ってこっち飛んできた。邪魔なんだけど。
「猿飛さん以外とは何かあったってことじゃないのォォ!!ねェ猿飛さん!?」
「そういえば最近、店長、脇さんとフガフガした感じになってたわね」
「ちょっとォォォォ!!猿飛さん、余計な事言わないでェェ!!」
「フガフガって何ィィZか!Zなのか!つーかZって何だァァァ!!」
うるせー。人が寝込んでんの見えねーのか。あとさっちゃんはどさまぎに銀ちゃんの布団に入んな。案の定追い出されてた。
旦那をシバき、少しは落ち着いた奥さんは居間のソファでタバコ。どこの女ボスだ。ガキどもは走り回るし、旦那は隣で呆然と寝ている。
「……で、どうなの実際のところ」
「やってませんよ」
即答か。
「まーま、わかりますよ、あんなカミさんじゃ、他の女に逃げたくなる気持ちも」
「やってないって言ってるでしょ」
『でもさ、あんだけ怒り狂うってことはアンタにほれてるって証拠だよコレ』
「だからやってないって言ってんだろコノヤロー」
往生際の悪い。
「花屋かァ…いいなァ」
「あとケーキ屋とかも…いいですよね…ってやってないって言ってんでしょ」
「じゃあ脇さんの所に毎日のように通ってたのは何だったんですか」
「それは…」
「花屋の花びらをアレだろコノヤロー」
「お前らホントいい加減にしろよ……………内緒ですよ、カミさんには」
ん?奥さんに聞こえないよう旦那は訳を話し出した。今年結婚十周年のお祝いに、奥さんに花で作った似顔絵を贈るべく花屋に通っていたそうな。
「あ、コレ絶対言わないでね。言わないでね」
「ペッ」
「なにそれ!自分の家でツバ吐いたよ!」
わかるよその気持ち。
「アンタもスミにおけないねェ。なかなか粋な事するじゃないかチッ」
「舌打ちきこえたんですけど。浮気の話の時あんなに楽しそうだったよね」
『んじゃあ、あいつらその絵持って帰ってくるかもしれないね。ああ見えて気のまわる奴らだし』
「ホントですか。まいったな〜。ついにアイツに見せる時が来たか。浮気の疑いかけられても我慢して隠してきたんだ。アイツぅ、驚くだろうな」
ーーーーガララ.
「あっ、戻ってきた!持ってる!なんか持ってる!アレ…」
襖の隙間から覗き見る。
「奥さん」
「旦那さんからの贈りものです」
額縁の中には、確かに似顔絵。けどなんか…アレだな…えらく、シンプル。パックみたいな。
「贈り物?なにそれ」
「旦那さんは浮気なんかしてませんでした。コレを奥さんに内緒でつくるためにコソコソやってたようです」
「私に…」
あーあ、仲直りかよつまんね。
「まち子って誰だコラァァァァァ!!バカにするのも大概にしろォォ!!」
え。似顔絵床に叩きつけて奥さんは泣きながら外へ。
「みち子ォォォ待っ…!!ちょっとォォアンタら何してくれてんのォォ!!」
うわ、雨降ってるし外。せっかく治ってきたのにぶり返すじゃねーか。ん?
「オイオイ、なんだこれ」
「誰だ?こんないたずらしたの」
「花びらで字かいてるわ」
「また手の込んだいたずらを」
地面には向こうまで続くまち子の文字。途中からみち子になってる。結局どっち?
「ブェクシッ」
あーだこーだで、仲直りした夫婦にはもう興味ない。精々仲良くちちくりあってろケッ。
「まち子だかみち子だかワケわからなくなってきたアル」
「アレ。どっちでしたっけ」
『みち子じゃねーの』
「バカだろ。お前らやっぱバカだろ。まち子だよまち子」
結局ぶり返したし、雨の中作業したから神楽と新八まで風邪引いてもう誰が看病すんだよコレ。
next.
▲ back ▼