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もの食べるときクチャクチャ音をたてない







「坂田さーん!!」



夜は夜でまた賑わう歌舞伎町を、手分けして私らはバーさんを探していた。



「八郎さん!どうでした、お母さんは見つかりました?こっちはダメでした」

「こっちもです。お母様どころかお母様を追って店を出ていったきり、狂死郎さんとも連絡が…」



親子揃ってどこ行ったんだか。



「クソったれ。写真のせいですっかりだまされたな。まさか狂死郎がババアの息子、八郎だったとは。あんなに変わってたんじゃ、そらァ母ちゃんでも仏様でも気づくめーって」



そもそもでどうなろうと写真はアテにならなかったわけだ。



「それというのもお前がんな格好して八郎なんて名乗ってたからアル!まぎらわしいんだヨあん!?ジャロに電話したろか!?」

「それはアナタ達が勝手にラクガキして勘違いしただけでしょうが!!」



ある意味奇跡だよな。



「でも何故お母様を目の前にして、狂死郎さんは何もおっしゃらなかったんでしょう。狂死郎さんは五年前からかかさず、お母様に向けて仕送りをされていたといいます。誰よりも会いたかったに違いないのに」



その理由は、狂死郎が店で語っていたことが答えなんだろう。あれは、自分に向けての言葉だったのか。



「八郎さん!」



店のホストが集まる。ババアは見つからなかったが、狂死郎が血相変えて急ぐ姿の目撃情報があったそうだ。さすがNo. 1ホストなだけあり、聞き込みして辿り着いたのは建設途中のビル。



「それ、こっちによこしィ。オカンはその後返したる」

「………」



金が入ってるらしいスーツケースを、狂死郎が勝男に投げた。

ーーーーゴッ.

手を伸ばしていた勝男が察知して頭をさげる。

ーーーードン.



「!!」



スーツケースは銀ちゃんが投げた木刀で機材に突き刺さる。



「なっ…なんやァァァ!?」

『んなうす汚ねー連中に金やるくらいなら私にくれっつーの』

「バカ言ってんじゃねーよ。そいつは大事にとっとけ。母ちゃんにうまいモンの一つでも食わせてやりな」



それが一番だよなやっぱ。



「!!お…お前らはァァァ!」



ーーーードォン.



「!!」



新八がクレーンを操作して建物を突き破る。



「わぎゃあああ!!」



おお、一斉に上から降ってきた。



「僕機械苦手なんですけどォォ!!」



頑張れ新八。



「わァァァァァァァァ!!アカン、ひとまずココから…」

「ぶごををを!!」

「ひ…ひィ!!」



逃げようとする連中を銀ちゃんとぶっ飛ばす。ここの工事はまた一からやり直しだろうな。



「なんちゅー無茶しよる連中や。どっちがヤクザかわからんで…オイ、そこまでにしときィ。このオバはん」



ーーーーフッ.



「!!」

「このオバはんはもらったぜフゥ〜」



クレーンの先に括り付けられていた機材にいた神楽が、バーさんを勝男達から奪還…かと思いきや、バーさんの足に勝男がしがみつく。



「のおおおおお!!」

「!!」



なにあの根性。すげえな。



「このォボケコラカス、なめとったらあかんどォ。お登勢ババアの回し者やなんやしらんが、この街でわしら溝鼠組に逆ろうと生きていける思うとんのかボケコラカス」



いやお登勢さん関係ないし。



「次郎長親分敵に回したら…」



ーーーーブッ.

うわ…。勝男の顔面にバーさんの屁が直撃。クリーンヒットだ。すっげー辛そうな顔してるし。ありゃ相当な臭いだったんだな。バーさんは頬赤くしてるし。なんで?



「何頬赤らめとんねん!」

「溝鼠だか二十日鼠だかしらねーけどな」

「!!」

「溝ん中でも必死に泥かきわけて生きてる鼠を」



バーさんにしがみつきぶら下がる勝男に、銀ちゃんが木刀を構えた。



「邪魔すんじゃねェェ!!」



木刀で殴り飛ばした勝男は地面にコンクリート抉って倒れこんだ。



「兄貴ィィィ!!」



うわ痛そう。



「おんどりゃああ!!」

「ほっときほっとき」



強面を向けていた男の肩に手を回して止めたのは勝男。



「これでこの件から手ェ引いてもオジキに言い訳立つわ」

「あにっ…」

「溝鼠にも溝鼠のルールがあるゆーこっちゃ」



なるほど。



「わしは借りた恩は必ず返す。7借りたら3返す。ついでにやられた借りもな。3借りたら7や。覚えとき兄ちゃん」







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