柿ピーはあんまり食べ過ぎちゃダメ
「そうネ、じゃあドンペリでも持ってきてもらおうかしら」
ホストクラブへご招待を受けた私らは八郎の件もあるしタダ酒だしで来店した。
「いや、でもお嬢さん未成年でしょ?ジュースとかの方が…うぶっ!!」
「あんまり私を怒らせないでくれる?ボウヤ。お嬢さんじゃない女王様と呼べと言ったはずよ」
「申し訳ございませんでした!かぶき町の女王様!!」
ホスト侍らせて調子こいてる神楽はまァ楽しんでんならこんな時くらいいーだろ。普段連れてけないし。
「架珠さん、グラスどうぞ」
『あ、ども』
「いやぁぁぁ!!」
うるさ!
『バーさんなに!?』
「さわった!今このコさわったわ私のこと!」
「いえ、さわってませんって。お酒をついだだけ…」
「いえ!さわりましたっ。ヒジでオッパイさわりましたァ今!」
隣で騒ぐバーさんは間違いなく被害妄想。
「アンタもアンタでさっきから何チラチラいやらしい目でこっち見てるの?」
「…い…いや、見てません」
「見てたじゃない!さっきからチラチラ私のボデーばっかり!セクハラ!セクシャルハラスメント!」
『安心しろ。セクハラはアンタの顔面で訴えられるのもアンタだ』
「ちょ、もういやーよ架珠さん!何ココ!!私たち八郎を探しにきたんでしょ!こんな所にいるっていうの!?」
『あーもーわかったから。アンタらもういいや、勝手にこっちで飲むから』
ホスト達と別れて銀ちゃんと新八のところへ移動する。
「おつかれさーん」
『被害妄想ってすごいね。怖いよ』
「架珠さん、どうでした?」
『だめだ。何回か八郎呼んでみたけど、バーさん全く気づいてない』
「そりゃそーだろ。いくら息子でもあんな変わっちまったんじゃ…八郎なんて名前よくある名前だしな」
「でも、八郎さんはどういうつもりなんだろう?」
八郎はフロアを周り客に挨拶をしている。
「一切お母さんに息子だって名乗り出る様子もないし。五年間音信不通であんなに変わったんじゃ言い出しづらいのはわかる。多分会いたくなかったんでしょうけど…じゃあなんでわざわざ向こうから接触してきたんだろう?」
「理屈じゃねーんだよ人間なんざ。うっとーしい母ちゃんでも、目の前で暴漢に襲われてりゃ助けちまうのが息子ってもんだろ」
『ウンウン』
「襲われたっていうか襲ってましたよねアンタら」
なんだよ見てたのかよ。
「皆さん、お楽しみ頂けてますか?」
「あ、狂死郎さん」
「野郎に酒ついでもらっても何だかねェ」
「フフ…すいません。ホストクラブゆえ、我々はこのようなもてなししか」
『私は楽しーよ。イケメンも多いし』
「恐縮です。どうぞ、お好きなだけ飲んでいって下さい。あ、何かお食べになりますか?」
『んー…』
「あ、じゃあコレ…」
「いらないよそんなの。ちゃんとウチから持ってきたから。ホラ煮豆!コレ、年の数だけ食べな。ガンにならないよコレ」
「なに持ち込んでんの!?」
『ビンボくせーからやめてくんない!!』
マジかよババア!!
「こういう所くらいお前スタイリッシュにキメさせろよ!何で甘い豆!?酒に合うかよ!!」
『つーかどこに持ってたの!?どーりでなんか豆くせーなと思ったよ!なに考えてんの!?』
「そーいう怒りっぽいトコロもなおるからこの豆は!食べな早く!ホラ、そこの派手な兄ちゃんも!」
「え?あ、ハイ」
狂死郎も巻き込んで煮豆の試食会。ホストクラブで。なぜか。
「狂死郎さん、ちょっとお伺いしたい事が…」
「え?なんですか」
まァまァうまい。
「狂死郎さんってこの店のNO1であり、店の経営もやってらっしゃるんですよね。何でもしってますよね?」
「…ええまァ」
「あの巨大アフロさんなんですけど…あの人いつからこの店で働いてらっしゃるんですか?」
「八郎ですか?彼はこの店の立ち上げの時から一緒にやってきた僕の親友です。以前は僕も別の店で働いていたんですが、二年前独立しようと彼と二人で。彼も昔はホストだったんですが、今は裏方の仕事を…以前ちょっと整形で失敗しまして、それからは」
「整形に失敗ってどんな失敗したらあんなんなるんですか?オペ室爆発したんですか?」
アフロから携帯が出てきた衝撃は今でも忘れない。
「…さっきのような事も八郎さんの仕事なんですか?」
「ええまァ。用心棒的な事も…先程はお見苦しい所をお見せしました。物騒な街ですから、そういった事もね…」
年の数だけって…あれ?今いくつ食ったっけ。
「この街でのし上がるにはキレイなままではいられないですから。私もかぶき町NO1ホストとまで言われるようになりましたが、得たものより失ったものの方が多い。恥ずかしい話…親に顔向けできない連中ばかりですよ」
じゃあ八郎もそんな理由で隠してんのか?
「で、八郎に何か?」
ーーーーガシャァァァ.
「!!」
え、なに?
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