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「母ちゃんだよ。八郎の母ちゃん」



はあ?改めてババアから話を聞くもやっぱり分からん。



「八郎って誰だよ。つーか八郎の母ちゃんが何故ウチで母ちゃんやってんだよ」

「ウチの田舎じゃね、母ちゃんはみーんなの母ちゃん。子供はみーんなの子供」

「グレートマザー気どり?グレートマサみたいな顔して…オイそれ何?なんで食べてんの?ウチのメシなんで食べてんのオイ」



やめろただでさえ食料も食費もヤバいのに。



「息子に会おうと田舎から江戸に出てきたんだけどね。ま〜都会はわからない事だらけでまいったわ〜。地下鉄とかもう迷路よ、ウィザドリィ〜よ」

「オイそれ何杯目だオイ。それ何?そのパーマどこであてたんだオイ。何パーマだそれオイ」

「で、迷って困ってる時にここの看板見つけてね。まァ、これからお世話になる事だし、みんな寝てる間に朝げでもと思ってね」

「オイちょっとそれ俺のプリンだよオイ。それ何?スイッチ?その眉毛の上のオイ。自爆スイッチ?それ押したらいなくなってくれるのオイ」



ここぞとばかりに食ってんじゃねーぞ。



「コレ、ウチの息子の八郎なんだけどさ」



八郎の母ちゃんが見せた写真にはあーなんかそっくりな冴えない顔した息子が写ってる。



「五年前、江戸に上京してから音信不通で。この街で働いてるのは確かなんだよ…一緒に捜してくれないかィ?」

「…いや、仕事なら引き受けますけどね。おばちゃんお金とかちゃんと持ってんの?」

「コレ、八郎に食べさしてあげようと思ったんだけどね…仕方ないね」

「オイオイおばちゃんおばちゃん。誠意って何かね?」



かぼちゃで手を打つわけないだろ。



「…成程、そーいう事ですか。つくづく腐ってるねメガロポリス江戸…わかったよ、好きにすればいい。ただ一つだけ言っておく」



八郎の母ちゃんは布団の上に倒れる。



「アンタに真実の愛なんてつかめやしない!」

「深読みしてんじゃねェェェ!!気持ちワリーんだよクソババア!!金だ金!!」



もうストレートに金要求しないと伝わんないとかこれが世代の差か?とにかく依頼は依頼だ。私らはお登勢さんに話を聞いてみる事にした。



「まァ、報酬はその息子さんとやらからたんまりもらうとして。どーだ、見たことあるか?」

「とんと見かけないツラだねェ」

「名前は黒板八郎」

「名前なんざこのかぶき町じゃあってないようなもの。名前も過去も捨てて生きてる連中も多いからねェ」



それもそーだ。



「ちょっとちょっと、奥さん何?ウチの子が何?なんかうさん臭い事でもやってるっていうの?」

「いやいやそーいう奴も多いって言ってんだィ、この街には」

「冗談じゃないよ!八郎はそんなんじゃないよ!」



バーさん?



「あの子は小さい頃から真面目で賢くて孝行者で、私の自慢の子だったんだい!五年前、単身江戸に出たのだって父ちゃんが急に死んじまって貧窮したウチをなんとかするために…あの子…ぐすっ…絶対…トレジャーハンターになるって…」

「どこが賢い子!?」



バーさん…それ息子大丈夫なのか?



「違うわよ!あの子が言いたかったのはきっと幸せという名のトレジャーをハントしてくるって意味なのよ!とにかくあの子は真面目にやっているはず!この欲望の街の片隅で健気に賢明に、一生懸命生きてるはず!頼むよ!私をあの子と会わせとくれ!!一目会って元気でやっているかと言ってやりたいんだよ!」



まァ朝飯食ったしこれだけ必死なんだから私らも断ったりしない。例えトレジャーハンターとか言われても。



「銀さーん」

「銀ちゃーん」



店から出てきた銀ちゃんと各々で八郎を捜索していた私らは合流する。



「こっちはダメでした」

『こっちも』

「私もダメネ。これオバちゃんの匂いが染みつきすぎて定春、鼻おかしくなってしまったアル」



くしゃみする定春は涙を流してて苦しそう。おつかれ定春。



「銀さんは?」

『ん…ここ、非合法の闇医者の…』



銀ちゃんが出てきた店の名前を確認して目を瞬かす。



「まさか」

「あちこち情報屋あたってもアタリがねーんで視点かえてみた。どーやら孝行者の息子は親からもらったツラ二、三度変えてるな」

「整形ですか!?なんで、そんな」

「しかもここだけじゃなく、あちこちで顔いじりまわしてるようだ」

『はァ?じゃーもうこの写真アテになんないじゃん』

「顔コロコロ変えるなんてまるで犯罪者アルナ〜」



…なんか、冗談になんねーよソレ…。



「…銀さん、この件はあんまり深くつっこまない方がいいかもしれませんね。これ以上何かしっても…八郎さんもなんか嫌がりそうだし、お母さんも何もしらない方がいいかも…」



八郎の母ちゃんは向こうの店先でなんか物色してる。



「そいつァ俺逹が決めるこっちゃねェ。とにもかくにも、まず孝行息子見つけてからの話だ」

「でも、写真はもう使えないし…どうやって?」

「整形つったって骨格まではなかなか変わんねーだろ」



写真に黒ペンで予想図。



「整形美人なんてみんな似たツラしてるじゃねーか。予想つくだろう…こんなカンジだろう」



まず頭に髪の毛を付け加える。



「ちょっと何やってンスか。整形じゃないよそれ、ただのヅラですよ」

「私「ビューティコロシアム」毎週見てたネ。やらしてヨ」

「おいィィ!教科書の写真じゃねーんだよ!」



カメハメハ放つ小僧みたいな髪型に頭上にはウンコ、目も大きくして眉毛は繋げて鼻毛も付け足し顔の横には「オス、オラ八郎。絶対見つけてくれよな」のセリフ。



「お前コレはないよ。どーすんのコレ、修復できねーよ」

『いや待った。こっからこうカバーして…』

「アレッ、これ、ちょっといくね?オイ」

「ああ…そうですね。いそう、コレ。お台場あたりにけっこう」



写真の上半分を覆い尽くすもっさりとしたアフロと鼻毛も髪の毛と連合。うん。



「いねェェェェェよ!!どこにもいねェェよ!!いても外出てこれねェェよ!」

「いや、いるよ。ネバーランドあたりにけっこう」

「ネバーランドねェェよ!あったとしても外出てこれねェェよ!つーかなァお前らコレ整形じゃねーんだよ!毛しか書いてねーじゃねーか!!」



でもけっこう進化してんじゃんコレ。







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