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「…オイ。コレスゴクね?」
私らの雪像には羽に続きすべり台がつけられていた。
「お前もしかして天才じゃね?普通すべり台つけようなんて思いつく?」
「よくわかんないけどフッと降りてきたネ。インポテーションネ」
『サンピエーションな』
「インスピレーションね。こりゃもうアニメ化完璧ないな」
「アラ」
あ。
「銀さん来てたの奇遇ね。言っとくけど私しらなかったから。別に追いかけて来たとかじゃなくてたまたま」
「誰もきいてませんよさっちゃんさん」
そして別に知りたくもない。
「アラ?ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃない。完成度高けーなオイ」
「もう原型ねーのになんでわかるんだよ!!」
「惑星ツェザーンとキャーシャーンの星間戦争においてツェザーン側を勝利に導いたメソッド砲とは裏腹にずっと倉庫に入れられっぱなしだった哀しき兵器よ」
「どーでもいいし長げーよ!!」
つか結局使われてないじゃんそれ。
『さっちゃん、アンタここにいるって事はなんかつくったの?』
「いや、別にたいしたものは」
「…なんかあそこに明らかにアンタがつくったとしか思えない代物があるんですけど」
銀ちゃんっぽい雪像発見。
「違うの。ア…アレは銀さんじゃないの。あの、集英社並びに作者とは一切関係ない代物なの」
「なんか異様に足長いアル。銀ちゃんもっと短いヨ」
「ああ、ちょっと幻想入っちゃってますね。幻想っつーか長過ぎてキモいんですけど」
『いくら何でもやり過ぎでしょコレ』
「いや、こんなモンだろ。スゲーなオイそっくりじゃねーか。コレ、グランプリいったんじゃね?さすがに俺もコレは壊せねーわ」
「え?ウソ、ほめてくれるの?」
「ほめるも何も俺は思った事を言ったまでよ」
お前自分がモデルだからって態度変えんなよ。まァこれがグランプリ取れるとは思えないので神楽と二人大人しく眺める。
「私としてはもう15センチ位足のばしたかったんだけど」
「いや逆にこれ位おさえてた方が逆にリアルだろ」
「逆に2回言って元に戻ってますけど。この不自然な手は何なんですか?」
「あ。コレはアレ」
何かを抱えるように雪像が出していた手にさっちゃんは乗る。
「こうやって、コレで完せ…」
ーーーードコッ.
「げぶっ」
「ぎゃあああ!!何してんのお前ェ!」
姫抱きされてたさっちゃんの重みに耐えきれず雪像の腕がもげた。
「銀さんの手がァァ!早く直して!早く直して!」
「ごめんなさい。あっ、眼鏡が…」
『雪に埋もれて分かんないよ』
「早くつけなきゃ!」
「オイどこいく!?」
眼鏡無しのさっちゃんは腕を持って雪像とは真逆の方向に走り出した。
ーーーームニ.
あ…。
「なに」
雪像の手がお妙の胸に置かれた。
「すんだこのドスケベ野郎ォォ!!」
「なんで俺ェェェ!!」
微笑む額に青筋浮かんだかと思うと、豹変したお妙は銀ちゃんを殴り飛ばした。
「アラ変…なんだか銀さんにさわられた気がしたから〜ゴメンナサイ」
『いいよお妙。ニアミスだから』
「姉上なんでここに?」
「ええ。私の店も作品を出すっていうからお手伝いに」
お妙はさっちゃんの作品を見る。
「アラ、コレネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃない。完成度高けーなオイ」
「違うから!明らかに違うよねコレ!」
「バカヅラさげてホントしょーもないアームストロングね」
「何!?結局なんなのアームストロング砲!!」
「それよりせっかくだから見ていって新ちゃん。私達の作品けっこうこってるのよ〜」
見に行った先にあった作品は、竜宮城をそのまま雪で形どったようなどこの職人技かと思う豪勢なものだった。
「どォ?けっこうスゴイでしょ」
目も口も開けっぴろげて絶句。
「女の子ばかりだけどみんな結構前からお勤めが終わった後に集まってコツコツつくってたの〜。すべり台もあるし氷像なんかもあるのよ〜あ、でもアレはあまり出来が良くないんだけどね」
え…?どこが…?
「でもグランプリは無理そうね。みんなスゴイこった物をつくっていたもの、どうやってつくったのかしら。あっ、そうだ。万事屋は一体どんなものをつくったの〜?」
えっと…。
「ん?あの…アレだよ」
「マ…マスコットキャラ的な」
「あ、じゃあ定春くん?」
『うん…まァ、似たような…』
「違いますよ。なんか猥褻物陳列してました」
「え?何?部屋とワイシャツと私?」
は…恥ずかしくて言えねェェェェェェェ!!
私ら今まで何をやってたの!?ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲って何!?あんなもんただの猥褻物じゃねーか。
「あ、本音言っちゃったよついに」
あれじゃあグランプリどころか参加賞も…。
銀ちゃんと神楽と意気消沈して顔を見合わせる。
……帰ろう。恥をかく前にこんな所…。
「アラ、どこいくの?ちょっとアレ、あの雪像見て。とっても苦労してつくっ…きゃああ!!」
「!!」
お妙?
「何アレ!?雪像に変なモノが!」
雪像の頭をよく見ると、なんかマダオの雪像の股間で見た覚えのあるものが突き刺さっていた。
「フハハハハハなーにがグランプリだァ!!そんなもんなァ、雪像壊しちまえば元も子もなくなっちまうんだよ!」
声高らかにほっかむりしたマダオが叫ぶ隣には、同じブツが大量に用意されていた。
「どーせ雪なんて時間がたてばとけちまうんだよ!!だったら今消えろォォ!!全て消えろォォ!」
「キャアアアア何アレ変態よ!!」
次々に投げつけていく壊れたマダオを見てドン引き。ちょっとやり過ぎたかな…。
「みんなァァ雪像を護ってェ!!私達の汗と涙の結晶をを!!」
ーーーードォン.
「!!」
「何を無駄なことを!すべり台なんてつくったってなァ、そんなモン誰がすべるかァァ!!」
すべり台に金槌振り下ろして根元から破壊するのはほっかむりしてるけどありゃヅラだ。お前もか。
「この街にいるのはすれた大人にひねたガキだけではないかァ!!すべり台なんてなくなってしまえばいいんだ!世界中のすべり台全部折れろォ!!」
これを筆頭にもうあちこちで喧嘩勃発。こりゃ祭りどころじゃねーぞ。
「ふざけんじゃないわよォォ!絶対グランプリはとる!!」
作品の一部の亀の雪像をさすがお妙は持ち上げて臨戦態勢。
「ハーゲンダッツ100個みんなで山分けって約束したじゃないィィィィ!!」
…ん?
「………ハーゲンダッツ。グランプリ?…ハーゲンダッツ?」
『…賞金じゃなくて、ハーゲンダッツ?』
金じゃなくて、このクソ寒いのにアイス?
「オイオイオイ冗談だろ。こっちはお前、賞金がたんまり出るっつーから寒い中あくせく働いてたっつーのに」
ほんともう…。
「腐れババアァァァァァ!!人のことたぶらかしやがってェェェェ!!」
『なめんのも大概にせーよ!!』
ーーーーゴッ.
雪持って雪像を破壊し野郎共に投げつけて、そこからはもう知ったこっちゃなくてとにかく暴れまくった。
「お…お登勢さん…こ…これって…みんな何やってたんでしたっけ。ゆ…雪合戦大会とかでしたっけ?」
「んにゃ。祭りだよ」
お前ら全員雪に埋もれちまえェェェェ!!
next.
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