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ーーーーカン.カン.
「テロ用心〜!!浪人一匹テロのもとうきびウンコ〜!!」
拍子木を打ち鳴らしながら往来を練り歩く真選組を、民間人達は遠巻きに見ている。
「土方さん、愚民どもが好奇の目で見てますぜっ壁から落ちて死ね土方」
「余計イメージが悪くなりそうだん崖から落ちて死ね沖田」
お通語で器用に罵ってんな。
「実際テロが起きたらどーすんでしょ、刀もねーってのにえたぎった湯を浴びて死ね土方」
「もう俺のしったこっちゃねームーミン沖田を殺せ」
「死ね土方」
「死ね沖田」
「死ね沖田。あっ、間違った土方」
もはや会話じゃねーし。ストレートに言っちゃってるし。
「いやー、さすがですな局長。ほんのちょっとの工夫でこんなに注目が集められるとは思いませんでしたけのこ」
「イメージはね、創るのは難しいけど壊すのは簡単なんだ。あなた達は元々最悪のイメージだったから、粉々になるまで壊すだけだよう怪小豆洗い」
「オイ。さらりととんでもねーこと言ったよ」
いいじゃん。間違ってないよ。
「しかし悲しい話です。我々は江戸の平和を思い日々働いているのに、どうも空回りしているようで。我々の目指す姿と人々の抱く我々のイメージは、開いていくばかりンボーダンス」
「でも、真選組のみんなは偉いよ。普通は他人が自分をどう思ってるかなんて直視できないもん。でも、人の目ばかり気にしてても身動きとれなくなっちゃうよう怪ぬらりひょん」
「なにこの会話気持ちワリーんだけど」
真面目な話のはずなのにな。
「私もそうだったの。スキャンダルで叩かれて、人の目ばかり気になって外にも出られなくなってしまったんたん狸の金玉」
「今金玉つった?アイドルが金玉つった?あれホントにアイドルですかィ?」
アイドルだよ。つかゴリラ隊服の背中にちゃっかりお通のサイン貰ってっし。どーすんだアレ。
「でも人の心なんてそう簡単に左右できるものじゃないし、もういいや、私にできるのは私が理想とする私を目指す事だけだって開き直って。そしたら、目の前がパァーッと開けてりやきバーガー」
食いたい。
「でもね、それは人の心をうかがって苦しんだあの時があったからできた事だと思う。そこで自分の姿をしって初めて答えが出たんだと思う。人の目を気にしすぎてもダメだし、無視してもダメだし…難しいね」
足が止まったからか、馬から出た銀ちゃんが居酒屋に行っちゃった。
「でも、みんなならきっとできるよ。だってこうしてちゃんともがいているもののけ姫」
「お通ちゃん。アンタ、いい女だっふんだー」
「あ。今のでだっふんだー2回言ったよね。次言ったら切腹だからくだのコブ〜」
「あっ。お通ちゃんもそれ2回言ったぞーさんの鼻」
「えー、じゃあ、今のナシ〜。内緒ね、二人だけの秘密ねずみの尻尾」
アハハ、ウフフフ、なんてバカップルのようにお通と笑いあうゴリラを見て思う。
「「なんか…ブッ飛ばしたいんだけど」」
多串君と沖田クンに同感。
ーーーーガッ.
「!」
新八?
「てめェェェェェェェェェェェ!!何お通ちゃんといちゃついてんだァ!!」
「ぎゃあああああ!!」
馬の中から手出してゴリラの腕掴んだ新八は、目を血走らせてドスの効いた声を出した。怖ェよ。つか、バレるだろ。
「まこっちゃんがァァァァ!まこっちゃんの中にもう一人のまこっちゃんがァァ!!」
『安心してください。内臓です』
「喋った!!」
大人しくしとけ新八。ぐいぐいと新八を中に押し込む。
「アレ?さっきまでの上半身はどこ行ったんでィ」
「あ〜、やっちゃったよ〜」
「!」
あいつ飲んでるし。
「やっちゃったなーオイ…やっちゃったよ〜。完全に猪かと思ったものな〜やっちゃったな〜」
「旦那、何があったかしらねーが、やっちゃったとんは仕方ねーよ。飲んで忘れちまいな」
「俺もさァ、反射的に矢を射ってしまったものな〜〜。やっちゃったな〜オイ」
「やっちゃったじゃねェェェェ!!」
ーーーードゴォ.
多串君が銀ちゃんの脳天にかかと落とし。
「お前何してんのォ!?マスコットだろ。なんでマスコットがこんな所で飲んだくれてんだよ」
「やっちゃったな〜。まさかあんな森の中で人間が出てくるとは思わないものな〜」
「オイぃぃぃ!!なんか恐ろしげな事件の全貌が露に…」
「あ゛っ!!」
お通?
「誠ちゃん!こっち、早く早く」
何かとお通の前方を見ると、集団下校中の寺子屋帰りの子供達がいた。
「チャンスだよ!子供は純粋だからイメージを植えつけやすい!しかも親の耳に伝わればあっという間に評判が上がる!子供といえばカワイイもの…」
ーーーーピィィ.
首から下げていたホイッスルを私は吹いた。
「誠ちゃんの出番よ!!」
「待てェェェ!!お前そいつがどれだけ重たい過去を背負ってるかわかってるのかァァァ!!」
笛の音に導かれ誠ちゃんダッシュ。
ーーーーズボッ.
「オイぃぃぃ!!逆っ!まこっちゃんそれ逆ぅぅ!!」
何してんだ銀ちゃん!なぜか銀ちゃんは頭から馬の中に突っ込んだ。あーもういいや、このまま引っ張ろ。
「完全にただの化け物じゃねーか!!」
「あっ、あぶない前!そのまま引っ張って!」
フラフラだが無理やり方向を操ってガキどもへ突進していたら、なんか引っ張る重量が軽くなった。
「あっ、ヤバイ!死体おちた!」
え、まじで!?
「いい!死体はそのままでいい!置いてけ、余計恐くなるだけだから!!」
ーーーーピィィ.
ーーーーザッ.
「死体はいいっていってんだろーがァァァァ!!」
笛の音に導かれ死体が猛ダッシュ。
「集団下校とかたるいよね〜」
「しょうがないよ。今アレはやってんじゃん」
よっしゃ追いついた!!
「!!」
なんかよく分からんがとにかくアピールだ!!
「ぎゃあああああ!!」
勢いつけて突っ込んでいくと悲鳴。
「ワアアアァ」
「ギャアアァァア」
「助けてェェェ!!」
揉みくちゃになって地面にズッコケてる間にガキどもは走り去って行ってしまった。なんでだ。
「…いってー。オイ、成功したか?」
「わかんないスよそんなの僕まっくらなんだから。スナフキン!どうなんですか成功したんスか?」
『揉みくちゃになってよく分かんない。死体?どうだった?』
「………」
「もう死体のフリはいいっつーの!!」
無駄に演技すんな。
「オイ」
ん?
「何してんだ?てめーら」
振り向くと真選組の奴らが怖い顔して見下ろしていた。あれ?あ、変装とけてら。
「なんかおかしーと思ったらやっぱりてめーらかァァァァ!!何してんだコラァァァァ!」
「違うっ!あの、違うんですって!僕らはお通ちゃんに!」
「うるせェェェ!!人の邪魔ばっかしやがって何だァァ!!何が目的だァァ!?」
「いやホントに僕らお通ちゃんにィィィィ!!」
フルボッコにあったから応戦したらさらに怒鳴られた。理不尽だ。
next.
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