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神楽のしゃくしゃくと白滝を食べる咀嚼音とテレビの音だけの室内。なんだこれ、なんで自分家でなんか気まずい空気味合わなきゃなんないんだ。もう鍋に箸伸ばしにくいよオイ。



「あっ、カトケン。紅白また出てるヨ」



テレビを見ると意気揚々と歌ってるカトケンの姿が。



『ホントだー。私去年で絶対消えると思ってた』

「HDにキャラ変えてまた人気出たアルナ」



ーーーーカッ.



「でもアレだよね」



あ!



「紅白に出場する事も最早歌手にとってステータスじゃなくなってるよね。それというのもさ…」



やばい、とられる!!

ーーーーズボ.



「!!」



鍋へと新八が伸ばした箸は、ご飯に突っ込んでいた。



「アレ。火が弱くなってね?」



鍋は銀ちゃんが引き寄せていた。



『ん?』



空中を見ると箸が回転して鍋へと一直線に落下するところ。箸を構えていた銀ちゃんも気づく。あれ、新八の箸か。私も今度こそ…!!



「ヘブシッ」



……………は?



「あっ、ゴメンアル。私カゼひいたかもしれないヨ〜」



なっ…なにィィィィィィィィ!?

くしゃみした神楽の唾が鍋へと降りかかり、私らは一切の動きを止めた。オイオイ嘘だろ…神楽お前、無垢な少女にしても程が…。



「ククク」



!いや違う…このガキ鼻から白滝出してるし!!わざとか!全て芝居かこのクソガキ!

ーーーーガララ.

神楽が憎たらしい笑み浮かべて鍋ごと腹のなかに独り占めした時来客が。



「……おやおや何だい。先におっ始めてたのかィ?」



あ、お登勢さんにキャサリン。



「つれないねェ。仕事終わるまで待ってろって言ったじゃないのさ」

「コイツラガ辛抱ナンテデキルワケナイデスヨ」



黙れキャサリン。



「ちょっとォ、アンタらなんだい?この肉…また豚肉でスキヤキかィ。かァ〜。大晦日だってのに泣けてくるね〜」



あ。言っちゃったお登勢さん…まァ、ネタばらししてもいいかもう。



「どきなっ。ここは私が座んの!」



冷や汗を流し寒そうに身を抱いて震える神楽に、私らは仕返しと言わんばかりに笑みを向けてやった。

神楽…お前が今まで牛肉だと思って食べてきた食卓の肉は全て…安い豚肉だ!!つーか牛肉なんてバカ高いモンがウチの食卓に並ぶかっつーの。



「大晦日ぐらいねェアンタら、いいモン食わないとダメだよ〜。散々な一年でも最後にいいモン食えばちったァマシな一年に見えるもんさ」



落ちた神楽は再起不能で、テーブルに突っ伏して意識を失った。よし、一人消えた。



「今年はちょっと奮発して高いのを買ったからね。うまいもん食ってうまいもん飲んで、パーッと新年迎えようじゃないか」



決着の時か…今度こそ肉を…!

ーーーードフッ.

な…!?

ーーーーズドドド.

なんだとぅぅ!!

箸を構えた私らよりも断然早く動いたのはお登勢さんとキャサリン。肉どころか鍋にさえ箸が届かない状況だ。

さっきまでの争いが鍋将軍モノなら…これは、皇帝鍋レオンだ…!!ケタが違いすぎる…つーか、コイツらウチに何しにきたの。嫌がらせ?さっきまでのバカみたいな戦いは無意味ってか……いや、違う。

ーーーーガシン.



「「何!?」」



私らはお登勢さんとキャサリンの動きを止めた。



「だからこそ…あの戦いを無駄にしないためにこそ、この勝負…」

「負けるワケには、いかねーんだヨォォォ!!」

「!!」



覚醒した神楽が鍋を掴み上げる。



「いけェェェェェ神楽ァァァァァ!!」

『鍋レオンになれェェェ!!』



ーーーーごきゅごきゅ.

汁を飲むように豪快に神楽は鍋を腹のなかへ飲み込んだ。

ーーーーげふァ.



「………なんか、乳くさくてイマイチ。豚の方がいいアル」



あ゛あ!?



「てめェェェェェェ!!ナメてんのかァァァァ!」

『大概にしろよこのクソガキィィィ!!』

「出せェェェ!今の全部吐き出せェェェ!」



もうなんか色々爆発して乱闘騒ぎ。

結局食えなかったし!私の肉ゥゥゥ!!!





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