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あの場からリアカーごと逃げ去っていると、少しずつ辺りが明るくなってきた。



「……ああ、朝日が昇るよベン…まだ一件も子供の夢を叶えてないのに朝日の奴が昇ろうとしているよベン」



早いなぁー。もうそんな時間か。帰って寝たいわ。



「今年は…最悪だったな」



ソリ大破するからだよ。



「最期だよベン、このまま帰るわけにはいかない…もぉーさ、貧しい家の100円ショップで手に入る夢しか持ってない子を選んで、その子の夢だけ叶えて帰ろう。その子の笑顔だけ抱いて帰ろう今年は。万事屋さんお願いします」

「だからさァ、この飽食の時代にさァ、そんなガキが存在するわけな…」



見慣れた顔写真とほしいもの「肉まん」の文字。



「『あ』」



神楽だった。つーかいたよ。親の懐に優しい孝行娘がいたよ、この時代に。

ーーーーカララ.

万事屋へ帰り、神楽を起こさないようそっと戸を開ける。



「すいませんねなんか」

「いやいやいいんだって。それより安あがりなお子様をおもちでお幸せですな、プックックックッ」



まさか最終的にウチに来るとはな。



「アレ?いねーな」

『こっちじゃね?』

「やっとサンタらしくなってきたな、プククッ」

「アンタ今の自分の姿を見てみろ。コソ泥以外の何者でもねーよ」



格好が格好だからな。探すと神楽はコタツでそのまま寝てしまっていたようだ。



「プクク。コレ!コレ!」

「プククク。おやおや、こたつでおねむのようですよキャップ。プシシシー」

「何このノリ?なんで寝起きドッキリみたいなノリになってるの?」

『元気だなあんたら』



早う終わらせて寝たい。



「鼻ちょうちん鼻ちょうちん」



だからなんだよ。さらには神楽の顔に落書きして銀ちゃんとジーさんは愉快そうに笑う。



「なんであんなテンション高いの?あのおっさん達」

『オールしてテンションおかしくなったか?』

「待って待って。俺にもやらして」



そう言ったジーさんは神楽の顔にケツ向けてオナラ。



「プッシッシッシッ」



くだらね。

ーーーーガッ.

神楽がジーさんの両足を掴んだ。



「何してんだてめー」



え゛。



「肉まんはどーしたァァァ!!」

「ぶごおおお!!」



足持ち上げられたジーさんは床に顔面を強打して倒れた。

ええええちょっと!?



『なにあいつ起きた!?寝てんの!?』

「寝ボケてる!寝ボケてる!ヤバイ逃げっ…」



ーーーードゴシャァア.

逃げようとしたらジーさんに捕まった銀ちゃんに足掴まれたからトナカイの足掴んでやった。全員倒れたけど。



「ぎゃあああああ」

『なにすんだァァ!!』

「離せ!!コノヤロッ!」

「お前が離せ!!」



うわわわわわっ…。



「「「『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』」」」



ーーーーズポン.

神楽にこたつの中へと引きずりこまれ、思い出したくもない悪夢を見た気がする。よく覚えてないけど。



「銀ちゃん、架珠、肉まんありがと!」



落書きされた顔で笑ってお礼言った神楽に、私も銀ちゃんもなんか全てがどーでも良くなり脱力した。改めて床を見ると、血文字のメリークリスマスが書いてあって恐ろしかったけど。





next.

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