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備えあれば憂い無し







前訓の「急がば回れ」はって?私の出番無いからすっ飛ばした。え、見たかった?知るか。本家本元原作を読め。



「高杉」



さっきまで大きな音が響いていたが、やがてそれが静まってきた頃。



「俺はお前が嫌いだ。昔も今もな」



私は言うまでもなく。



「だが、仲間だと思っている。昔も今もだ。いつから違った。俺達の道は」

「フッ。何を言ってやがる。確かに俺達は始まりこそ同じ場所だったかもしれねェ」



高杉が取り出した本をよく見る。やっぱアレ、教科書だ…まだ私らがガキだった頃に使っていた…。



「だが、あの頃から俺達は同じ場所など見ちゃいめー。どいつもこいつも好き勝手、てんでバラバラの方角を見て生きていたじゃねーか。俺は、あの頃と何も変わっちゃいねー」



今でも覚えてる、部屋で私らに教科書を読み上げるあの人の姿…。



「俺の見ているモンは、あの頃と何も変わっちゃいねー。俺はーーーー」



笑いかける姿が見えた気がして、ため息して一度目を閉じた。昔話で思い出すとかババアかっつの。



「俺はな、てめーらが国のためだァ仲間のためだァ剣をとった時も、そんなもんどうでもよかったのさ。考えてもみろ、その握った剣、コイツの使い方を俺達に教えてくれたのは誰だ?俺達に武士の道、生きる術、それらを教えてくれたのは誰だ?俺達に生きる世界を与えてくれたのは、まぎれもねェ、松陽先生だ」



なんとなく、高杉の後ろ姿が寂しげに見えたのは…気のせい、だろうか。



「なのにこの世界は、俺達からあの人を奪った。だったら俺達はこの世界に喧嘩を売るしかあるめェ。あの人を奪ったこの世界をブッ潰すしかあるめーよ」



高杉…。



「なァ、お前らはこの世界で何を思って生きる?俺達から先生を奪ったこの世界を、どうして享受しのうのうと生きていける?俺は、そいつが腹立たしくてならねェ」



腹立たしいと言われましても…。



『…アンタに生き方について言われたかないけどさ…この生き方を選んだのは、銀ちゃんが耐えてるからだ』

「…俺とて何度この世界を更地に変えてやろうかと思ったかしれぬ。だが銀時が…一番この世界を憎んでいるはずの銀時が耐えているのに、俺達に何ができる」



銀ちゃんが耐えているのに何かをしようだなんて、思えないんだ。



「俺にはもうこの国は壊せん。壊すには…江戸には大事なものができすぎた」



再会した頃とは大違いだ。



「今のお前は抜いた刃を鞘に収める機を失い、ただいたずらに破壊を楽しむ獣にしか見えん。この国が気にくわぬなら壊せばいい。だが、江戸に住まう人々ごと破壊しかねん貴様のやり方は黙って見てられぬ。他に方法があるはずだ。犠牲を出さずともこの国を変える方法が。松陽先生もきっと、それを望ん…」

「キヒヒ。桂だァ」



!?なに?



「本当に桂だァ〜」

「血染めの舞姫は俺の獲物だ」

「天人!?」



猿っぽいのと豚っぽい天人が屋根の上から私らを見下ろしていた。なんでここに天人が?



「架珠、ヅラ、きいたぜ。お前さんら、以前銀時も一緒にあの春雨相手にやらかしたらしいじゃねーか」



はるさめ…春雨…あ。ラクダだ!ハム子助けた時のだ!なんで知ってんだコイツ。



「俺ァねェ、連中と手を結んで後楯を得られねーか苦心してたんだが」



おいおいおい…。



「おかげでうまくことが運びそうだ。お前達の首を手みやげにな」

「高杉ィィ!!」

『てめェ私を売るとはいい度胸だな!』

「言ったはずだ」



高杉に殺意倍増だが、それどころじゃなくなった。屋根から降りてきた天人に構える。



「俺ァただ壊すだけだ。この腐った世界を」







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