陽はまた昇る
「晋助様ァァァ!!」
さっきの女が斬り倒された高杉に駆け寄る。
「晋助様!!しっかり!晋助様ァァ!!晋助様ァ!!」
「…ほう」
瓶に当たって落ちていった男が前に立つ。この二人は主力メンバーのようだ。
「これは意外な人とお会いする。こんな所で死者と対面できるとは…」
ホントだよ。
「あ…ああ、ウソ……」
…何してたんだコイツは。
「桂さん!!」
つかなんだ、その愉快な髪。短髪のヅラとか初めて見たと思う。違和感の塊。
「この世に未練があったものでな。黄泉帰ってきたのさ。かつての仲間に斬られたとあっては、死んでも死にきれぬというもの。なァ、高杉。お前もそうだろう」
「クク、仲間ねェ」
ムクッと高杉が起き上がる。チッ。生きてたのか。
「まだそう思ってくれていたとは、ありがた迷惑な話だ」
よく見ると着物の内側に本が見える。あれで大した傷にならなかったのか…にしても、あれって…。
「まだそんなものを持っていたのか。お互いバカらしい」
そう言ってヅラが取り出したのは高杉の持つものと同じ本。刀傷や血がついてしまっている。
「クク。お前もそいつのおかげで紅桜から護られたてわけかい。思い出は大切にするもんだねェ」
「いや、貴様の無能な部下のおかげさ。よほど興奮していたらしい。ロクに確認もせずに髪だけ刈り取って去っていったわ。たいした人斬りだ」
だからお前そんな愉快な髪なのか。
「逃げ回るだけじゃなく死んだフリまでうまくなったらしい。で?わざわざ復讐に来たわけかィ。奴を差し向けたのは俺だと?」
「アレが貴様の差し金だろうが奴の独断だろうが関係ない。だが、お前のやろうとしている事、黙って見過ごすワケにもいくまい」
ーーーードゴォォン!!!
「!!」
「なっ!!」
突然船内が爆破された。なにごと?
「貴様の野望、悪いが海に消えてもらおう」
ヅラが仕掛けてたのか。
「工場がァァ!」
「紅桜がァァ!!」
「かつらァァ!!」
うわスッゲー怒ってる。もう殺気向けられて体に穴あきそう。
「貴様ァァァ!生きて帰れると思うてかァァ!!」
浪士共に取り囲まれる。うわー、大変。
「江戸の夜明けをこの眼で見るまでは死ぬ訳にはいかん。貴様ら野蛮な輩に揺り起こされたのでは、江戸も目覚めが悪かろうて」
なんか言ってるヅラの後ろで神楽の拘束具を刀で斬る。よし。
「朝日を見ずして眠るがいい」
ーーーーガシッ.
「!」
『眠んのはてめェだァァ!!』
「ふごを!!」
ヅラの腰に腕を回すと背中曲げて頭から床に叩きつける。
「…………」
なんか周りの奴ら絶句してるけど関係ない。今こっち重要。
『てめェ…人に散々心配かけといてエリザベスの中に入ってただァ〜?』
ホント…お前さァ…。
『ふざけんのも大概にしろォォ!!』
神楽が磔にされていた重量感満載の木でヅラを殴り飛ばしついでに周りの奴らも巻き込む。私ら三人怒りマックスだぞオイ。
『いつからエリザベスん中入ってたんだ?いつから私らだましてたんだ?あ゛?』
「ちょっ、待て架珠。今はそういう事言ってる場合じゃないだろ。ホラ見ろ、今にも襲いかかって来そうな雰囲気を」
『うるせーんだよ!!こっちも襲いかかりそうな雰囲気!』
叩き落すぞ船から!
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