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『なんかさ、こう…いかにも怪しげな長髪の変な男見なかった?』
「知らないねェ」
ここも空振りか…。舌打ちして店を後にする。全然情報入んないし、もう夕方だし、一旦万事屋に帰るかなー…。
「捜し人ですかィ?お嬢」
『!』
うわ、沖田クン…なんか面倒臭そうな相手に見つかった。
『仕事だよ仕事。アンタに構ってる暇ないの、んじゃーね』
「そいつはお忙しいところ失礼しやした」
なんかムカつく言い方だなこのクソガキ。思わず通り過ぎようとした足が止まるぐらいにはムカつく。
「最近、ここいらでは辻斬りが流行ってましてね」
!辻斬り?無関係と言えない話題に、背を向けている沖田クンへと振り向く。
「ま、出会った奴は皆斬られちまってんだが、遠目で見た奴がいるらしくてね。そいつの持ってる刀が……刀というより、生き物みたいだったらしいでさァ」
…生き物?
『…沖田クン』
この会話…。
『モロ映画じゃん。おたく原作出番ないよね』
「映画沿いとかする予定ないんで、ここぐらい出しといてくだせェ」
まァいいか。にしても、生き物とは一体…あと結局ヅラのことは何もわからんかった。
『たく…何してんだか、ヅラの奴は』
つかもう暗いし。沖田クンと別れた頃から薄暗くはなってきてたしな…。
『新八と神楽はもう戻ったかな。あ、そういや銀ちゃん結局どこ行ったんだ』
これで依頼が嘘でパチンコでもしてたものなら川に沈めてやる。
ーーーードゴォ!
『ん』
なにごと?
地響きのような音に足を止め音の方向を見る。
ーーーードォン!
まただ。水の中に飛び込んだような音がした。こんな時間に水遊びとか、すごい物好きだな。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
『!』
新八!?騒ぎが起きている橋の方まで来てみると、刀を振りかぶった新八が川の方に飛び降りる姿が見えた。
「アララ。腕がとれちまったよ。ひどいことするね僕」
あれは…確か、人斬り似蔵?なんでこんなトコに…。
「それ以上来てみろォォ!!次は左手をもらう!!」
剣を構える新八の背後には、ボロボロの銀ちゃんがいた。ちょっと、血ィ出てんじゃん。
『オーイ。ちょっとちょっと、おたくらそこで何やってんの』
上から声をかけるとばっと新八と似蔵が顔を上げた。
「架珠さん!」
「おやおや。このタイミングでお出ましとは…」
『なに?やる?こちとらウェルカム状態だけど』
さすがにあんな銀ちゃん見て何も思わないわけがない。鉄扇を持つ手に力がこもる。
「腕失ったばかりでね。まァ、また機会があったらやり合おうや」
落ちていた刀を拾い上げ、似蔵は素早い動きでこの場を立ち去っていった。本当に腕失くした直後かあいつは。
「銀サン!しっかりして下さい銀サン!!」
『銀ちゃん!』
倒れ込んでしまった銀ちゃんへと橋を飛び降り新八と駆け寄る。
「ヘッ…へへ。新八、おめーは、やればできる子だと思ってたよ」
汗を浮かべながらやっと言った銀ちゃんは、力尽きたように目を閉じてしまった。
『銀ちゃん!』
「銀さん!銀さーん!!」
next.
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