売店ではやっぱコロッケパンが一番人気
「お茶です」
ある日。万事屋にエリザベスが単体でやって来た。
「『…………』」
「あの…今日は何の用で?」
お茶をいつものようにひとまず差し出し、新八は私らが座るソファの後ろにサッと身構えて尋ねる……んだけど、エリザベスのやつ、無言。
「…なんなんだよ。何しに来たんだよこの人、恐えーよ。黙ったままなんだけど。怒ってんの?なんか怒ってんの?なんか俺悪いことした?」
『怒ってんのアレ。笑ってんじゃない?』
「笑ってたら笑ってたで恐いよ。なんで人ん宅来て黙ってほくそ笑んでんだよ。なんか企んでること山の如しじゃねーか」
ひそひそと、話し合う。なんなんだエリザベス。
「新八、お前のお茶が気にくわなかったネ。お客様はお茶派ではなくコーヒー派だったアル」
『あ〜あなるほどね。絶対そうだよ』
「お茶くみだったらそのへん見極めろヨ。だからお前は新一じゃなくて新八アルネ〜。なんだヨ、八って」
「んなモンパッと見でわかるわけないだろ!!」
「俺すぐピンときたぞ。見てみろ、お客様。口がコーヒー豆みたいだろーが。観察力が足りねーんだお前は」
と、いうわけで。
「コーヒーです」
もう一度コーヒーでチャレンジ。
「……………」
……無言。
ーーーーパン.
「オイなんだよォ!!全然変わんねーじゃねーか!」
「いだっ」
「銀さんだってコーヒー豆とか言ってたでしょーが!!」
「言ってません〜どら焼き横から見た図と言ったんです〜」
『見苦しいよ銀ちゃん』
つかエリザベス、ホント何しに来たのさ…。
「ちょっ、もうホントいい加減にしてくんない?なんで自分宅でこんな息苦しい思いをしなきゃならねーんだよ。あの目見てたら吸い込まれそうなんだけど」
わかるよその気持ち。
ーーーージリリリン.
あ。電話。
「あ、ハイハイ。万事屋ですけど」
電話に出たのは銀ちゃん。
「架珠、新八。こうなったら最後の手段ネ。アレ出そう」
銀ちゃんが電話で話してる最中に神楽が提案する。
『アレって…アレ?マジで?』
「え?いや、でもアレ銀さんのだし怒られるよ」
「いいんだヨ。アイツもそろそろ乳離れしなきゃいけないんだから。奴には親がいない。私達が立派な大人に育てなきゃいけないネ」
『ガキが何言ってんだ。小姑並みに地味にねちっこく言われるからやめときなって』
「おーう。俺ちょっくら出るわ」
は!?
「!!あっ、ちょっとどこ行くんですか!?」
「仕事〜。架珠、あと頼んだわ」
「ウソつけェェェ!!自分だけ逃げるつもりだろ!!」
『てめェ丸投げしてんじゃねーぞ!』
ふざけんなよあの天パーが。青筋浮かせて私らは顔を見合わせる。
『やれ、新八』
「はい」
というわけで最終兵器。
「いちご牛乳でございます」
怒りに任せて差し出したが、どうだろうか。
ドキドキとしながら見守っていると、いちご牛乳を見つめていたエリザベスの目からポロリと零れた雫。
な…な……。
『泣いたァァ!!やったァァァそんなに好きなのか!?』
「グッジョブアル新八よくやったネ!!」
「…アレ?やったのかコレ」
やったんだよ。
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