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「…………お前さァ、「ミザリー」って映画しってる?」



銀ちゃんが唐突ににーちゃんへとそう尋ねた。



「ケガして動けない作家が、オバちゃんに看病と称してボコボコにされるヤツ」

「アレ、恐かったよなー。オバちゃんの演技がスゴクて…」



次の瞬間、二人はガタガタと大慌てでベッドから這いずり落ちた。



「逃げるぞ架珠手を貸せ!!」

『さすがにミザリーはないって!大丈夫だから落ち着きなよ』

「てめー自分だけ逃げるつもりだな!?俺を見捨てて逃げるつもりだな!!さりげに距離とんな」



なんか恐くなってきたから。



「ちょっ…ちょっ、待ってくれ!コレろうそく抜いてくれ!!」

「てめーで抜けや!なんで俺が!」

「ダメだ、痛くて抜いたら何か大切なものも抜けていってしまいそうな気がする!」

「オメーは肛門に夢や希望までもつまってんのかァ!!」

「銀ちゃーん!元気にしてるアルかァァ!!」

「お見舞いにきましたよォ!!」



あ…。

最悪なタイミングで、新八達が来た。



「銀ちゃんのバカー!!」



痔のにーちゃんのケツからろうそくを抜こうとしたまま固まる銀ちゃんを見て、神楽は走り去ってしまった。



「いや…あの、悪かったな。神楽ちゃんにはそういう世界があることも伝えとくから」



マダオはそう言って、ぞろぞろと帰る連中と共に帰って行った。



「おいィィィィィ!ちょっと待てェェェ!違うから、そーいうんじゃねーって!!そういう世界って何!?どーいう世界!?」

『あれ、完っ壁誤解されたね』

「どーしてくれんだよお前コレ、帰って説明しても絶対なんかフワフワしたカンジになっちまうよ!」

「悪かったな。俺も一緒にいって説明するわ」

「余計あやしまれるから来ないでくれ!今後俺と同じページに出るな!」



とにかく早く逃げなくてはと、こっそり脱走しようとした銀ちゃん達はいつもと違う先生に診察だと言われて連れて行かれた。

待っても待っても戻って来なくて、暇になり売店でジャンプ買った帰り道。

ーーーーガシャァン.



「ああ!」

『!』



さっちゃん?階段からさっちゃんが器具ごと転けた。



『おーい、大丈夫?』

「メガネが…メガネメガネ」

『ちょっと聞いてる?』



なんか瞑想中なのか全然反応しない。このヤロ、人が心配してやってんのに。



「オォォオォォ」



急に目の色変えたさっちゃんは立ち上がるとどこかに駆け出してしまった。え……。



『…打ち所悪かった?』



なんだったんだ、ホント…。

少しして、なんだか院内が騒がしくなった。何かと野次馬で手術室まで行ってみると、手術室には包帯が張り巡らされてて、医師たちが亀甲縛りでぶら下がっていた。



『…何これ。ん』



……んん?



『銀ちゃん?』



よく見ると、ぶら下がる医師達に混じって銀ちゃんの姿もあった。

…マジで何があったの。



『あ…ミザリー?』



恐くなって私は、何も見なかったことにして病院から帰った。

私も入院しないように気をつけよう。





next.

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