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『魔破のり子、快速星出身。職業は…飛脚か…』
免許証を拝借してやっと身元判明。
『なに?快速星って』
「…噂にゃきいたことがあったが、こんな厄介な職業がホントにいたとはなァ」
「そんな言い方やめてください。私達は風の精霊とも呼ばれる由緒正しき風の民なんです」
『え、精霊なの?』
「いつも風をまとっていないと身を保てない繊細な、ホントッ、もうほとんど妖精みたいな可憐な職業なんです」
『え、妖精なの?』
「いやいや、そーいうロマンチックなものいいはもういいからよ。要するに何?いっつも走ってないとダメってこと?常に泳いでねーと死んじまうサメみたいな連中ってこと?」
「いえ、バイクとかとにかく風をあびれる乗り物に乗っていればなんとか…自分の足で走るのは…あの、タルいんで」
「じゃあ自分で走れや!なんで俺がバイク役やんなきゃいけねーの!?」
さっきからずーっと銀ちゃんはのり子を背中に背負って店の前を走って往復。ありゃキツイわァ〜。
『怪我させたねーちゃん走らせんのもかわいそーじゃん。バイク役ぐらいしてやんなよ』
「もうちょっとでバイクも直るからよ」
「てめーらはペチャクチャガチャガチャするだけだからいいけどよォ」
「ごめんなさい、ご迷惑おかけして。あの…私なにもできないから「サライ」歌います!」
「24時間走れってか!?」
私なら降板する。
「あのォ…そのオンボロバイクは後にして、先に私のバイクを直してくれませんか。私仕事が…」
「オイ、オンボロバイクってなんだよ」
「オメーのバイクは大破しちまって直すのに時間がかかる。代わりにコイツのに乗ってけ」
「オイ、代わりにってなんだよ、それ俺のなんですけど」
どんまい銀ちゃん。
「だがオメー、その怪我でバイクなんて乗れるのかィ?」
「乗れます。郵便受けの向こうで、私を待ってくれる人達がいるんです。それに、私実はこれが地球での初仕事なんです。こんな私じゃ、まともに働ける所がなくて、あちこちの星を回ってきて、もう、私にはここしかないんです。失敗なんかできないんです」
また別の仕事を探しなよ。万事屋なんかそんな軽いノリになるよ多分。
「負けられない。私、絶対負けられないんです。宇宙一の飛脚になるって、もう心に決めたんです」
なんだよ宇宙一の飛脚って。
「下ろしてください!私はこんな所でモタモタしてる暇ないんです!!」
「オメーがおぶってくれって言ったんだろーが」
「あなた達みたいな暇人につきあってる暇なんてないんです!」
んだとコイツ。さっき仕留めれば良かったか。
「早く下ろしてって言ってん…」
下ろした。
「うがァァァァ!!」
…バカなのかこの女。
仕方なく、銀ちゃんが運転して手伝ってやることに。私は帰ってくるまで暇になった。もう帰ろうかな。
「あ、やべ」
『どしたじーさん、頭のネジでも取れた?しめてやろーか』
「てめーのネジこそしめてやろーか。年がら年中緩みっぱなしのクセによォ。銀の字のバイクのブレーキ、ネジ一本忘れちまった」
は!?
『え?なにそれ、なんかマズイの?』
「あいつすぐ荒っぽい扱いするだろ。今頃は絶対ェ亡き者だ。くそ、こんなことなら無線なんかつけんじゃなかった」
『アンタ欠陥品とか余計な細工しか作れねーのか!?』
もしもの時のため、すぐさま無線で銀ちゃん達に連絡を。
『なに?このボタン?…あ、ついた。もしもーし、銀ちゃん聞こえるー?』
「銀の字、銀の字応答願います。こちら源外だ、応答願います」
音が入ったらしいが、向こうから返事はない。
『ん?何も聞こえないけどこれも欠陥品?』
「調子おかしーな。そっちの声はきこえんから一方的にしゃべるぞ。お前に一つ忠告するのを忘れていた。無線なんかつけてる暇があるなら、ブレーキをちゃんと直しとけばよかった。以上!」
『ただの懺悔じゃねーか!!助言するんだろーがさっさとしろよ!!』
「お前のことだから既にブレーキは亡き者になっていると思う。そんな時は下の方に赤いボタンがあるのが見えるか?」
『赤いボタン?』
「そいつは緊急用のからくり機動スイッチだ。押すと、ロケットブースターが起動して飛躍的に加速する。絶対に今は押すな」
『じーさん、多分ってか絶対銀ちゃん押して激怒してるよ』
つかなんでロケットブースターなんかつけたんだよ。
「銀の字ーーーーオメーのことだから早っとちりしてロケットブースターを稼働しちまうこともあるだろう。そんな時はメーター計の中に赤いボタンが…」
『じーさん、その赤いボタンはなんなのさ』
「最終兵器だ」
『最終兵器?』
「具体的に言やァ空を飛ぶ」
『それこそ無駄な技術だわ。ブレーキ直してやれよ』
…銀ちゃん、押してないかな。
顔を見合わせた私らは、無線機に顔を戻した。
「銀の字ーーーーお前のことだ。人の話を聞かないで最終兵器を使うこともあるかもしれねェ。一つ言っとく。そいつはエラクエネルギーを使う機械だ。オメーのバイクじゃ長時間飛行を続けるのは恐らく無理だ。多分、10秒位で爆発するから」
『え』
翌日銀ちゃんは入院した。
ロクなもの作らねーなじーさん。
next.
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