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「『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』」
なんか知らんが騙されていたのであったァァァ!
「待ちやがれェェェ!!コノヤロォォ!!」
焦りも見せず逃げる猫耳を全力疾走で追いかける。このっ…。
『待てって言ってんだろーがァァァ!!』
鉄扇を猫耳に向かって当てるつもりで投げたが、看板の上に避けられた。
「キャハハハハハ!!」
耳障りな笑い声あげてんじゃねーよ。
「何、あなた方あの子の家族ですかァ!?ご兄弟?バカヅラさげて何?あの子が心配でつけてたのォ?」
兄弟じゃねェよ。小娘の分際で見下げやがって腹立つ。
「心配いらないわ、私はなんにもしちゃいない。弟さんの貞操も無事だしィ。私がほしいものは愛だけ。そう、私は愛を盗む怪盗キャッツイアー」
「小娘パンツ丸見えだぞ」
あ、ホントだ。
「この世で最も美しいもの、それは愛。お金にも宝石にも私は興味がないの。でも、愛は目に見えない。ゆえに愛を奪った証に、私は男の財布を拝借させてもらうの」
そういう猫耳の手には財布が。
「新八の財布か?何訳わかんねーこと言ってんだオメー。要するにただのもの盗りじゃねーか」
『頭大丈夫かアンタ』
「あなた達の弟傑作だったわ。今時、あんな純情な子いたのね。コロリとだまされちゃって、おふざけであげた猫耳なんかつけてきちゃってさァ、おかしいったらないわ。なんだかこっちまで初恋の頃みたいにドキドキしちゃって。これがあるからやめられないのよね」
こんにゃろ人の純情踏みにじりやがって。流石に新八が哀れだ。
「オイオイ、ブリッコキャラはもうやめたのかい?俺、アレけっこう好きだったんだけどね」
『趣味悪ィなオイ』
「男ってホントバカよね。表層でしか物事を判断できないやつばかりでさァ。あっ、ホンネ言っちゃった。私ったらドジ。てへっ」
「ブリブリブリブリ、うるせーな」
「!」
あ。
「ウンコでもたれてんのかァァァてめェはァァァ!!」
「たれてんのかてめェはァァ!!」
ビルの上にからお妙と神楽が飛び降りた。
「てへっ、なんて真顔で言える女にロクな女はいないのよ」
「てへっ」
神楽、その真顔でもないふざけた顔なに?
「「うおらァァァァ!!」」
ーーーードゴッ.
「あ、ホントだ」
看板を猫耳ごと破壊した二人を見ながら、銀ちゃんが呟いた。
「ぐっ!!」
ーーーーガシャン.
倒れた看板の下敷きになるかと思った猫耳だが、無事だった。
「新八ィ!!」
ホテルから出て来たらしい新八が、看板を支えて猫耳を助けた。
「みんな、もうやめてよ」
看板を誰もいない方向へと新八は押し倒す。
「…恋愛は、ホレた方が負けって言うだろ。もういいよ、僕、別にエロメスさんのこと恨んでないし…むしろ感謝してる位なんだ」
感謝?
「短かったけど、ホントに彼女ができたみたいな楽しい時間がすごせて…だから、一つ言わせてください」
頬を染める猫耳。
「ウソじゃあああボケェェェェ!!」鬼の形相で新八は木刀で猫耳を撲殺。いや、殺しちゃいないけど…すげェな、あの恨みのこもった一撃。お妙や神楽からは賞賛されたけど、銀ちゃんは唖然としてしまっていた。
まァ、恋愛はさ、悲恋だろうとなんだろうと、人を成長させるものとか言うからね。新八も今回のことで、恋愛のれの字の一角目分くらいは、いい経験になっただろ。
next.
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