一寸の虫にも五分の魂
「なんや、パッとしないカレーアルな〜。わたし、芋とか野菜がドロドロにルーに溶けこんだ田舎カレーが好き言うたやろ」
くちゃくちゃ夕飯のカレー咀嚼しながら文句言うのは勝手だけど、なぜ関西弁。
「うぜーよコイツ!!なんで関西弁!?田舎が好きならご飯にどぶ水かけてすすってろ!」
「カレーはたまねぎが黄金色になるまで炒めるのが基本アル!半端な気持ちでつくらんといて!」
うるせーしどーでもいい。
「ああ?お前を黄金色になるまで炒めてやろうか?」
「あん?電子レンジでチンして爆発させてやろうか?」
「ハイ、ハイ。もうそこまで」
メンチ斬り合う二人を新八が見兼ねて止める。
「みんな、真選組に会ってからカリカリし過ぎですよ。無理もないか、あんな死闘を演じた後じゃ。まァ、でもご飯くらい楽しく食べましょうよ」
マジ、イラつく集団だったな。もう口開く気にもなれん。
「それにしても、あの人達ホントにカブトムシとりにきたんですかね?それにしちゃ随分と物々しかったような…」
ーーーーパン.
右から新八の頬に平手打ち。
「ちょっとォォォ!!なにすんの神楽ちゃん!?」
「蚊」
神楽の手のひらには、確かに蚊。
「………」
新八が睨むも、神楽は素知らぬ顔してカレーを食べる。
「…話を元に戻しますけど…あの」
ーーーーパン.
「!!」
今度は逆から。
「……………」
「蚊」
銀ちゃんの手のひらには、蚊。アホらし。
「…てめーらいい加減にしてくださいよ。蚊にかこつけて八つ当たりですか?」
「いや、だって蚊がさァ」
「ホント、いい加減にしてくださいよ。こんなバラバラでカブトムシつかまえられると思ってんですか?こんなんじゃね、真選組に大物、全部とられちゃいますよ。大カブトなんて夢のまた夢ですよ」
カブトムシ…クソッ、思い出してやっぱイライラする。
「あーあ、悪かったよ。俺も大人げなかった。神楽もスマンかったな。今度は田舎カレーに挑戦してみるよ」
「ううん、別にいいヨ。私ホントは田舎派よりシティー派なんだ。ゴメンネ銀ちゃん」
「そうか。じゃ、次はシティーカレーだな」
あ、蚊。
ーーーードゴ.
三人揃って互いを殴り蹴り合う様を見て、なんかこいつら似てきてんなと思った。
「てめェェ!!新八ィ、いい子ちゃんのフリしててめーも狙ってやがったな!」
「甘いんですよ。アンタらと何年つき合ってると思ってんですか」
勝手にやってろ。
ーーーーゴォッシャ.
………え゛。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!カレーがァァァシティーカレーがァ!!』
三人が暴れるもんだからカレーは鍋ごとひっくり返った。
「お前ら何してくれるアル!まだおかわりしてないのにィィ!!」
「俺なんか二口しか食ってねーぞ!どーしてくれんだよォ!!」
『こっちのセリフだボケェ!!夕飯どーすんだよクソどもがァ!』
「カレーの前でクソとか言ってんじゃねーよ!」
『そのカレーてめーらが台無しにしたじゃねーかァ!!』
もうイライラとか中途半端な空腹とか重なって、私らは昼に懲りずまた暴れ始めた。
くっそ、蚊うるせーんだよ!!
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