少年はカブト虫を通し命の尊さを知る
「カブト狩りじゃああ!!」
各々が好きに寛いでいれば、なんか神楽が麦わら帽子に虫かご、網を片手に叫び始めた。反応すんのも怠いし、全員で見向きもせず放置する。
「カブト狩りじゃああ!!」
行ってこいよ勝手に。
「カブト狩りじゃあああ!!」
「うるせェェェェ!!」
マジうるせェ。昼寝してた銀ちゃんのジャンプを退かしてまで叫ぶ神楽は頭打ったのか?
「なんなんだよ。オメーはさっきから一人でゴチャゴチャと」
『虫とり?虫が欲しいわけ?』
「私はこれからカブト狩りに行こうと思います。どーですか?」
「どーですかって行けばいいじゃない」
「行けばいいじゃないじゃない!」
「ぶべら!!!」
返事が気に食わなかったのか新八に神楽は平手打ち。
『アンタ確か、フンコロガシ持ってたでしょ。アレでいーじゃんもう』
「そう!きいてヨ!私、もう堪忍袋の緒が切れたネ。私のカワイイ定春28号が憎いあんちきしょーにやられちまってヨー」
泣いて見せる神楽だけど心底どーでもいい。
「それでさァ、曙Xまでやられちゃってね、みんなもっていかれちゃったアル。ねェきいてる?」
「「『あーきいてるきいてる』」」
テレビに集中しながらだけど。
「それでネ、私みんなの仇をとろうと思ってネ……ねェきいてる?」
「あーきいてるきいてる」
「それでネ、デッカくて強いカブト虫つかまえて、野郎のマゾ丸?アレ?サゾ丸?どっちだっけ。ねェどっちだっけ?」
「あーきいてるきいてる」
「野郎のネ、キテイル丸をやっつけてやろうと思うネ」
あ、カブト虫だ。話題に出るとテレビにまで出るもんなのか。
「でも私カブトムシのとり方なんてしらないネ。だから教えてヨ」
「カブトムシブーム再燃だとよ。時代はくり返すね」
『カブトムシをなに?見るの?食べるの?』
「なんかカブトムシ同士で相撲をとらせる遊びが流行ってるらしいですよ」
なにが楽しいんだか。
「ねェ教えてヨ」
「あーきいてるきいてる」
「きいてるじゃなくて教えてヨ」
「アレだよお前、曙はプロレスに転向した方がいいと俺は思う…」
「最初の部分しかきいてねーじゃねーか!!」
適当な返事しかしなかった銀ちゃんの顔面に神楽の拳がめり込んだ。
「もういいネ。とにかく一緒に来てヨ。ねェ、架珠。私どうしてもカブトムシがほしいネ!」
『はァ?ヤダよメンドーな。銀ちゃんと行きなよ』
「銀ちゃん」
「冗談じゃねーよ。いい年こいてなんでカブトムシとりなんてしなきゃならねーんだ。そんな一銭にもならんことに興味はねェ。自由研究は一人でやりなさい。僕ら社会人は忙しいの、カブトムシなんて…」
《ええー!!》
ん?
《このカブトムシ、そんなに高いんですか!車買えますよそんな値段!》
《ええまァ、僕にとっては車より大切なモノですから》
《このように大変高額なカブトムシも登場し、カブトムシブームは大人も巻きこんでの大きなものとなっていきそうです》
車買えるほどの、カブトムシ…?
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