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案の定、落さんはボロボロになって帰ってきた。お妙って意外と怖がりだったのか。あいつの方が恐かったけど。


「よかったっスね。より落ち武者っぽくなりましたよ」
「落ち過ぎじゃねーのか。地面にめり込んでるよもう」
『回避不能な落下速度だったからね』
「バンジーネ。裸族のバンジージャンプ並みに危険な落ち方ネ」


相手が悪かったよ、落さん。


「もういやだァァァ!!今年もう最悪!!もういや!!スタッフから客までメチャクチャな奴ばっかりじゃねーかよォ、もう!!」


あらら、とうとう心折れちゃった?


「オイオイ、お盆にそんなセリフを吐くもんじゃないよ。今年はまだまだ残ってるだろーが。そーいうセリフはやることやって大晦日に吐きましょうや」
「そんな事言ったってさ、もうこんなグダグダ感は人々の耳に伝わってるよ!もう客なんて来ないよコレ!!」


確かに客途切れたね。


「ああダメだ!これで町内会の役員も降ろされる!せっかくデカイ顔してふんぞり返れる地位まで上りつめたってのに!僕の居場所は町内会にしかないってのに!」


んな大げさな。


「…僕はね、家庭にも職場にも居場所なんてないんだ。万年平社員、机は窓ぎわ。ついたアダ名は「落ち武者」」


まさかのアダ名。


「家庭では母妻娘、女三人がタッグを組み、僕はまるで召し使い。それもこれも僕が情けないのが原因なんだが」


ホントに居場所がない!結構大げさな事ではなかったぞ…。


「でもそんな僕でも…こんな情けない僕でも、輝ける場所を見つけることができた。それが、ここ。僕を見て恐れおののき、逃げる人々…まるで自分が偉くなった気分だった。みんなを驚かそうと一年中いろんな仕掛けを考えて…こんな所でおわらせてたまるかァァ!!僕一人でも盛りあげてみせるぅ!!」


急に立ち上がり会場へと猛ダッシュしてしまった。


「落さーん!!」
『なにあの落差』
「ダメだありゃ。どこまでも落ちていくわ」
「落ちだからネ。名前が落だからネ」


何かに取り憑かれてんのかな。


「すいません。一人なんですけどいいですか?」
「あ、ハ…ハイ」


!誰か来た。


「いやー、ドキドキするな。僕、恐がりのくせについこういう所来ちゃうんですよ、バカでしょ」
「いえいえいえいえめっそうもございません」
「アレ?なんで泣いてるんですか」


…ヘドロだ。


「…ヤバイ、落さんヤバイ」
「落だからネ。名前が落だからネ」


とりあえず、グダグダにしてしまった始末も兼ねて、私らは本気を出すことにした。ヘドロ怖いけどね…。


「お皿が一枚」
「!」


夜道を歩いていたヘドロの足が止まる。


「二枚、三枚、以下省略」


長いからね。省略していいでしょ。


「アレ、一枚足りない」


音に合わせて、神楽が井戸から出てくる。


「う〜らめ〜し〜や〜」


すっげー命がけの脅かしだけど……ヘドロめっちゃビビってるし!!マジで怖がりかよ!


「フリスビーが一枚、二枚、以下省略。アレ、一枚たりない」


次は新八だ。


「うらめしワン!!」


もう脅かしは統一で。


『お札が一枚、お札が二枚、以下省略』


次は私だ。


『うらめしキョン!!』


キョンシーだからね。


「にんにくが一個、にんにくが二個、以下省略」


銀ちゃん弱点だけどまァいいか。


「うらめしドラ!!」


あと語呂ワリーな、やっぱ。


「落ち武者!ハイッ、スーナック」


ヘドロ囲んで落さんに用意したスナックコール。とりあえずスナックにしたのは手近にあったから。早く出てこいや。

スナックコールに合わせて手拍子もつける。


「スナックがいーっこ」


あ、出てきた。


「スナックにーこ。以下省略」


さァ、やるんだ!


「うらめしやでござるぅぅぅぅ!!」


ーーーードゴ.


「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」


右ストレート喰らった落さんが吹っ飛んだ。あれ?


「いやー、面白いデモンストレーションでした。新しいタイプの肝試しでしたね…でも、殺生はいけない。あやうく虫をふむところでしたよ」


そういうヘドロの手にはちっさな虫。


「「『……………』」」
「落だからネ。名前がオチだからネ」


どんまい、落さん。



next.

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