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渡る世間はオバケばかり





太鼓や笛の音が、薄暗くなってきた空の下奏でられる。


「あー祭り囃子の音が」
「いいなァ。みんなお祭り行けて、私もボソボソの焼きそば食べたいアル」


私らは祭に向かう人々とは別方向、神社の階段を上がっていた。


『グダグダうるさいなァ。私だって祭り行きたいっつの』
「仕方ねーだろ。こいつは毎年、かぶき町で行われている恒例の行事なんだから。毎年交代で町内の誰かがこーいう役回りやらなきゃならねーの」
『いわば、かぶき町で生きていくための掟だよ』
「それに、こいつを毎年とりしきってる役員の落ってオッさんがうるさくてよ」


じゃなきゃバックれて祭り行ってるさ……ん?


「坂田サン、打ち合わせするから昼には来てってあれほど言ってあったはずだよね」


あ、落さん。落ち武者だ。


「打ち合わせもナシに大会始めてケガ人や事故が出たらどーするつもりなんだァ!!もういい!やる気のない奴は帰れェェェェェ!!今年は僕一人でやる!」


え、ホント?


「すいませんでした。じゃっ」


回れ右して帰り始める。これでお祭りいける!


「よーしっ!!その一言がききたかった!もう怒ってないから戻っておいで…アレ?ちょっと?坂田サン!?あのアレ…西瓜とか一杯あるよ!!坂田サン!!スイマセンでした坂田サン!!調子に乗ってました坂田サン!!」


西瓜は食べたい。なんか必死に食い下がるから、西瓜もあるのでひとまず戻った。


「まったく、頼むよホントに。こんな時間じゃもうリハやる時間もないよ」
「いや、ホントすいませんでした」
「架珠さん、塩かけます?」
『かけるかける』
「いや、すいませんでしたって、君達さっきからすいませんの態度じゃないよね」
「スイマセンしたーっ!!」


ーーーーバン.


「私も長年生きてきたけどね、こんな攻撃的なスイマセンでしたは初めてだよ」


落さんの足下に向かって神楽は西瓜を投げつけた。あー、気合入ってるね。


「どーするんだ。このままぶっつけ本番で肝試しを始めて、もしケガ人でも出たら。私の役目はね、毎年この行事を無事、何事もなくとり行うことなんだ。楽しい肝試し大会で事故なんて、絶対あってはならないことだからね」
「頭に矢が突き刺さってる奴に言われてもしっくりこないアル」
『目玉も飛び出てるぞ病院行ってこい』
「これは事故じゃない、戦だから。戦で負けて…っていう設定だから」
「戦でケガはアリアルか?」
「戦でケガはアリだよ」
「でも戦も時の為政者達がてめーの都合で勝手におっ始めた喧嘩であって、巻きこまれる俺達庶民からすれば、戦も事故と大差ないと俺は思うね」
「んだよもォォォ!!この格好をやめればいいのか!この格好が気にくわないのか!」


うん。


「とにかくね、肝試しにくるようなお客さんってのは、もうはしゃいじゃってボルテージぐーん上がっちゃってるから何するかわかんないの。だから気をつけないとホント、思わぬ事故とか起こるからね」
「心配いらないっスよ。俺達はボルテージ下がりっぱなしだから。子供達のはじいでた気持ちもいつしか沈んでいきますよ」
「そんな肝試し嫌だから!盛り上がんないから!」
「大丈夫ですって。リハなんかしなくてもワーキャー言ってりゃ、お客さんもつられてワーキャー言いますよ」
「まっ、僕らに任せといて下さい」


それぞれ着替えて武器である包丁、ライフル、チェーンソー、ハサミを構える。


「よし。じゃ、行くか」
「おいィィィィィ!!ワーキャーって何ィィ!?悲鳴じゃなくて断末魔のさけび!?」


ワーキャーだからいーじゃん。


「何しにきたの君達!!それ肝試しじゃないよね!?肝殺とりにいってるよね!?」
「これ位やんねーと今のすれたガキはびびんないスよ」
「ダメだって!人の話きいてる?ケガとか事故とか出したくないんだって!!」


大丈夫だって。


「 で、何その格好?オバケの衣装もってこいって言ったよね?お前ら全員ただの殺人鬼じゃねーか!!」
「本当にこわいもの、それはね……人間の心です」
『今時は高校生がハサミ所持するキャラでもあるからね。ホント、人間て怖い…』
「オメーらの価値観なんてしりたくもねーよ!!」
「私はちゃんとオバケアルヨ。カグリーナは殺人鬼の魂が人形に乗り移ったっていう設定なんだヨ」
「しらねーよそんな設定!!包丁もった家なき子にしか見えねーよ!!お前にいたってはもう何がやりてーのかわかんねーよ!!」
「あん?アレっすよ、ヤクザのオバケっス」
「バカの考え方だよ!恐いものと恐いもの足したらものスゴク恐いものになると思ってるバカの考え方だよ!衣装チェンジだ衣装チェンジ!去年使った奴まだ残ってるから、とりあえず着替えて!!」
「落さんすいません。じゃこれ、ヤクザってのはナシでガードマンのオバケにします。それならいいでしょ?」
「いいわけねーだろ何それ!?何問題解決したみたいな顔してんの!?」




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