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扇風機つけっぱなしで寝ちゃうとお腹こわしちゃうから気を付けて





暑い。ちりんちりん、なんて風鈴の音が聞こえるけど、涼しげな気配なんて微塵も感じない。とにかく暑い。

銀ちゃんは水入れた桶に足入れてアイス食べてるし、神楽は扇風機の前に座り込んで、新八は団扇を手に床にひっくり返ってる。定春なんか冷蔵庫に顔突っ込んでるし。

私は冷えピタ貼ってソファに項垂れてるけど、ぶっちゃけ冷えピタもうぬるいし。暑い…とにかく、ホント、暑い。


「462」
「何それ?」
「今年の夏熱中症でぶっ倒れた人の数ですよ」
「マジでか」


すげーな。驚異的な数字じゃん。


『銀ちゃん…今年こそエアコン買おう。聞いたでしょ今の…扇風機だけじゃ乗り切れない。死んじゃう』


毎年なんとか切り抜けて来たけど、これはもうマジ無理。


「バカ言ってんじゃねーよ。そんな金どこにあんだ?エアーをコンディショニングする暇があるなら、マインドをコンディショニングする術を覚えろ」


あっつい…神楽単体に当たっている扇風機のスイッチを押し、首を回す。あー…ぬるい風…。


「心頭滅却すれば南極もまた北極だよ」
「銀さん、言っとくけど南極は南って言ってるけど別に常夏じゃないからね」


右に左に行く扇風機の首について行く神楽、うっとおしい。スリッパで頭叩いてソファに戻る。


「あん?わかってるよお前、南極がお前、常夏のパラダイスのわけねーだろ。つまり俺が言いたいのは、心頭滅却してもアレ…何も変わらないよね」
「恥ずかしい!間違いを隠すために自論を捨てやがったよ!ひどいよこの人!数行にわたるやりとりがパーだよ!」


暑くてもツッコミはするんだね、新八。


「大体こんな日に外出てみろ。エアコン買う前にバタンキューだ。こういう日はおとなしく家でゴロゴロしてるに限るの」


まァ確かに、外に出るのは自殺行為に等しい気がする…てか、風あたんないんだけど。

見ると銀ちゃんと神楽が扇風機を自分に向けようと無理やり動かしてた。


「ハァー。頼みの綱は扇風機だけか。みんな、大事に使いましょうね」
『ちょっと!アンタらなに独り占めしようとしてんの…』


ーーーーボキッ.

………ボキ?

次の瞬間、扇風機の首が重たい音を立てて床へと倒れた。ついでに私も切れて散々ボコッた銀ちゃんを扇風機もしくはエアコン買いに外へと追い出した。


「ハイ。ということでな」


夕方。扇風機を手に帰って来た銀ちゃんは、なんか地球防衛軍として悪と闘い地球を救い、そのお礼にエアコンを蹴って扇風機を貰った、と。


「血のにじむような思いで手に入れた扇風機なワケ、これは。見ろ、このまばゆいばかりの光沢を」
「なんかうす汚れてないですかそれ?」
「それはお前の目がうす汚れてるからだ新八君。いいかい、今度は壊さないように大事に使うんだよ」
「いや壊したのアンタじゃないですか」
『まァいいよ。とにかく扇風機……あれ』


カチ、と。スイッチを押すも扇風機は回らない。


『ちょっと、動かないけどこれ』
「それはお前が日頃ぐーたらしてるからだ架珠ちゃん。貸してみろ」


銀ちゃんが押しても、扇風機は動かない。


「あれ、おかしーな。つかねーぞ」


はァ!?


『なにふざけたことぬかしてんだこのヤロォォォォ!!』
「てめェェェさてはそれ拾ってきたなァァ!!大げさな作り話までしやがって!なにが地球防衛軍だ話が長ーんだよ!」
「ウソツキ、この大ウソツキめ。持ってった金何に使ったアルか!パチンコか!?」
『大体なんでエアコン断ったんだよバァカ!扇風機とか古ィんだよエアコン買えや!!』
「いだだ、ちょっ、待って!!ホントなんだって!俺、悪の組織やっつけたんだって!!」
『夏休みに中二病こじらせたガキみたいな作文発表してんじゃねーぞ!!』
「違う!俺ホント、地球を救ったんだって!!」


存分に銀ちゃんをボコッた翌日、扇風機は源外のジーさんに直してもらった。よく見ると、扇風機には地球防衛軍より上様とあり、ちょっとだけ銀ちゃんの話を信じかけた。



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