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よい子のみんなは部屋を明るくして姿勢を正してこんな大人にならないように気を付けて読みましょう




「やめてェェ!!離してェ!!」


女を見つけたジーさんは、黒服の部下に命じて女を拘束した。


「この性悪女が!とうとう見つけたぞ!!勘七郎をどこへやった、言え!」


詰問された女は、口を閉じ視線をそらす。


「この女!!立場をわきまえんか!」


平手の音が響く。んな路上で騒ぐなや〜。


「オイオイ、ちょっとちょっと。やり過ぎじゃないかィ?そんなんじゃ、しゃべるもんもしゃべれなくなるよ」
「すいません、つい興奮してしまって」


お登勢さんが言うと、ジーさんは荒げていた声を戻し頭を下げる。


「ですが、ここからは家族の問題ゆえ、私達で解決します。お騒がせして申し訳ございませんでした」


うっすらと見えたジーさんのあの目は、絶対何かを隠してるものだった。


「おい、行くぞ」
「へい!」


車に乗せられた女が縋るようにこちらに振り向き目があった。そのまま、車はエンジンをかけると発進。


「……………」
「お登勢さん」
「あ゛ーーーー!!チョットチョットコレ!」


いらァ。


『うるせーぞキャサリン。私のデリケートな頭に響くだろーがなに!?いだだだだ』
「架珠、これ。あのジジィが捜してるって言ってた孫の写真…」


んー?……あ。


「これって」


銀楽…てか、勘七郎?え?なに?え?


「……………ねェ、ヤバイんじゃないんスかコレ?銀さん、ヤバイんじゃないんスかコレ?変なコトに巻き込まれてんじゃないんスかコレ?」


バリバリ巻き込まれてるだろーね。どんまい。


『日頃の行いがものを言うって言うからね。アイツの自業自得だよ、多分』
「銀ちゃん、生きて帰って来るアルか?」
「神楽ちゃん、そんな物騒な事言わないで…あり得ない話になってきてるから」
『まァね、あとは銀ちゃんがなんとかするよ、多分。生きて帰って来るよ、多分。だから安心して待ってよう』
「どう安心して待てと言うんですか」
『風呂入って寝る』
「それ、架珠さんがそうしたいだけですよね。どんだけ飲んだんすか」
『結構飲んだ。キツイわァ〜』
「それこそアンタの自業自得だろ。ちょいと待ちな」


あー?家に帰ろうとしたらお登勢さんに捕まった。なによ?


「何か裏があるのはアンタも感づいてるだろ。少し、調べてきてくれるかィ?」
『話聞いてた?結構飲んだの。もう二日酔いと寝不足で死にそうなの』
「…でも、あの人大丈夫ですかね…」
『殺しはしないでしょ。孫の行方もわかってないんだしね』
「デモキット、痛イ目ニハアイマスヨ」
「そんなの見過ごせないネ!架珠!!今すぐ調べに行くアルヨ!!」
『ちょ…だからデケー声出すなって…揺するなって…わか、わかった…うぇぷ、行くから…ゆーすーるーなァー…』


勘弁して神楽さァん…。

しっかり働けば家賃ひと月分はまけてくれるとのことなので、とりあえず橋田屋のビルへと使用人として潜入捜査だ。


「ちょっと架珠さん、しっかりしてくださいよ。大丈夫ですか?」
『あ゛ー無理…ホント、もうお酒は飲まない。私に誓って』
「あ、100%飲みますよそれ」
「あ!アレ」


ん?神楽の声に顔を上げると、廊下の先に見知った姿を見つけた。


『あれ?マダオじゃね?』
「ですね…あ、神楽ちゃん?」


ーーーーオイオイ、こいつァあんまり長居する所じゃなさそうだな。

ーーーーだが、この仕事をやめてどーする。またプーの生活に戻るのか?


マダオの背後に忍び寄り、神楽が勝手にマダオのナレーションに付け足す。


ーーーーそうだ、いつも俺はそうだ。ちょっと嫌なことがあったらスグ仕事変えて…逃げぐせがついてる。

ーーーーその通りだ。まるでダメな男…マダオだ。そうだ、死のう。


なに神楽、マダオを自殺に導きたいの?


ーーーーいやいやいやいや。おかしいぞ、なんで死ぬの?おかしいぞ今の。そうだ京都行こうじゃないんだから。

ーーーーいやいやいやいや。死んどけって、どうせこの先生きてたってロクなことないアル。


「アルって何だ……ん?」


あ、バレた。


「!!…って何してんだてめーらァァァ!!お前かァァ!人の頭ん中に変なナレーション流してた奴は!!」
『やっほー長谷川さん』
「架珠さん!なんでこんな所にいるんだ!?何やってんだアンタら!?」


何って…。


『見てわかんない?』
「家政婦アルネ」
「長谷川さんこと、なんでこんな所にいるんですか?また転職ですか?」
「またって何だよ、なんだよその眼は」


蔑んだ眼だね新八。


『まァ、丁度いーや。長谷川さんさァ、ちょっくら私ら案内してくんない?実は私ら、お登勢さんに言われて橋田屋調べに来てんの』


あの女の居る場所まで案内してもらいながら、マダオに掻い摘んで経緯を説明。


「オイオイ孫って何!?まさか橋田屋の旦那の孫、勘七郎君のこと!?それが万事屋の前に捨てられてて、銀さんがどっかつれてっちゃったって!?」
『ちょ、長谷川さんうるさい。頭に響くからヤメテ。大袈裟すぎるんだよマダオは』
「大袈裟じゃねーよ。橋田屋の旦那、浪人を使って血眼になって探してるって話だぞ。殺られちまうよ!あのオッサンただの商人じゃねーんだって!なんか、黒い噂の絶えねー危ねーオッサンなんだって!しかも、それを調べるってバカか!帰ろう!オジさんと一緒に帰ろう!酢昆布買ってあげるから!」
『それで喜ぶのはどっかのアルアル娘だけだよ。こちとら家賃をかけて来てんだから、そー簡単には帰れないよ』
「それに、そんな話聞いたら余計に帰れないですよ。やっぱりお登勢さんの行った通りだ。架珠さん、何か裏がありますよこれは」
「その通りネ!酢昆布ぐらいで釣られる尻軽女と思ったかコノヤロー!何個だ!?一体酢昆布何個で釣るつもりだった?まさか四個じゃないだろうな!四個もくれるんじゃないだろうな!」
『うるせーよ神楽』
「神楽ちゃん静かにして」


なんかだんだん、頭痛にも慣れてきた気がする…。


「ここですか?あの女の人が連れ込まれた部屋は?」


まだマダオに騒ぐ神楽は放っておき、新八と二人鉄格子の隙間から室内を覗く。


「オラ、さっさと吐け!勘七郎様はどこだ!?吐けば楽になるぞ!ああ〜ん!?」


柱に括り付けた女に水攻め中だった。


「相も変わらず強情な女より勘太郎も酔狂な男だったが、こんなうす汚れた卑しい女のどこにホレたのやら。皆目見当つかんわ」


勘太郎…って、口振りからあのジーさんの息子か?てことは、銀楽…じゃねーや、勘七郎の父親か。


「ええ?ひとの息子をたぶらかし死なせたうえ、あまつさえその子をさらうとは。この性悪女が」
「勘七郎をさらったのはあなた達の方でしょう。あの子は私の子です、誰にも渡さない」
「よくもまァ、いけいけしゃあしゃあと。お前のような女から橋田家の者が生まれただけでも恥ずべきことだというのに。勘七郎に母親はいらん。いや、橋田家にお前のようなうす汚れた女はいらんのだよ。あの子は私が、橋田屋の跡とりとして立派に育てる。その方があの子にとっても幸せなことだろう。お前のような貧しい女が一人で子を育て、幸せにすることができると思っているのか?」


…裏ってこのことだったのか。かどわかししたのはあのジーさんの方か。


「………架珠さん、これって…」
「オイ、そこで何をしている?」
「!」


振り向くと、刀持った物騒な連中。


「使用人か?」


げっ!!


「あっ…アレでございます。こ…この者達三人、新入りでございまして…あの、ビルを案内していたところでして」
「そーでごぜーますご主人様」
「いやご主人様じゃないから」
「なんだ?なんかこんなん言われた方が嬉しいんだろ男共は」
「ダメだよ!神楽ちゃんそんな事言ったらダメ!!」


まァ九割方あってるよね。


「それじゃあ、私達は失礼しま…」
「待ちな」


何食わぬ顔して通り過ぎようとしたら、真横からの待ったの声。


「くさいねェ。ねずみくさい、ウソつきスパイの匂いだね」


どんな匂いだよ。


「…いや、獣の匂いも混じってる」
『!』


ーーーーガキィン.


「架珠さん!」


とっさの反応で構えた鉄扇に、刀がぶつかる。


「クク…あの人と同じ獣の匂いに、二回も会えるとはねェ」
『ああ、ウチには定春っつーバカデカイ犬がいるからね』


弾き返して距離を取る。


「そろそろ、鉄くさい血の匂いがかぎたくなってきたところさね。闘り合ってくれるかィ。この人斬り似蔵と」


刀構える相手にとりあえず、雑魚キャラではなさそうだったので睨んでおいた。


next.

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