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何であれ やるからには負けちゃダメ




お登勢さんが、焼肉を奢ってくれるらしい。ただ遊びに出かけた神楽がいなかったので、どーせ空き地だろーと探しに向かった。いやあいつがいない方が分前も増えるけどさ、後から知ったら半殺しにあいそうだし。


「あっ、アレ神楽ちゃんじゃないスか?」
「あっ、いたいた。おーい」


ちょっと神楽、そのジジイ誰だよ。


「あ〜。缶蹴り?」


ガキ共は帰ったらしく、神楽はジジイに絡まれていた様子。


「ウン。あのジジイがみんなでやろうって!やろうヨ」
「何言ってんのお前。知らねーおっさんと遊ぶなって脇がすっぱくなる程言ったろ。バカか、お前。さらわれてーのか?」
「おっさんじゃない、ジジイじゃぞ。エエじゃろ?」
「だまれ。男はみんな獣だ」


つーかなんで缶蹴りだよ。ジジイ年考えろ。


「もういくぞ。しらねージジイよりしってるババアだ。なんか焼き肉食わせてくれるらしいぞ珍しく。これからの時代、ジジイよりババアだ。スゲーぞこのババアは。「苦しい時、そんな時、頼りになるババア」略して……」
「クソババーじゃねーかコノヤロー!」


略さなきゃいい意味じゃん。


「おーい、俺が鬼やってやるからやろーぜ。缶蹴ってくれよ缶!」
「シツケーナクソジジー」
「オイほっとけって!!」
「ソンナニ蹴ッテホシイナラ蹴ッテヤラァァ!!」


ダッシュしたキャサリンは勢いそのままに缶を蹴り飛ばした。その缶は屋根の向こう側へと消えた。


「アレ20秒以内ニ拾ッテキナ。ソシタラ遊ンデヤルヨクソジジイ」


うわー…。


「ワルッ!ワルだよ!!」
「キャサリンてめー年寄りいじめてんじゃねーヨ!」
「オ黙リ。アタイハタンパク質ガトリタクテウズウズシテンダ」


そりゃ私もだけど、あんまりワルだろお前。まァ、焼き肉食えるならさっさとしよーや。


「サァ!ババアノ気ガ変ワラナイウチニイクヨ!!」
「キャサリン、お前は帰って店番な」
「年寄りをいたわれない奴が年寄りに優しくしてもらえると思うなよ」
「ナニ言ッテンスカ、オ登勢サンハ年寄リナンカジャナイッスヨー。マダマダピチピチヨ」


ババアっててめー言ったばっかだろ。

ーーーーガッ.

ん?


「よーし、缶拾ってきたぜー!!缶蹴り開始ィィ!!」


…ん?

なんか、まじで缶を拾って来たジジイに、これは相手をした方が早いと悟る。

メンドーだから傍観してようとしたら銀ちゃんに腕引っ張られた。


「てめ、自分だけ楽しよーとすんじゃねーぞ。まだ一言も喋ってねー奴は働け!」
『一言も喋ってなかろーと心の中ではめっちゃ喋ってるよ。アンタらの動きを読者に説明してるよ』
「ハァー。さっさと終わらせとくれよ」


無理矢理引っ張り込まれ、結局参加。あーもー焼き肉ー。


「準備はできたかーい、よい子のみんな!!じじい!いっきまーす!!」


壁と壁の間、ドラム缶の裏に潜んでいると、ジジイの元気な声が。


「どこへだ?あの世にか」
『全身突っ込んでるよーなもんだろ』
「…ったく、なんであんな見ずしらずのジジイに付き合わなきゃならねーんだ」
「焼き肉食べに来たのに」


ホントホント。


「もう僕おなかペコペコなんで、おじいちゃんには悪いけど適当につかまって早く切り上げません?」
「ふざけるなァァァ!!何の努力もせずに自ら負けを選ぶとは、貴様それでも軍人か!!貴様のような奴を総じて負け犬と言うんだ!!軍曹!!兵長!!この負け犬を軍法会議に!」
『うるせーよ一等兵』
「でかい声で鳴くなチワワ」


なんか顔厳つくさせた神楽の頭を銀ちゃんが引っ叩く。


「なんであれ、やるからには負けるつもりはねェ」
『しかも相手はジジイだしね。若者の実力見せてやるよ』
「焼き肉も負けて食うより勝って食う方がうまいであります軍曹、兵長」
「その通りだチワワ一等兵。缶蹴りなんざしょせんガキの遊びよ。鬼に見つかる前にあの缶を倒せば勝ち。要は見つからずにあの缶を倒す方法を見つければいい。そーいうことで、発射用意」
「『あいあいさー』」
「それは缶蹴りというんですか軍曹ォォ!!」


岩を構えた私らに新八が叫ぶ。


「缶蹴りだ純然たる。小さい頃を思い出してみろ、風で缶が飛ばされてせっかくつかまえた人質がパーになって泣いてる鬼がいたろ。アレがアリならこれも…」
「ナシだろォォ!!自然現象でもなんでもねーし!」
『自然現象も物理現象もバレなきゃ一緒だよ』
「いやそーいう問題じゃないでしょ」
「貴様は甘いんだよォ!缶蹴りはなァ、いかに憎たらしく缶を倒し、鬼をいじめ泣かせるか、そーいう悪魔の遊びでもあるんだよ!!鬼になったらもう終わりなんだよ!何回も何回も缶倒されて、みんなが隠れるまで100数える間に数数えるフリして何回泣いたことかァァァ!!」


私も泣いた。


「そんな苦くも甘酸っぱい遊び…」
「「『それが缶蹴りだァァ!!』」」


缶目掛けて岩を投球すると、鈍い音立ててジジイの側部に命中。声も上げず、ジジイは地面に倒れた……マジか。


「おいィィィィィィ!!缶蹴りどころか人殺しィィィィ!!コレは純然たる人殺しだよ!!」
「チワワぁぁ!!誰がジジイに当てろと言ったァァ!!」
「軍曹ォォ!お言葉ですがアレは兵長の投げた弾であります!自分は悪くありませェェん!」
『一等兵の分際で兵長に罪をなすりつけるつもりかァ!軍法会議モノだぞコレは!』
「フツーに裁判沙汰だよ!人殺しがァ!!」


ん?


「ちょっと待て!」
「起きた!!普通に起きた!!」


マジかよジジイ!その体、鉄で出来てんのか!?


「チッ!」
「!!」


傘を構えた神楽。


「くたばれェェジジイがァァ!!」
「だからそれ缶蹴りじゃねーって!!」


どストレートにくたばれって言っちゃってるし。

発砲した神楽の弾は缶を狙ってはいるものの、なんとジジイはその弾を全て杖で器用に弾きやがった。


「杖で缶を!」
『全弾弾かれたね』
「チッ」
「なんだ?あの身のこなし」


元気すぎるだろ。


「みーつけた!!そこじゃァァァ!!」
「い゛っ!!くない!?」


ジジイが投げて来たのはなんと、くない!


「「「『うおおおお!!』」」


ドラム缶貫いて次々飛んできたくないをしゃがんで避ける。恐ェェェ!


「なっ…何者だあのジジイ!?」


なんか只者ではないジジイに作戦変更して、私と新八が囮になり缶を狙うことにした。


「ムヒョヒョヒョヒョ!」
「ぬおおおおおお!!」


屋根から屋根へと飛び移って追いかけて来るあのジジイ、ホント何者?忍者かよ。


「ムダムダ。俺に足で勝てると思っとるのか!?おチビと眼鏡くーんみーっけ!!」
『バーカ!作戦にはまったなジジイ』


足を止め、追い詰めたと笑うジジイにニタリと笑う。


「缶蹴りで一人の獲物を深追いするなんて愚の骨頂」
「!!」
『銀ちゃん!!』


ーーーーボン.

ドラム缶の蓋が開き、銀ちゃんが姿を現す。


「しまっ…」
「ギャハハハ!!あっちの缶がガラ空きだぜェ!!もらっ…ん?」


ーーーーガン.

グラリと、バランス崩したらしい銀ちゃんはドラム缶に入ったまま壁に向かって倒れた。

ーーーーズリュリュリュ.


「ギャアアアアアアアアア!!頭けずれたァァァ!!頭おろしちまった!!」
『何やってんだバカヤロー!!』
「ギャハハハ!バーカ白髪もみーっけ!!」


しまったジジイが!


「架珠!新八ィィ!!」
「はいィィィィ!!」
『うらァァァ!!』


走り出して新八と共にドラム缶を蹴り転がす。


「かーんふん…」
「させるかァァァ!!」


意気揚々と缶を踏もうとしたジジイに向かって、銀ちゃんが入ったドラム缶は転がって行く。


「!!」


その勢いを失わず、ドラム缶はジジイの隣をすり抜けて行った。

あ………ちょっと方向誤ったね……。


「めがねとチビと白髪みーっけ。缶ふんだ」


私らは呆気なく捕まったけど、缶蹴りは神楽が缶蹴って勝ったよ。いつの間にかジジイはいなくなってたけど。


next.

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