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愛犬の散歩は適度なスピードで




《先日かぶき町に出現した巨大犬の続報です。異変があったようです、あっ!アレを見てください!!》


顔付きがゴツくなった定春が、町中で暴れ出した。テレビでそれを見た私らは急いで後を追おうと外に出ると、既にテレビ局のカメラに囲まれていた。


「恐縮です!大江戸テレビの梨本ですが!!今回のことは一体どう責任をとられるつもりなんですか!?」


マイク向けられるけど誰が答えるかバーカ。


「うるせーなボケ、どけー。梨本ォ!ホクロちぎるぞコノヤロー」
「いだいいだいいだい!撮ったか!!今の撮ったか!?」
「とれましたァ!ホクロがとれてますよォ梨本さん!!」
「どいてくださーい!!僕たちこんな事してる場合じゃないんですよォ!!」
「オイ近所迷惑ナンダヨオ前ラ」


店の中からキャサリンが出てきた。


「私ガスタジオデ洗イザライ話スカラ静カニシテ」
「てめェェェェ何仲間売ってんだァ!!ホントッ、お前はいっつもいっつもよォォ!!」
「グォォォ!見テクダサイ!コーユー連中ナンデス。撮レテル?撮レテル?ぐふッ」


マスコミのイライラも込めて新八に首締められてたキャサリンにトドメをさす勢いの右ストレートをかました。


『だーもー退けっつってんだろーがァ!』
「くそ、これじゃ埒があきませんよ銀さん!このままじゃ定春が!!」
「ね〜んね〜ん、コローリよ。おコローリよ〜」


は?


「マスコミ〜よい子だ〜ねんね〜しな〜」
「あれ?なんか急に眠気が…」
「!」


変な子守唄を聞いたマスコミ共が、一斉にその場に倒れて眠り始めた。どーなってんの?


「オイオイ、なんだこりゃ。梨本ォォ!!しっかりしろ梨本ォ!!」


あれ?なんか犬が走ってきた。


「うおっ!!なんだコイツ!?定春!?ちっさい定春だ!」


銀ちゃんの足元に縋り付いた犬は、大きさは違うけど顔は定春そのものだ。なんかちっさいと可愛いなオイ。


「まァ珍しい。狛子が私達以外の人になつくなんて」


ん?誰?


「お初にお目見えするわね。私達美人巫女姉妹、阿音&百音」


自分で美人とか言ってんじゃねーぞ。

巫女と言うように、スクーターで現れたその姉妹は巫女服を着ていた。


「あなた達にあの巨大な犬を預かっていただいた者でございます」


なんだって!?

私らも原付に乗って定春を追いかけたが、定春が向かったであろうビルの向こうで爆発音。


「あわばばば、なんかエライことになってますよ。どーしよう」
『心配ないって。私らは捨て犬を育てた善良な市民であり、罪はない』
「その通りだ。責任は全て、定春を俺達の所へ捨てたこの女達にある」
「なーに言っちゃってんのアンタら!」
「生みの親より育ての親ですわ!あれはアナタ達の教育の賜物です!」
「ふざけんじゃねーぞ。アレ世話すんのにどれだけ食費かかったと思ってんだ!耳そろえて返せアバズレ巫女」
「誰がアバズレよ!私の妹をバカにする奴は許さないわ!!」
「おめーのことですよ。言っておきますが私は最後まで反対したんですよ。神子は二体そろって初めて龍穴を護る守護神となりえる。それを民間人に預けるなんて…」
「おけつを護る守護神?」
「アナタ達もきいたこと位あるでしょう?風水ブームもあったし」


確かにある気がしないでもない。


「この大地の下には「龍脈」と呼ばれる大地の気の流れ、星のエネルギーの奔流とも言えるものが存在するのです」
「腸みてーなもんか?」
「そして、この龍脈が大地の上に噴出するポイントを「龍穴」といいます」
「肛門みてーなもんか?」
「イチイチ下の話に置き換えねーと理解できねーのか!?」


そんな奴なんだよ銀ちゃんは。


「古来より、その龍穴の上に国を興せば、大地の力の加護でその国は栄えるとされ、逆にこれを欠けば、大地はやせ、人心はすさみ、国は滅ぶとされている」
「勿論、江戸にも龍穴は幾つか存在します。そのうち最大の龍穴を「黄龍門」というのです。そして、この黄龍門を太古の昔より守護し、神の使い、神子と呼ばれていたのが、狗神なのです」
「さ…定春が」
「要するに肛門を護るケツ毛ですか?」
「もういいわ。それで好きに生きていけ」


定春なんかすごい奴だったんだな。


「私達姉妹は、代々狗神を奉り、共に黄龍門を護ってきた神殿の巫女だったのです。でも、天人達は私達一族を神殿から追い出し、黄龍門にあの巨大な塔…ターミナルを建ててしまった。惑星国家間の移動を容易にしたあの転送装置は、龍脈の力を利用して稼働しているのです」


へー。そりゃあ、龍脈食えばえいりあんもデッカくなるわな。


「おかげで私達は職を失って、生活苦のために神子まで手離すことに」
「生活苦?生活苦で奉ってたもん捨てちゃったの?」
『おかげでこっちも生活苦だっつの』
「天人の奴らめ。神聖なる龍穴をあんな事に使うなんて、きっと天罰がくだるわ」
「お前らは?お前らもくだるよね。絶対天罰がくだるよね?」
『むしろその天罰って今なんじゃね?』
「しょうがないでしょ!先代の狗神があんなバカでけー子供産むんだもんよォ!飢え死にさせるくらいなら、誰かに預かってもらった方がいいでしょ!」


逆ギレすんなよアバズレ。


「大体アンタら万事屋でしょうが!困ってる人がいたらなんでも助けてくれるつーから頼んだのに!!とんだ見込み違いだわ!」


あ?


「金も払わねーで何言っちゃってんのこの女!!そのキレイに揃った前髪をジャイアン風にしてやろうかァァ!!」
『万事屋は慈善活動じゃねーんだよ!金も払わねー困ってる奴のことなんか知るかァ!』
「金金金金!そんなに金がほしーか!これだから強欲な俗世の連中は嫌いなのよ!そんなに金がほしいならね、キャバクラにでも勤めなさい!もうスゴイわよ!もう他の仕事なんかアホらしくてやってられなくなるわよ!」
「『おめーが一番強欲じゃねーか!!』」
「喧嘩してる場合じゃないですよ。そんなことより定春をどうにかしないと。一体、定春の身には何が起こっているんですか?」
「狗神は力を解放しない限り、犬と変わらないおとなしい生き物です。でも、一度力を解き放てば、恐るべき獣神へと姿を変えてしまいます」
「しかも、あの子昔から力の制御が下手だったから、完全に我を失っているわ」
「でも儀式も行わずに覚醒なんて…」
「儀式って?」
「狗神の力を解放させる儀式です。供物と祈りをささげるのです」


供物と祈り?


「紅き果実と山羊の血を与えん。さすれば神子の力解き放たれり」
「紅き果実と山羊の血?」
「まァ、山羊の血っていうか乳よ、要は…私は牛乳とかやってたけど。市販の」
「果実は…苺とかやってましたわね。腐りかけたやっすい奴」


酷くねーかそれ。てか…。


「………いちご」
『…と…』
「……牛乳」


えーと…。


「いちご」
『と』
「牛乳」


……………いちご牛乳?



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