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酒は気もちいい状態の内に止めておけ




「アンタは何日たってもずっと平行線でダメ人間だけどな酔っぱらい!」
「なにをををを!!いだだだだだ頭痛ェェェェ!!」


なんかさっきから居間がうるさい。布団から起き上がりスパンと襖を開けた。


『朝っぱらからうるさいっつの!隣人の迷惑考えろバカヤロー!ん?』


あれ?なんか定春…デカくね?


「架珠それどころじゃねー風呂だ風呂!それかいちご牛乳」
「それこそそれどころじゃねーよ!」
「定春がおっきくなったネ!」


とりあえず新八と神楽はなんで食われかけてんの?

新八と神楽を定春の口から回収して、大きな器にいちご牛乳を用意して定春に飲ませてやる。


「定春はいちご牛乳が好物ヨ。飲んだらおとなしくなるネ。身体は大きくなったけど性格は変わってないネ。さっきもじゃれてただけみたいアル」
『神楽、あれどー見ても食われかけてたからね』


めちゃくちゃになった部屋の中、残骸に腰掛けて定春を眺める。どーすんのさこの部屋。


「じゃれてただけみたいって…あの大きさでじゃれられたら、こっちとしては命とりなんだよね。なんなんでしょ、一体なんでこんな事に…」
「成長期じゃねーの。元々あのデカさだ、これ位になるだろ」
「でも一夜にしてこんな…」
『いちご牛乳ばっか飲ませるからじゃない?』
「お前らが無闇にカルシウムなんかとらせるからこんなデカくなんだよ。カルシウムなめんなよ、カルシウムさえとっときゃ全てうまくいくんだよ」
「あんた全然うまくいってないじゃないですか」


ホントにね。


「それより、どうしましょ。これじゃ象飼ってるようなもんですよ。エサ代が…」
『ただでさえジリ貧だったのに。どーしてくれんだそこの元凶1と2』
「エサ代なんて元々バカになってなかったアルヨ。万が億になろうが億が兆になろうが一緒ネ」
「一緒じゃねーよ!一兆は一億がなんぼあると思ってんだテメーは!!アレ?何個だっけ新八くん」


アホか。


「とにかく、このままじゃ飼ってくことすら難しいですよ。いや、捨てるのだって難しい」
「捨てるなんて選択肢ないネ!お前ふざけるなヨ!!」
「誰も捨てようなんて言ってないだろ!!」
『あーあーあー騒ぐなっつの。つか、定春もうこのまま?どーすんのさホント…』
「大丈夫だよ〜架珠ちゃーん、新八くーん、神楽ちゃん。こんな事もあろうかと」


ん?


「たりららったら〜。犬語翻訳機「わんじゃこりゃああ」」


未来の猫型ロボの声真似して銀ちゃんが取り出したのは、なんかたまごっちみたいな機械。

なにそれ?


「これさえあれば犬が何をしゃべっているかその鳴き声から割り出すことができるんだ〜〔ダミ声〕」
「銀さん!いつの間にそんな便利なアイテムを!!」
『平賀のオッさんからでももらったの?』
「昨日飲み屋で隣の親父に枝豆と交換してもらったんだ〜〔ダミ声〕」
「『胡散くささ100%じゃねーか!!』」


ホントに使えんのかそれ!?


「とにかく、こいつで定春がなんで巨大化したか探り出せば解決策が見つかるかもしれねー。なァ定春?お前はどーしてそんなにデカくなったんだ」


向かい合う銀ちゃんと定春だけど、定春は何も答えない。


「オイなんか言え」


ピシッと銀ちゃんが定春の頬を叩く。


「わぎゃァ!!」

「ぶべら!!」



ーーーーピピッ.

定春に右ストレート喰らって吹っ飛んだ銀ちゃん。手元のわんじゃこりゃああの画面を確認すると、「いてーな。動物愛護団体に訴えるぞワン」とあった。


「あってるっちゃああってる」


確かに。


「この野郎ォォ!!ご主人様に何しやがんだァ!!」
「銀ちゃん定春の世話したことないから」
「銀さん、でもコレけっこう使えるかもしれませんよ」
『枝豆で買った割には役立ちそうだね』
「フフン、次は私がやるネ。私は定春いつも可愛がってるアルから、きっと大丈夫ネ」


なんか憎たらしいが確かに、定春には神楽が一番構ってる。


「定春、とりあえず私への日頃の感謝を言ってみるアル」
「ワン」


ーーーーピピッ.

手元のわんじゃこりゃああの画面には「お前、人気投票7位だったな」とあった。


「てめェェェ!何でそんな事しってんだァ!」
「おちついて神楽ちゃん!僕なんか8位だぞ!!」


私とか一切関係ねェ。


「しょーがないな。なんだかんだで、定春の世話を一番してたのは僕だもんね。ねっ、定春、僕の言うことはきいてくれるよね?」
「ワン」


ーーーーピピピーピッ.

なんかえらい長かったな。

手元のわんじゃこりゃああの画面には「お前という男を常日頃観察し感じたことを述べる。誰がボケてもツッコむ姿勢は評価に値するがツッコミに夢中になっているせいで自分の特性を忘れる傾向がある…といってもお前の特性なんてアイドルオタク以外ないがな、哀れな奴だ」だった。


「黒ォォォ!!こんなに白い犬なのに腹の中黒っ!!っていうか長げーよ!あの一吠えにこんな長い意味あんの!?ってツッコんじまったァ!!コイツの思うがままだ!!」


こえーな定春。


『まったく、犬相手になにムキになってんだか。もう少し大人になれっつの。ねー定春』
「ワン」


ーーーーピピッ.

画面を見下ろすと「お前このサイトのヒロイン達に負けてるな」とあった。


『負けてるなって何がだァァ!!富か?恋か?顔か?犬のお前に言われたくないわァ!!』
「やめて架珠。定春はホントのこと言っただけネ!」
『てめーらまとめて捨てるぞゴラァ。チキショーなんだこのインチキ翻訳機!!』
「定春がこんな事考えてるわけねーだろ!!あのジジィ枝豆返せコノヤロォ!!」


バシンと床へと叩きつけた翻訳機を全員で蹴り潰す。くっそ枝豆ジジィ殺す。

ーーーーピピッ.

ん?

反応した画面に「く…苦しい」という表示。


「?苦しい?」
「故障かな」
『まーあれだけ蹴ればね』
「俺は二日酔いで苦しいよ」


ーーーーピッ.

次に表示されたの「助けて」。


「助けて?」
「こっちが助けてほしいわ。どうすんだ家、コレ」
『…つーか、なんか後ろうるさくね?』


なんかメキメキとかゴキゴキとか聞こえる。


「なんださっきからメキメキメキメキ。夏期講習で学力アップか?」
「定春静かにしなさい!メッ!!夏期講習で学力アップですかお前は!!」


ーーーードォン.

……なんか定春、屋根突き破る程巨大化しちゃった…。

しかも家の周りには野次馬来るし、テレビは来るし苦情は来るしで、もう勘弁しろよなオイ。


「…まいったなーオイ」


お登勢さんに呼ばれて店までおりると、ニュースに取り上げられていた定春と飼い主たる私らのこと。


「まさか全国ネットでチャック全開してたとはよー。最近なんか俺こんなんばっかだな」
「そこかよ」


みんなロクな出演してなかったな。私とか二日酔いで貞子になってるとこ映ってたし。普通カットしろやぶっ潰すぞテレビ局。


「……………どうすんだい。こんな大事になっちまって」
「定チャン饅頭モ全然売レネーシ。モウ出テケヨ。迷惑ナンダヨ、アンタラニイラレルト」
「オイ、誰の許可得て商品化してんだ」
『勝手なことしてんじゃねーぞ』


饅頭の箱を奪いキャサリンの顔面に叩きつける。


「…まーな、アンタらにも色々迷惑かけちまって、ここらが潮時かもな。マナーも守れねー奴にペットを飼う資格はねーもんな」
「銀さん」
「デモ捨テルニシテモ、アンナ大キナ犬トナルト大変デスヨ」
「捨てる?バカ言うな。途中で放り出すくらいなら、最初から背負いこんじゃねーさ。どっか広いトコにでも引っ越すか」


…ま、それが一番かな。

じゃーどんな家にするかと相談していたところ、なんだか外が騒がしくなった。


next.

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