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「レディースアンドジェントルメーン!今宵も皆さんに最高のギャンブラー達が織りなす、最高のショウをご覧いただきましょう!今宵のショーはギャンブラー達が命を賭して行う、アゴヒゲ危機一髪うぅ!!」


…なんでこーなったんだろ。

用意されたスーツ来て注目を浴びるステージに立つ私ら。マダオは樽の中だけど。

ルールは普通のアゴヒゲと変わりないが、穴の一つは起爆装置に直結している。


「見事その穴だけ残し、全ての穴に剣を刺せばギャンブラー達の勝ち!果たしてギャンブラー達はアゴヒゲの命を救うことができるのでしょうか!?」


ワァァじゃねェよ。てめーらが爆発しろ。


「……とんだ茶番だぜ」
『さっさと帰ればよかった』
「やるしかあるまい。成功すれば俺達を解放してくれるらしいしな。勿論失敗すればアゴヒゲもろとも俺達の命も、海の藻屑と消えるだろうが」
「一体何考えてんだ、あの女?」


華陀は離れた先で高みの見物だ。腹立つぅぅぅ。


「アレも相当な博打好きだときいた。俺達のサマを見て楽しむつもりなのだろう」


腹立つぅぅぅ!!


「オイ、なんでよりによって俺がこの役回りなんだ?」
「アゴヒゲ危機一髪だからだ」
「アゴヒゲならアンタも生えてるだろ」
「お前らが剣を刺してみろ。一発でドカンだ」
「いやそれもそうだが。ん?」


次はこっちか?

銀ちゃんとさっさと剣を刺していく。


「オイぃぃぃぃ!!何予告もナシにぶっ刺し…ってオメーら五本も刺してんじゃねーかァァァ!!」
「こんなもん悩んだってしゃーねーんだから、パッパといけばいいんだよ」
『まだ五本しか刺してないからいーじゃん』
「ふざけんじゃねェェ!!五本刺したってことは少なくとも俺は五回デッドオアアライブをさまよったということだぜ!!」


おいマダオそっち。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ってお前もかァァァァァァ!!」
「いやホントマジすみません」
「不吉なこと言いながら刺すんじゃねーよ!!」


さてと、さっさと終わらせるか。


「おおお!!立て続けに剣を刺していく!さすが勝負師!お前達は恐れをしらないのかァ!?」
「こいつらがしらないのは人の痛みだァァ!!」


失礼な。

ーーーーカチッ.


「うおわァァァァ!!」


い゛っ!?

銀ちゃんの叫び声にマダオと二人揃ってビビるが、何も起きない。


「あり?」


あり?じゃねーよ!


「てめェェェェェ!ビックリさせんじゃねーよ。口から十二指腸が飛び出るかと思ったぞ!」
『ビビらせんなよバカヤロォォ!!』
「うるせェェ!今なんかカチッていったんだよ!戻せ!十二指腸を元の位置に!」
「おちつけてめーら。博打において冷静さを失うことは絶対の禁忌だ。例え周りが炎に包まれようと、思考だけは冷たく凍てつかせておけ」


ーーーープシュゥゥ.


「!!あたぱァァァ!!」
「「『ぎゃああああ!!』」」


何もねーじゃねーかァ!


「てめェェェェ何が冷静だァ?あたぱーなんて叫び声なかなか出てこねーぞ!!」
「だってプシューはないだろう!プシューが出るとは思わないだろ!口からあたぱーも出るだろ!」


もう知らねーこうなりゃヤケだ!


「おーっと、次々にギャンブラー達をトラップが襲う!さすが百戦錬磨のギャンブラー達も戦々恐々だァ!!」


なんか刺す度に煙とか水とか変な音とかするけど知るかァ!


「くそだらァァァもうだまされねーぞ!!」


ーーーーカチッ.


「何がカチッだ!しるかァァボケェ。爆発するならしてみろ!!」
《時限スイッチが作動しました。今から1分以内に起爆スイッチ以外の穴を全て塞がなければこの樽は爆発します》


………。


「え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!おめー何してくれてんのォォ!!俺の命あと1分になっちゃったじゃねーかァ!!」


どんまいマダオ。


「1分だろーが50年だろーがよォ、一生懸命生きた奴の人生に価値の違いなんてないと思う。オケラだってアメンボだって」
「こんな樽ん中で何を一生懸命やるの!?」


何かを一生懸命だよ。


「二択だ」
「『!』」
「このたくさんの穴から安全な穴を探そうなんて考えるな」


オッさん?


「今自分が向かいあっている穴が、地獄に続く穴か否か。それだけ考えて刺すんだ」


刺し始めたオッさんを見て、私らも剣を構えて残りに刺し始めた。


「おおおお、なんと勇ましい!時間制限にもおくすることなく次々と刺していくぅ!!ギャンブラー!!これぞギャンブラー!!」


どーだ恐れいったか。つっても手汗がハンパねーけど。


「いよいよだァァ!!いよいよ残す穴は二本!最後の選択だァ!!しかし時間もない。あと20…19…」


もう残り僅かか…。


「アンタに一つききたかったんだけどよ。アンタ、ホントにその右眼が見えた頃は、ツキって奴が見えたのかィ?」
「…………ツキが見えれば片眼などにはなっちゃいねーさ」


まァ、確かにな。


「ただ一つ言えることはよ、俺はいつだって、後悔しないような選択肢を選んできたってことだけだよ。いつだって自分がしたいようにやってきただけだよ。賭けでも人生でも…」


オッさんの過去なんて知らないけど、その時の選択に後悔がないことだけは、その表情を見てわかった。


「いってこい」


最後の剣を持つ銀ちゃんが歩き出す。穴は右か左、二つに一つ。


「失敗すりゃ俺もオダブツか。長谷川さん、そん時ゃむこうで一杯やろうや」
「安酒はやだぞ」


見守る中、目を閉じていた銀ちゃんは刮目。


「見えた!」


ーーーーダッ.


「右だァァァァァァ!!」


右!?

ーーーーズリッ.


「いっ?」


あ。

ーーーーズゴム.


「え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!左じゃねーかァァァァ!!」


靴脱げてバランス崩した銀ちゃんが刺したのは選んだ右じゃなく左。

マジかよじゃあ爆発…!?…と、思えば、辺りは静まり返ったまま。


「ウソ?あり?」


…成功?


「お見事ォォォ!ミラクル!まさにミラクルです!!」


拍手喝采と大歓声。銀ちゃんとマダオは呆然としてるし。喜ぶ余裕がないよ今。


『なんじゃこれ…』
「クク…そんなもんさ人生」


唖然とする私の隣でオッさんは笑った。


next.

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