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月は何でも知っている




「お月様ァァァァ!どうか拙者のいぼ痔を治してくだされェェェ!!」


厠に向かった同僚の話を信じて、いぼ痔を治そうと月の光をケツに浴びる屋敷の見回りをしていた男。アホか、本当にするとか。


「ん?あれ?月が近づいて、え?」


その月は銀ちゃんだ。

ーーーードカッ.


「ぎゃああああ!!」


いぼ痔の奴のケツに踵落としは辛いよ。


「…ワリーな、痔は医者に治してもらえや」


ニンジャーホワイト。十八番は忍法「隠れ身の術。


「おい、何を騒いで…あっ、貴様!!」


騒ぎを聞きつけた奴らに見つかる。


「くっ、くせ者!!」


ーーーーズボッ.


「ぬっ!あかりが!?」


飛んできた手裏剣により提灯の灯りが消えた。


「しまった!」
「何も見えんぞ!!」
「アラ、それは大変。眼鏡をかけなくちゃ」


背後にいたさっちゃんの納豆付き眼鏡が顔に張り付く。

うわ〜やだわァ〜。


「うわっ、くさっ!!何コレ!何コレ!」
「納豆!?くさっ!!とれねーぞ、ボンドかコレ?」


ニンジャーメガネ。十八番は忍法「眼鏡がないと明日も見えない」。


「うおォいやだァァ!!」
「ひょっとして一生このままなの!?絶対いや!!」


背後にいるのは新八。


「「…アレ。誰君?」」


ーーーードシャ.

木刀を振るって退治する。

ニンジャーホルスタイン。十八番は忍法「とりあえずホルスタインにしたけどやっぱ地味」。


「くせ者ォォ!出あえ出あえ!!」
「ったく、こんなキレイな月の夜に…」
「さっさとすませて月でも見ながら一杯やろうや!!」
「ほう、ならば月見カレーはどうだ?」
「!」


ーーーードパパン.

神楽とヅラがカレーを顔面に投げつける。

ニンジャーダブルカレー。レッド(激辛)とイエロー(中辛)。十八番は忍法「なんかメッチャカレー投げてくる」。


「あっつゥゥゥゥ!!」
「くっ…この…」


ーーーースッパァン.

立ち上がろうとした男の顔に今まで読んでいたジャンプを叩きつける。


『卍解!忍者王になるってばよ!!』


屋根の上から飛び下りて、鉄扇で一気になぎ倒す。

ニンジャーピンク。十八番は忍法「友情・努力・勝利」。


「おいィィ!俺まだ読んでねーのにジャンプ様になんつーことすんだァ!!」
『大丈夫だよ。まだ読める』
「しかも情景描写雑だと思えばなに?お前自分だけ楽してジャンプ読んでたわけ!?ずるくね!?マジずるくね!?」
『じゃあ譲るよほら』
「カレーべっとりじゃねーか!カレーくさっ。カレー臭だよ!これぞカレー臭だよ」


うまくねェよ。

合流したり四方に散らばったりを繰り返して、意外に人が多かったので隠れることにした。


「くそっ、どこへいった!?」
「くまなく捜せ!」


なんかうまい隠れ場所なかったから、銀ちゃんが用意したハリボテの裏に皆して隠れた。

つか…。


『せまっ。ちょ、誰だよ押したのせまいんだからふざけんな!』
「架珠!もっとつめてヨ。私肩出てるヨ、やられる!肩もっていかれる!!」
「俺にいたってはまる出しだぞ。やられる!全部もっていかれる!!」
「出ていけお前ら!これは一人用なんだよ。俺が俺のためにつくったんだぞ!!」
「ってかなんでレンガ作り!?ここはニューヨークじゃねーんだよ!!」
「文句があるなら出ていきなさい。私は銀サンと一緒ならドブ河でも住みます」
「うるせーよお前も邪魔だ。どーでもいいけどお前なんか臭いんだけど。あんま寄んないでくれる!」
「フン、もっとさげすみなさい。それが私の糧となる」
「ホントに臭い!なんか納豆臭い!指が!!」


ホントに臭い。あーもーマジせっま。皆して暴れるからさらにイライラする。


「アレ、カレーニンジャーは?」


は?そういやいない。

顔を上げると、隣の松の木に片足立ちのヅラを見つけた。


「ってヅラぁぁぁ!何やってんだてめー!!」
「ヅラじゃない松だ」
「いや無理!!無理だって!ほとんどまる出しじゃねーか!!」
『やっぱバカだお前は!』


いっそそのまま殺られろ。


「ん…銀ちゃん!アレ見て」


!あれは…。


「エリザベス!!」
「!!ヅラ待てェ!!」


縄で縛られたエリザベスが奥へと消えていくと、ヅラの奴勝手に走り出しやがった。


「あっ、賊だ!待て!!」
「オイ見ろ!!ここの壁おかしいぞ!ここだけニューヨークだ!」
「『げっ!!』」


一斉に私らはハリボテ捨てて走り出す。


「ぎゃああああ!!」
「『ヅラァァァァてめェェ何してくれてんだァァ!!』」


ふざけんなよてめー!!


「ホワイト!ピンク!みんな!一緒に来てくれるのか!?」
「てめーのせいでバレたんだよ!殺すぞホント!!」
『だ〜れが好き好んでお前と一緒に行くかこの疫病神!!』
「あわわ、カレーがこぼれちゃうヨ!死んじゃうヨ!!」
「もうキャラはいいから捨てろォォ!!」
「マズイわね。このままでは全滅だわ」
「さっちゃんさん、何かいい道具はないんですか!?」
「任せて。足止めにはコレ…まきびし…」


袋を取り出したさっちゃんが石に躓いたのが見えた。


「ギャアアアアアどこにまいてんですかァ!?」


あっぶねェェェェ!!

ばらばらと地面に撒き散らされたまきびしを私らは死に物狂いでジャンプして避けた。


「ぬっ、おのれ!これでは近づけぬ!!」


私らと奴らの間にはまきびし。


「おっ!!うまいことバリアみたいになりましたよ」
「狙い通りだわ。忍法まきびしサークルよ」
「ウソつけ!!ささってんぞ!」


よし反撃だ。

構えたまきびしを投げつけ始める。


「うらぁぁくらえェェ!!」
「死ねコラァァ」
『くたばらんかワレェェ!』
「違う!使い方間違ってる!まきびしはそういうカンジじゃない!」


エリザベスを追って建物の入口へ。


「確かここに入っていたはず」
「みんな、ちょっと待って。妙だわ。追手が誰もこない」


さっちゃんが言うように、あんなに騒がしかったのに私ら以外だーれもいない。


「!まさか罠?」
「その可能性大だわ」
「あー、何寝ボケたこといってんだてめーら。おけつに入らずんば虎児を得ずというだろ」
「虎穴だ。案ずることはない。俺達を誰だと思っている」
『アンタ達とはくぐってきた修羅場の数が違うんだよ。くだらない罠なんかにはまるかっつの』


全員が中に入った時だった。

ーーーーガシャァン.

入口に、鉄格子。


「おいィィィィィィ!!おもっくそ罠じゃないすか!閉じこめられちゃった!!」


……あー…。


「バカ、ちげーよ。オートロックなんだよ、しらねーの?お前」
『物騒な世の中だからね。今時はどこもオートロックっしょ?』
「何度も言わせるな。俺達がそんなバカな策にハマるわけがあるまい」


立ち止まる奴らを残してさっさと歩き出す。


「いやー、ウチもつけようかなオートロック」
『あんなのよりもっと洒落たヤツにしよーや』
「なんだ貴様ら、おくれてるな。ウチはもう厠もオートロック…」


機械音がして、掛け軸が畳まれるとその下から画面が現れた。

なんだ?


《ガハハハ。よく来てくれたな桂とゆかいな仲間達!我がからくり屋敷へ!》


話に聞いた遠山珍太郎という奉行がなんか高笑いしてる。


《エリザベス君を追ってわざわざここまでご苦労だったな。だが残念ながら君達は私のワ…》


ーーーードガゴ.

皆まで言わせず画面を私ら三人はぶっ壊した。


「今、明らかにワナだって言おうとしてましたよね」
「違う。「君達は私のワイフをどう思いますか」と言おうとしたんだ」
「英語の教科書!?」


ーーーーしゅるるる.


「!」


今度は後ろかよ。


《人の話は最後まできけェェ!!普通あそこで壊すかァ!?とりあえず話全部きいてから壊すんじゃねーの!?こっちはなァ、このために原稿用紙四枚分の…》


ーーーードガゴ.


「「『はっ。はっ。はっ』」」
「是が非でも認めないつもりだよ」
「なんて負けず嫌いな人達なの」


リズム良く私らは画面を殴り壊す。


「とにかく、これは絶対に罠だわ。先に進むにしても慎重に…人の話をきけェェェ!!」


神楽ったら勝手に扉開けちゃって。

ーーーーゴオオォ.


「!!うわっ、丸太が!!」


ーーーードゴン.

飛んできた丸太を、私らはそれぞれ武器でぶっ壊した。


「銀時…架珠…これしきのものは断じて罠とは言わんな」
『はっ。これが罠ならヘソで茶ァわかしちゃうね』
「俺達は罠にかかる程アホじゃねーぞ。これはアレだ…」


そう…。


「「『いたずらだァァ!!』」」


よっしゃ行くぞォォ!!


「大人は子供のいたずらに付き合ってやる義務がある。なァ銀時!架珠!」
「おおよ!わざとだから!コレわざとひっかかってやってるワケだから!」
『その通りィ!』
「頭を使って考えたいたずらが成功することによって味をしめた子供達は頭を使うことが好きになる!結果発想力及び応用力に長けた子供ができあがるわけだ。なァ銀時!架珠!」
「そうだ!俺達のように罠になんてかからない大人になるわけだ。立派な大人になるわけだ!」
『その通りィィィ!!』


槍とか爆発とか鉄球とか、そんなもんクソくらえだ。ぜんっぜん気にしてないから。

全部片付けると、後ろで三人が拍手。


「フン」
『軽い軽い』
「ちょろいも…」


ーーーーガゴン.


「「『いだだだだだ!!』」」


重ォォォォォォ!!

天井から降ってきた錘を血管浮かせながら支えて笑う。


「まったく…」
『軽すぎるよ』
「かわいいいたずらだぜ」


死ぬゥゥゥ。


「ホント、かわいい人達ね」


とにもかくにもなんやかんや。

いたずらの数々を突破した先の部屋でエリザベスを見つけて、ヅラが慌てて駆け寄った。


「エリザベス!!無事だったか!?」
「ダメ!近寄っちゃ…」
「!!」


エリザベスからいきなりクナイが発射されて慌てて伏せる。

ビビったぞさっきまでのどんな罠より…あ。罠って言っちゃった。


「…クク。残念だったな」


誰だ?


「エリザベスちゃんはここにはいないよ」


エリザベスの中身はなんか知らないオッさんだった。服装からして忍者で、さっちゃんともお庭番衆時代の元同僚だそうだ。


「にわか忍者が本物の忍者には勝てねーよ。いや、たとえ侍でもな」


柱の影から、オッさんの周りに四人集まった。


「俺達が、最強の五忍だ」


なんだ?ほんと。


next.

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