ジャンプは時々土曜日に出るから気を付けろ
「しまったァ。今日ジャンプの発売日じゃねーか」
買い物帰りに突然銀ちゃんが言った。そういやそうだったな。
「今週は土曜日発売なの忘れてた。引き返すか」
「もういいでしょ、スキヤキの材料は買ったんだから」
『そーそー。早く帰ろーよ…狭いし』
新八が増えたから原チャリに三人で乗ってるがあまりにも狭すぎる。私とか最早立ってるし。
「架珠さんは運転出来ないんですか?」
『出来ないこともないけどさ、免許持ってないから』
「免許が無くても運転は出来る」
『そーそー』
「そーそーじゃないでしょ!捕まりますよアンタ!」
その時だった。ばっ。と飛び出してきたのはチャイナ服来たお団子頭の女の子。
「あぶね!!」
――――キイィィィィィィ.
「!」
――――ドン!!
「……………」
『……………』
「……………」
え゛。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!ひいちゃったよちょっとォォォ!!どーすんスか、コレ!!アンタ、よそ見してるから…!!」
『え、ちょ、コレマジ!?どーすんの!?』
「騒ぐんじゃねーよ。とりあえずおちついてタイムマシンを探せ」
「『アンタがおちつけェェェ!!』」
自動販売機の中にタイムマシンがあるわけないだろ!!
「だ…大丈夫だよオメーよぉ。お目覚めテレビの星座占いじゃ、週末の俺の運勢は最高だった。きっと奇跡的に無傷に違いねェ。なァ、オイお嬢…!!」
倒れていた少女に手をかけ動かしてみると、ドロッと赤い液体が流れていた。目の前が真っ暗になるってこれだね。
「お目覚めテレビぃぃぃぃぃぃぃ!!てめっ、もう二度と見ねーからなチクショー!!」
『や、でもニュースキャスターの人カッコいいし』
「確かにお天気お姉さんかわいいんだよな。オイ、どーだよ様子は」
「ピクリともしないよ」
新八に少女をくくりつけて猛スピードで病院へと向かう私ら。
「早く医者に連れて行かなきゃ」
…うん、そうだけどさ…何か車が近づいてきてないか?ちらりと見ると助手席の窓が開いており中にはパンチパーマの男が。
――――カチャ
「!!」
銃だ。
「ちょっ…何ィィ!?」
――――パンパン
新八が撃たれた!と、思い見てみればひかれた少女が傘を開いて防いでいた。
――――ガシャコン
傘を閉じ何をするのかと思えば、先端から何発もの銃弾が。それにより車は木へと激突し、私らは呆然とその光景を見ていた。
……何者このガキ!?
「お前ら馬鹿デスか?私…スクーターはねられたら位じゃ死なないヨ」
あの後病院へとは行かず、路地裏へと逃げ込んだ私ら。
「コレ、奴らに撃たれた傷アル。もうふさがったネ」
「お前、ご飯にボンドでもかけて食べてんの?」
なんで撃たれてはねられてピンピンしてんの?
「まァいいや。大丈夫そうだから俺ら行くわ」
『じゃーねチャイナ娘。お大事に〜』
――――ブォン
「アレ?架珠、お前急に重くなっ!?」
進まないから見てみればチャイナ娘が原チャリを片手で止めていた。マジで何者!?
「ヤクザに追われる少女見捨てる大人見たことないネ」
「ああ、俺心は少年だから」
『それに、この国では原チャリ片手で止める奴を少女とは呼ばない』
「そうだ。マウンテンゴリラと呼ぶ」
私らを何時までたっても解放しないチャイナ娘と言い合っているとパンチパーマの連中と目が合った。
「おっ、いたぞォォこっちだァァ!!」
わっわっわっ!!見つかったし!!
「架珠!ゴミ箱蹴れ!」
『はいよ!』
銀ちゃんに言われてパンチパーマ共に向かってゴミ箱を蹴れば、巻き込まれて足止め成功。ただし全員とはいかず、奴らをまくため私らはゴミの中に埋もれた。
「私もう嫌だヨ。江戸とても恐い所。故郷帰りたい」
隣のチャイナ娘を改めて見てみると、肌が透けるように白い。それにあの馬鹿力といい傘といい…もしかして夜兎?
「バカだなオメー。この国じゃよォ、パンチパーマの奴と赤い服着た女の言うことは信じちゃダメよ」
なんだそれ初耳だぞ。
「まァてめーで入りこんだ世界だ。てめーでおとし前つけるこったな」
『それもそーだね。頑張ってね〜」
「え、ちょっ」
後ろからの新八の止める声を背に私らはさっさと歩いて行った。
*
「おっ、あったあった。ったくジャンプぐらいちゃんとおいとけよな」
『てかジャンプ如きに五軒もコンビニまわるかフツー』
「んだよお前も読むくせに」
まあ読むよ面白いし。だからと言ってコンビニをハシゴする程はない。
『それにしてもチャイナ娘どーしたかな』
「さァな。新八がいるから大丈夫…あ」
『ん?……あ』
「『スキヤキの材料…』」
私らって欲の為なら阿吽の呼吸だよね。
すぐさま原チャリへと跨り新八を、というよりスキヤキを迎えに行ったのだが…。
『…なぜ線路』
「や、こっちだろーなって。それより架珠、運転代われ」
『えー…』
渋々原チャリの運転を代わる。線路の先を見ると何故かポリバケツに入った二人の姿が。
――――プアァァ!!
『ゲッ、電車?』
慌てて横へとズレる。てかこのままじゃアイツら…!!
「ったく、手間かけさせんじゃねーよ!!」
「銀さん!!架珠さん!!」
「歯ァくいしばれっ!!」
言うと銀ちゃんは木刀を構え始めた。あー…何するか大体わかったわ。それは新八ものようだ。
「え!?ちょっ…待ってェェェ!!」
――――ドカン!!
「ぎぃやぁあああああああああ!!」
思った通り、銀ちゃんは木刀でポリバケツを空へとぶっ飛ばした。新八の悲鳴が遠ざかる。その後電車が直行というスレスレで間に合った。
――――ぞりぞりぞり.
「助けにくるならハナから付いてくればいいのに。わけのわからない奴ネ…シャイボーイか?」
ヤクザの親分らしき奴が気絶している隙になぜかチャイナ娘はパンチパーマを剃っている。
「いや、ジャンプ買いにいくついでに気になったからよ」
『あとスキヤキの材料が気になったからね』
「『死ななくてよかったね〜』」
「僕らの命は合計千七百二十円にも及ばないんですか」
睨む新八はスルーで。結果助けたんだからいいじゃん。その時電車がホームに停車した。
「おっ、電車きたぜ。早く行け。そして二度と戻ってくるな災厄娘」
「うん。そうしたいのはやまやまアルが、よくよく考えたら故郷に帰るためのお金もってないネ。だからもう少し地球残って金ためたいアル」
…………まさか…。
「ということでお前の所でバイトさせてくれアル」
――――バリッ
銀ちゃんは聞いた瞬間ジャンプ引き裂いた。その気持ちはわかるよ。
「じょっ…冗談じゃねーよ!!なんでお前みたいなバイオレンスな小娘を…」
――――ドゴォッ!!
「何か言ったアルか?」
「「『言ってません』」」
チャイナ娘のパンチにより壁には無数の亀裂が。パラパラと落ちるコンクリの破片を横目に、私らは大人しく頷くしかなかった。
next.
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