せいぜい一緒に過ごす期間なんて二十年くらいなんだから娘さんはお父さんを大切にしてあげて
「だらァァァ!!」
『うるァァァ!!』
「つァァァァァ!!」
えいりあん相手に三人がかりで片付けていくが、すごくキモい。キモいよ。鳥肌半端ないよ…早く神楽見つけて帰りたい。
ーーーーゴゴゴゴゴ.
ん?
重苦しい音に空を見上げると、軍艦の大群が。幕府か。
「おーおー。今頃うるせーのがブンブンたかってきたよ」
「もうほとんどカタついたんじゃねーのか…にしても、てめーら地球人にしちゃあやるな」
『アンタに言われても嬉しくないっつの化け物め。よく片腕でここまで暴れられたよね』
「てめーらも片腕じゃねーか」
銀ちゃんも私も、えいりあん相手にしてる最中に負傷してしまっていた。
よく死ななかったね、私。自分で自分を褒めたい。
「悪いこたァ言わねー。帰れ、死ぬぞ」
「帰りてーけどどっから帰りゃいいんだ?非常口も見あたらねーよ」
『これはここにいるしかないってことかァ』
「…てめーらのハラが読めねー。神楽を突き放しておきながら、なんでここにいる。なんでここまでやる?」
「俺がききてーくらいだよ。なんでこんな所に来ちまったかな俺ァ」
ほんとにね。
「お前…」
「安心しなァ。あんなうるせーガキ、連れ戻そうなんてハラはねー」
『あ、勿論死ぬつもりもないから……でも』
「『あいつを死なせるつもりもねーよ』」
当たり前の事だけどね。
「クク…面白ェ、面白ェよお前ら。神楽が気に入るのもわかった気がする」
そうっすか。喜ばしいのか複雑だな。
「だが、腕一本でなにができるよ?」
「アンタも一本だろ」
『いやいや』
合わせりゃ、三本だよ。
三人同時に踏み出し、立ち向かったえいりあんに攻撃をいれる。
「胸クソワリーが神楽助けるまでは協力してやるよ!ありがたく思えお父さん!!」
「そーかィ。そいつァ、ありがとよォ!!」
傘を構えたハゲがえいりあんに向かって撃ち抜いた。大きな音を立てて爆風が起き、その中心を見ると抉れたそこに、変な球体が。
うわキモ。なにあれ。
「核だ」
核?
「寄生型えいりあんの中枢…こんなデケーのは初めて見るが、ターミナルのエネルギーを過度に吸収して肥大化し、船底を破っちまったようだ。アレを潰せばこいつらを止めら…」
「!」
何かに気づいた銀ちゃんの視線を追いかける。気色の悪い核をよく見て…見つけた。
「かっ…神楽ァァァァァァァ!!」
どこ行ったかと思えばそんなところに!?
ハゲも気づいたようで、一斉に核へと飛び降りる。
「のわっ」
着地と同時に銀ちゃんが転ける。助けようとした神楽はなんかずぶずぶとえいりあんの中に消えて行っちゃった。
「オイ呑まれちまったぜ!どういうこった!?」
「…ヤ…ヤバイ」
なにが?
「野郎ォ…神楽をとりこみやがった。このままじゃこいつをしとめることはできねー。こいつを殺れば、神楽も死ぬ」
…は?
《えっ、えー。ターミナル周辺にとどまっている民間人に告ぐ。ただちにターミナルから離れなさい》
え?なに?ちょっと今こっち取り込み中なんだけど。
軍艦からの声に顔を上げる。
《今からえいりあんに一斉放射をしかける。ただちにターミナルから離れなさい》
「なっ…なんだとォ!?」
《とっつァん待て!!ターミナルに残っていた民間人は西口から避難させたが、ガキが一人えいりあんにとりこまれてる!》
あ、ゴリラ。
《近藤。ガキ一人の命と江戸を同じ秤にかけるつもりか?人を救うってことはな、人を殺める以上の度胸が必要なんでィ。大義を見失えば救える者も救えなくなるぞ。甘ったれてんじゃないよ》
《しかしとっつァん》
ゴリラが説得してる最中、えいりあんがまた動き始めた。
もう核だからね。階層で言うなら最下層だからね。とりあえず襲われてはないけど揺れる。酔う。
《ホーラ見ろ、オジさんのいうこときかないから。なっ?オジさんの言うことは大体正しいんだよ。オジさんの80%は正しさでできています》
残り20%は?
《そーゆうことだからさァ、お前らもウチに帰りなさい!邪魔だから!》
なんだと残り20%正しさ足りてないクセに。
「いけ」
「『!』」
ハゲ?
「もうじきここは火の海だ。てめーらを巻き込むわけにはいかねェ」
「てめー、まさか一人で…」
立ち上がったハゲは肯定も否定もしない。
「…つくづく情けねー男だよ、俺は。最強だなんだと言われたところでよォ、なーんにも護れやしねー。家族一つ…娘一人護れやしねーんだなァ、俺って奴ァよォ………これも、逃げ続けてきた代償か。すまねェ神楽…せめて最期はお前と一緒に死なせてくれ」
…なに言ってんだか。傘を構えるハゲに、呆れてしまう。
『やれやれ…これだから世の中の父親は娘に煙たがられるんだっつの』
訝しげな目を向けるハゲ。
『アンタ、自分のガキ一人信じることができないの?神楽がこんなモンで死ぬタマだと思ってんのォ?』
ニヤリと笑う私の隣で銀ちゃんは木刀を握りしめる。
「五分だ。五分だけ時間を稼いでくれ。俺を信じろとは言わねェ。だが、神楽のことは信じてやってくれよ」
「!!お前何を…」
銀ちゃんが木刀を核へと突き刺すと、核は銀ちゃんを取り込み始めた。
「!!なっ…」
やがて、銀ちゃんの姿は消えた。
つーか私まで巻き込まれるかと焦ったぞ!
「な…なんて真似しやがんだ」
ーーーードシャァ.
『!!』
なにごと?
「おっ…お前…」
…何やってんのアンタら。
「貴様らァァ。このおっさんが目に入らねーかァァ!!」
「今撃ったらもれなくこの央国星皇子ハタ様も爆死するぞォ!もれなく国際問題だぞォ!!」
なんか突然やって来たのは新八とあのバカ皇子噛んだ定春とお付きのじいやだった。
「五分だァ。たった五分でいいから待てって言ってんだよォコルァ!」
「五分なんてスグじゃん!!矢の如しじゃん!カップラーメンでも作って待ってろって言ってんだよォ!!コルァ、殺すぞ!」
「てっ…てめーら」
「チャイナ娘には世話になったんでな」
じいやめっちゃ震えてんね。
「撃たないよね?コレ撃たないよね?大丈夫だよね」
それはお前の価値にかかってるぞバカ。
「…ったく、来るなら来るって最初から言ってくださいよ」
『たまたま定春の散歩コースだっただけだっつの』
目に涙を浮かべながら新八が笑った。
「どうせ来ると思いましたけどね、天邪鬼が」
誰が天邪鬼だ。
「…アレ。なんか…撃とうとしてない?」
『は?嘘でしょ一応皇子いるんだよ』
じいやの声に見ると、なんか大砲に光集まりだしてた。
………え?
「ウソ…ウソだろオイ。皇子だよ。仮にも皇子だよ」
『なんで!?皇子(仮)いるのになんで!?』
「(仮)とかつけなくていいから。正真正銘皇子だから」
「ヤバイってコレ!早く逃げ…」
「それ私の酢昆布ネェェェ!!」「「「『ぐおぶ!』」」
銀ちゃんにアッパー炸裂させながら飛び出して来た神楽に私らまで吹き飛ばされた。
next.
▲ back ▼