子作りは計画的に
でろでろ坊主を倒した奴は、なんと神楽の父親だった。
「いいからこいってんだよ。アレだ、マロンパフェ食わしてやっから、なっ?」
…フード脱いだらバーコードハゲの親父とか、マジ勘弁。神楽も同じなようで腕掴まれながらも拒否してるし。
「ちょ、離してヨ。離れて歩いてヨ」
「なんだ、お父さんと歩くのが恥ずかしいのか!?」
そりゃその頭じゃね。
「どこだ!!どの辺が恥ずかしい?具体的に言えお父さん直すから!」
「もうとり返しのつかないところだヨ」
「神楽ちゃん、人間にはとり返しのつかない事なんてないぞ!どんな過ちも必ずつぐなえる!」
「無理だヨ〜。一度死んだ毛根は帰ってこないヨ〜」
ずりずり父親に引きずられる神楽を、とりあえず追いかけて外に出る。だってマロンパフェ食わしてくれるらしいし。
「すいません、僕もマロンパフェいいっすかね〜。いや、ちょっと待て、やっぱフルーツパフェにしようかな?どうしよっ」
『私マロンパフェにケーキ追加でお願いしま〜す』
いつの間にか待機してたらしい真選組の奴らは唖然と見送っていた。
「星海坊主ぅぅ!?星海坊主って…あの…えっ!?神楽ちゃんのお父さんが!?」
デパートのレストランに移動して神楽とその父親と対面。話を聞いて新八は驚愕してるけどイマイチピンとこない。
「星海坊主?なにそれ?妖怪?坊主じゃねーぞ、うすらってるぞ頭」
「オイうすらってるってなんだ。人の頭さすらってるみたいな言い方するな」
うすらってるから仕方ない。
「星海坊主といえば、銀河に名を轟かす最強のえいりあんばすたーっスよ。化け物を狩るため銀河中を駆けめぐる、さすらいの掃除屋」
『あー、なんかきいたことあるわ』
「ハイハイ、うすらいの掃除屋ね」
「オイ、うすらいの掃除屋ってなんだ。ただのダメなオッさんじゃねーか」
見た目的にはそんな感じだけど。
「カチンときた。お父さんカチンときたよ。ガチンとやっちゃっていい?」
「おちつくネウスラー」
「ウスラーって…アレ?でもハスラーみたいでカッコいいかも」
意味的には程遠いけどな。
「ウスラー紹介するネ。こっちのダメな眼鏡が新八アル」
「ダメって何?」
「こっちのダメなモジャモジャが銀ちゃんアル」
「ダメって何?」
「こっちのダメなチビが架珠アル」
『いやだからダメって何?』
「私が地球で面倒見てやってる連中ネ。挨拶するヨロシ」
面倒見てやってんのはコッチだろうが。調子のんなよクソガキ。
「フン。なんか、よからぬことでも考えてたんじゃねーの。夜兎の力を悪用しようって輩が巷にゃ溢れてるからな」
は?
「なんだァ?悪用ってどういうことだコラ。てめーの頭で大根でもすりおろすことを指すのか?」
『大体長い間娘ほったらかしてた親父がとやかく言えた義理かっつの』
「なんだァ、こちとら必死に捜し回ってたっつーんだよ。ちょっと目ェ離したら消えてたんだよ。難しーんだよ、この年頃の娘は。ガラス細工のように繊細なんだよ」
「何言ってやがんだガラス細工のような危なげな頭しやがって」
「てめェェ今のうちだけだぞ強気でいられるのは!!三十過ぎたら急にくるんだよ!!いつの間にか毛根の女神が実家に帰ってたんだよ!」
「いだだだだ!」
「ちょっ、二人とも止めてください!」
『ハゲネタに急にキレんなよオッさん!』
「ストレートにハゲって言うな!まだハゲてねーよ!!」
もうハゲと同類だろその頭は!
「とにかく、てめーのような奴にウチの娘は任せてられねェ。神楽ちゃんは俺がつれて帰るからな!!」
「なーーーーに勝手に決めてんだァ!!」
「ぐはっ!!」
神楽に蹴り飛ばされ親父は床に崩れ落ちる。
「神楽ちゃん何すんの!!ドメスティックバイオレンス!?」
巻き添え食った銀ちゃんも飛ばされて新八と共に駆け寄る。
「今まで家庭ほったらかして好き勝手やってたパピーに今さら干渉されたくないネ。パピーも勝手、私も勝手。私勝手に地球来た。帰るのも勝手にするネ」
「神楽ちゃん、家族ってのは鳥の巣のようなもんだ。鳥はいつまでも飛び続けられるわけじゃねェ。帰る巣がなくなればいずれ地に落っちまうもんさ」
「パピーは渡り鳥、巣なんて必要ないアル。私も、もう巣なんて止まり木があれば充分ネ」
「それじゃ、なんでこの止まり木にこだわる?ここでしか得られねーモンでもあるってのか」
「またあそこに帰ったところで何が得られるネ。私は好きな木に止まって、好きに飛ぶネ」
「……ガキが、ナマ言ってんじゃねーぞ」
「ハゲが、いつまでもガキだと思ってんじゃないネ」
……………ん?
「アレ……?何このカンジ」
『すっごい一触即発な空気…』
「オイちょっ…」
「「ほぁちゃああああ!!」」
ーーーーガシャァァァン.
「『!!』」
「神楽ちゃん!!」
止める間も無く窓突き破って飛び出した神楽と親父。慌てて見下ろすと、屋根に着地してもう取っ組み合いだよ。何このバイオレンスな親子喧嘩。駅の方へと町破壊しながら向かう神楽達に、勿論ほっとかず追いかけると、親父に吹き飛ばされた神楽が親子連れに突っ込むところだった。
ーーーーガシッ.
神楽と親父がぶつかる前に、間に入り神楽を銀ちゃん、吹っ飛んできた神楽の傘を私がキャッチする。
「銀ちゃん!!架珠!!」
「お母さーん!」
抱き合う親子には特に怪我も無く無事で一安心。
「…ったく、何やってんだてめーら」
「銀ちゃん、私…」
地面に神楽を落として、離れた先に立つ親父へと顔を向ける。
「なんのマネだ?親子喧嘩にクビつっこむなんざヤボだぞ」
んなの言われるまでも無くわかってるけど。
「…また派手に暴れやがったな。とんだ親子だ。蛙の子はやっぱり蛙だな」
周りを見れば、建物の屋根は見事に破壊されてしまっている。一定の距離を開けて様子見の一般人達は、怯えたように警戒している。
「……帰れよ」
「え」
不思議そうに声を漏らした神楽へと銀ちゃんはいつもの顔で振り向く。
「お前にゃ、やっぱ地球は狭いんじゃねーの。いい機会だ、親父と一緒にいけよ。これでさよならとしよーや」
神楽の目が大きく見開かれた。
「え……なんで、なんでそんな事言うネ」
問い質す神楽に振り向かず、銀ちゃんはさっさと歩き出す。
「ちょっと待ってヨ!なんで……架珠!あんなの嘘だよネ!?架珠はそんな事言わないヨネ?」
着物の裾を掴む神楽を見下ろす。
『悪いけど、私も銀ちゃんと同意見だわ。せっかく父親に迎えに来てもらってんだから、アンタは父親と一緒に帰りな。じゃあね神楽』
傘を押し付けて、困惑する神楽の手から着物を離すと背を向け歩き出す。
「なんで、なんで」
弱々しい神楽の声が聞こえた。
next.
▲ back ▼