×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


ウィスキーボンボンのボンボンって何?





ーーーージリリリリ.


『ぎゃあああマニキュアズレたァァ!!』
「それくらいで叫ばないで下さいよ。何事かと思うじゃないですか」
『勿体無いでしょズレた分が』
「貧乏性丸出しですね」


突然鳴り出した電話に驚いて思いっきり筆が皮膚にはみ出した。最悪、誰だよ非常識な相手は。電話には神楽が出たようで、はみ出した部分を落として作業を続けつつ内容を聞く。マジでか、と言って何故かすぐに外に行ってしまった。なんだ?


「アラ?今、誰か出てかなかった?」
『ああ、神楽。なんか電話とった後、あわてて出てった』


トイレから戻ってきた銀ちゃんに答える。


「んだ、そりゃ?」
「実家からじゃないスか?帰ってこいって電話きたのかも」
「そいつァいいな、うるせーのがいなくなって。せいせいするァ」
「それよりコレ、銀サンも気をつけてくださいよ」
「拙者拙者サギ?」


テレビには「検証、これが拙者拙者サギだ!」特集が流れていた。


「電話で名前を名乗らずに拙者拙者を連呼して近しい人を装い、今ピンチだから金が入用なんだと大金を振り込ませる新手のサギです」
『そんなサギ流行ってんの?』
「アッハッハッ。俺ァ誰がピンチになろーが振り込まねーぞ。覚えとけ架珠、新八。んなもん、ひっかかるのはどっかのバカなチャイナ娘だけ…」
「「『ん』」」


どっかのバカなチャイナ娘、電話の後出て行ったよな………。

ーーーーバタバタバタ.


「?」


一斉に走り出した私らを、不思議そうに定春が見送った。


「でてきなさーい!君は完全に包囲されている!」


銀行へと大急ぎで向かうと、そこには警察や野次馬で既にごった返していた。


「…遅かったか」
「え?まさか神楽ちゃん?コレ神楽ちゃんが?」
『当たり前でしょ。拙者拙者サギにだまされて金を振り込もうとしたはいいけど、当然金なんかある訳ない……そしてこんな凶行に』
「そんな…どうしよう、僕らどうすれば」


ーーーーザッ.


『銀ちゃん?』
「銀さん?」
「オイ、何やってんだ君ィィ!!」


銀ちゃんは扉の前へと出た。


「アイツたァやり合っても勝てる気しねーが、俺が止めずに誰が止める。奴の家族がここにいても、そうするはずさ」
「ぎっ…銀さん」


確かにまあ、ほっとけないよね。


「僕もいきます!」
『しゃーないか!』
「ああ!」
「あぶないって!」
「神楽ちゃん!!」


止める周りに構わず踏み出せば、扉が開いた。悲鳴を浴びながらカウンターに立つ坊主が、なんか口からグロテスクなもの吐き出して神楽捕まえてた。


「「『間違えました』」」


一歩下がって、扉が閉まる。


「ギャアアアアア!」
「化け物いたァ!」
「化け物ォ」


背後で同じものを見た警察も野次馬も叫び声を上げて逃げ出す。私らも逃げたい。


「…いや〜、良かったな。神楽ちゃん犯人じゃなかったみたいだよ」
「…そうですね。でも…なんか、襲われてませんでした?」
『…アレでしょ…父親でしょ。電話っつーのは父親からで、ここで待ち合わせしてたんだよ』
「ああ、そーか。親子の抱擁かアレ」
「親子水入らずを邪魔しちゃいけ…!」


ぐっ、と何かに物凄い力で足を掴まれた。なに!?


「銀ちゃ〜んひどいヨー。なんで助けてくれないネ」
「「『ぎゃああああ!!』」」


見下ろすと私と銀ちゃんと新八の足を両腕で逃がさんばかりに掴む神楽がいたのだが、なんか身体中に意味わからん内蔵的なの巻きつけてる。気色悪ッ!


「何してんのォォお前!なんかいっぱいついてるぞ、親父さんの内蔵的なものが!」
「私、銀ちゃんのためにいっぱい振り米したヨ。神父の件はどうなった?カタついたか?」
「神父の件って何!?お前どんな騙され方したんだオイ!!」
『ちょっ、アレなんなのさ!!アンタの父親じゃないわけ!?』
「しらないヨ、フラッとやってきて勝手にでろでろし始めたネ!」
「まだでろでろやってるよ!」


ーーーーグン.


「「『うおわァァァァ!!』」」


ーーーーメキメキメキ.

んなァ!?引き摺り込まれたかと思うと、その先に待つのはでろでろが変形した化け物の口。歯が鋭いんですけどォ!


「「『だァァァァァ離せ離せ!!』」」
「神楽ちゃん離しなさい!!メッ!!」
「ペッ。お前ら全員道連れじゃー!!」


ふざけんなテメェ唾吐いてんじゃねーぞこのクソガキィィ!誰か助けてえええ!!


「おっ、いたいた」


は?呑気な声に顔を上げると、人がいた。え、誰?

ーーーーばっ.
ーーーードォン.

コートを翻したそいつは手に持っていた傘を構えると、ミサイル砲でも放ったかの勢いで坊主に投げた。見事に壁まで破壊されちゃってんですけど…。


「…オイ、あの傘…」


壁に突き刺さる傘は、神楽と同じものだ。


「さがしたぞ、神楽」


え、なに?神楽の知り合い?


「……パピー?」


……は?


「「『ぱ』」」


ぱっ。


「「『ぱぴィィィィィ!?』」」



next.

back