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結局その日はラーメンも食わずに帰ってしまったから、気を取り直して数日後また店にやって来た。


「いらっしゃいまっせ〜」
『お前まだ働いてたわけ?』


愛想笑いも何もない顔で出迎えられた。いや笑顔で出迎えられても朝飯リバースするだけだけど。つかそもそもヅラの顔見た時点でリバースしそうだけど。


『…あれ。幾松さんは?』
「幾松殿なら出前に行ったぞ」


は?出前って…。


『店の前にバイク、止まったままだったけど?』


ほんの数秒。その間に思い浮かんだ可能性は多分ヅラと一緒。


「架珠!」
『乗れヅラ!』


出前用のバイクに跨りヅラを乗せて走行する。と、やがて前方の方に駕籠を運ぶ姿が。それと真選組の検問もあって、ぶっちゃけ関わりたくないけどそうも言ってられなかった。


「間違いねェ!あの駕籠の中に桂がいる!!追…」


弟の運ぶ駕籠を追いかけて、叫んでいた沖田クンの隣を通り過ぎる。


「桂ァァァァァ!?なんでェェ!!」
「桂ァァ!?」
「まさかアイツ桂って…あの桂小太郎!?」


部下の驚く声に弟共も気づいたようだ。つーか沖田クンの奴バズーカぶっ放してきたんだけど!!


「本物の攘夷志士!狂乱の貴公子桂小太郎かァァ!?ヤバイ、駕籠なんてほっといて逃げろ!」


いやいや、そう簡単には逃げられないでしょ。


「お客様〜デザートの方」


後ろでチャーハンを構えたヅラを確認し、スピードを上げる。


「お持ちしましたァァ!!」


ガバン!といい音を出してヅラはチャーハンを弟共の顔面に叩きつけた。


「二つだけ言っておく。一つ、二度と攘夷志士を語らぬこと。二つ、二度と北斗心軒ののれんをくぐらぬこと」


ブレーキをかけたバイクからヅラはおり立ち、気絶した弟共に言う。


「この禁犯した時はこの桂小太郎が、必ず天誅を下す」


おー。珍しいヅラのマジモード。


「カーツラァァァ!!」


煙の向こうからヅラを呼ぶ声が。もちろん親しい友人からの呼び声なんかじゃないけど。


「話している暇はなさそうだ。幾松殿…色々世話になったな。そして、すまなかった」
「しってたわよ」
「『!』」
「私もアンタと一緒。目の前で倒れてる人をほっとける程器用じゃないのよ。バカなの」


顔を上げた幾松さんはヅラに微笑う。


「だから、謝ったりしないでよ」
「…そうか。では、これだけは言っておこう」
「「ありがとう」」


幾松さんの縄を解いた私も、真選組と関わらないようさっさとその場を去った。

その翌日、今回は銀ちゃんと一緒に北斗心軒へ。その店前のゴミ箱を漁っている物体にはなんだか見覚えがあった気がするのだが……まさかねェ。


「いらっしゃ…アラ銀サン久しぶり。今日は銀サンも一緒なのね」
『うん。銀ちゃんにもお金が入ったからね』
「さーて何食うか…ん?」


メニューを見ていた銀ちゃんは不思議そうにした。


「アリ?そばなんてメニューにあったっけ?」


そばって…ヅラの好物じゃ…。幾松さんと目があうと、いたずらっ子のように笑った。


「食べてみる?」


ちなみに私はやっとの思いでその日ラーメンを食べることができた



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