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翌日万事屋に帰ってみてあらビックリ。


「ス…スゴイ。一日であの大穴が…」


なんと、見慣れた万事屋が真新しく完成していた。おー。


「見さらせ。中も完璧だ」
「これが宇宙一の大工の腕よ」


確かに中も完璧だ。言うだけあって、その腕は確かだったようだ。


「スゴイ、ホントにスゴ腕の大工だったんだ。銀さん、やりましたね。これで営業再開できますよ」
「………………」


銀ちゃん?


「なんか違ーな」
「「あ?」」


あ、目が点になった。


「万事屋ってよォ、こんなにさびしかったっけ?」
「オイ、妙ないちゃもんつけるなよ。元の形はいじってないぞ」
『家具がないからじゃないの?』
「いやいやいやいや、そーゆんじゃねーんだよ。なんか足んねーんだよ。えーと、あっ、そうだ」


思い出したように銀ちゃんは天井を見上げた。


「なーんかさびしいと思ったら、ここにシャンデリアがねーんだよ」
「シャンデリアぁぁぁ!?」
「シャンデリアって、この内装にシャンデリアっておかしくねっ!?」


まあ、確かに不釣り合いにもほどがある。


「…っていうか、そんなモノありましたっけ」
「あったよ確か。ホラ、意外に天井って見ねーじゃん。忘れてんだよお前」
「そーいえばあった気がするネ」
『あ、あとさあ、三階につながる階段はどーしたの?』
「三階!?そんなモノあったんスか!?きいてないよ」
『あー、アンタらはしらないけどね、タンスの裏側にあったんだよ。本当はそこが私の部屋なんだよ』
「マジっスか!?」


いやまあ嘘だけど。でも銀ちゃんもいけしゃあしゃあと嘘ついてるし、便乗。シャンデリアとかねーよ。三階も。


「じゃあ私の部屋!コレおかしいネ。こんな狭くないネ、バカにすんなヨ。三十畳はあるはずネ」
「三十畳ォォ!?押し入れ三十畳ォ!?リビングより広いじゃん!!」
「神楽、ちょっと三十畳は無理あるんじゃないのか?」
「じゃあ二十畳に譲歩してやるヨ」
「きいたことねーよそんな傲慢な譲歩!!」
「あと厠。確かウォシュレットついてたな」
「風呂場はガラス張りネ。もっとエロいカンジだったアル」
『玄関も高級マンション並みのオートロック式だった』
「あっ、僕も思い出しました。確か居間にカラオケついてましたよ」
「待てェェい!そんな所いじってねーぞ!そのままのはずだ!」


だって嘘だもん。この際だから好き勝手いじらせろ。


「こんな話をしってるか?」


ごちゃごちゃ言っていた二人が口を閉じた。


「昔なァ、江戸に人気を二分する二人の大工がいた…一人は長者の息子で腕もいいが、金回しもうまい五兵衛。もう一人はクギが打てりゃメシはいらねーと豪語する変人茂吉」


茂吉は立身出世なんざ興味ナシだったが、五兵衛は違った。なんとか茂吉を蹴落とし江戸の人気を独占できねーかと日々模索してやがった。やがて、いつからか茂吉の評判がおち始める。五兵衛の仕業よ。奴はその広い人脈を利用し、裏で根回しし茂吉にロクでもねェ仕事を回していた。無茶で難しい注文ばかり押しつけられ、茂吉は仕事がどんづまっちまったのさ。五兵衛の企み通りよ。茂吉の人気はみるみるさがり、五兵衛の天下がやってきた。…かのように思われたが、それはスグ去った。数年後には茂吉の人気は五兵衛を抜き、奴は江戸の頂点に立ったのさ。なんでか気になるだろ?当の五兵衛もそうさ。茂吉の元へつめよった。

「貴様ァ一体どんな汚い手を使った!?無茶な仕事を押しつけられ、どうにもならなくなっていたではないか!?」

茂吉は言った。

「おうそれよ。難しい仕事だったが、お陰で腕がも一つ上がったよ。本当にありがてー話さ」



「茂吉カッケェェェェェェェ!!」
「茂吉さんはきっと、だまされたことにも気づいてませんねソレ」
『ただ大工をすることが楽しくて仕方なかったんだろーね』
「職人ってよォ、そうゆうもんじゃね?」


そーだそーだ……で、茂吉って誰?

で、また翌日。


「どうだァァァ!くぬ野郎ォォ!!」
「これで文句ねーだろォ見たか!これが宇宙一の大工の腕だ!!」


居間には見事なまでに不釣り合いなシャンデリアとカラオケができていた。


「うわ〜スゴイや、ホントに三階もできてる」
「私の部屋は変わってないアルどーいうことネ」
「いや〜なかなかやるじゃねーか」
『文句無しの出来栄えだねェ』
「「よーしきたァァァじゃっ、俺達はこれで!」」
「あとは外だな」
「「そっ…外ォォォォォ!?」」
「ねェ私の部屋は!?」


外に移動。いや、この外見をどうする気?


「そっ…外って今さらどーしろってんだよ!?なんで今さら最初に言えよ!」
「オイ私の部屋は?無視してんじゃねーぞコラ」


神楽しつこいよ。お前はもう未来の猫型ロボの真似をしてなさい。


「いや、やっぱりさァ、なんか足んないんだよね。万事屋はさァ、もっとこう…こんなカンジだった気がする」


銀ちゃんが見せた設計図は国を超えていた。


「おいィィィィ足りないとかそういう次元じゃないじゃんまるまる違うじゃん!!パルテノンじゃん」
「そーだよパプペポンだよ」
「パルテノン!しらねーで言ってんのかいィ!?」
「そんなダサいのやーヨこっちにしてヨこっち!」
「天空の城じゃねーかァァ!できるかァァ色んな意味でできるかァ!!」


神楽、アンタ空飛びたいの?つーかもう外見とかいいじゃん、早く帰りたい。


「もォ無理だから!もォ帰るから!」
「わかった。じゃあ形は今のままでいいからとりあえず空飛ばせ」
「そこが一番問題なんだよ!!」
「もォホントに帰っ…」


逃げるべくダッシュした二人の前に、銀ちゃんが立ちはだかった。


「こんな話しってるか…」


で、また一夜明けて、にゅー万事屋に胸踊らせながら向かっていた。


『ねェ銀ちゃん、気になってたんだけど、茂吉って誰?』
「茂吉ィ?いねーよそんな奴。フィクションに決まってんだろ。簡単にだまされるんだもんな〜アイツら」
「そっか…でもいいんだ。茂吉は私の心の中で生き続けるから」
「いやだからフィクションだって言ってるだろ」
「それにしても楽しみですね。どーなってんでしょ家」
「俺前からパプポペン神殿に住んでみたかったんだよ」
「パルテノンね……ん?」


騒がしい人混みに何かと立ち止まる。


「なんかァ、空飛ばすとかいって変なモンつくってたらしいわよ」
「フハハハ。バカじゃないの。爆発してホントに空飛んじゃった」


万事屋は煙をあげて消滅していた。


「…誰か、茂吉を呼んでこい」


欲を丸だししてロクな事はないな。



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