煩悩が鐘で消えるかァァ己で制御しろ己で
《オ〜レ〜。オ〜レ〜》
「カトケンサッンッバァァァ!!」
「ウフフ。神楽ちゃん、いい加減にしなさい。アツアツのおでん顔にあびせられたいの」
年末。私らはお妙と新八の家で年越しを待っていた。つーかなんで年越し蕎麦じゃなくておでんなんだよ。怖くてそんな文句言わないけど。
「いや〜。やっぱ大晦日はこたつに紅白ですね、姉上」
「そうね〜。お父上が健在の頃は、三人こたつに入ってハジけたものだわ〜」
あれ?花見の時もじゃなかった?
「それにしても遅いな、銀さん。ジャンプ合併号買いに行ったきりですよ。架珠さん、迎えに行ったらどうですか?」
『えェ。やだよ寒いし』
「また事故って記憶喪失になってるかもしれませんよ」
いやまさか。と思いつつも気になってきた。
「大丈夫ですよ架珠さん。どこぞの娘と合併でもしてるんですよどうせ。ほうっておきましょ」
「カトケンサッンッバァァ!!」
「神楽ちゃん、アツアツのちくわ鼻につっこまれたいの」
段々お妙が怖くなってきた…。それもあり、一応の心配もしながら私は防寒して銀ちゃんを迎えに出かけた。私だってつい数日前まで記憶喪失だった奴の事くらい心配するさ。ジャンプも早く読みたいし。というわけで近場のコンビニに向かっていたのだが…。
『銀ちゃん、何やってんの』
爆発音があったかと思うと、すぐそこで銀ちゃんとなんか知らん男が道端に倒れていた。え、マジでなにやってんの。
「よく来た架珠!そのジャンプを死守しろ!!」
「ふざけんなァ!ここにきて二人掛かりとかねェだろ!!ジャンプ愛読者なら正々堂々最後まで戦え!」
「友情・努力・勝利のジャンプ三大原則を全否定したお前なんかに言われる筋合いはねェ!!」
何なんだ一体……ん?
『ねェ』
醜い争いを繰り広げる、今にも死にかけの二人に拾い上げた雑誌を見せる。
『これ、赤マルJだけど』
あ、死んだ。つーか気づけよバカども。遠くで除夜の鐘が鳴り響くのが聞こえたけど、こいつらの煩悩が消え去る事はないな。
next.
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