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「「『ドッリぃぃぃムキャッツァァ!!』」」


道場にうつり、私、銀ちゃん、神楽は担当の先輩に指導を受けていた。


「だから違うって。君達さ〜発音にこだわってばっかで全然気持ちが入ってないんだよね〜」
「気持ちッスか。先輩わかりました。なんか今ならやれそうな気がします。死ねェェェブサイク!!
「ぐはァ」


立ち上がった神楽は突き出した両手を先輩の顔面にぶつけた。


「ちょっ…気持ちってそれ殺意じゃん!何してくれんのォ!!」
「先輩への私の気持ちっス。受けとってください」
「いらねーよ!」
『うらァくたばれェェ!!』
「ぐほっ」


練習という名のリンチを銀ちゃんと神楽と先輩にやっていると、いつの間にか新八達はいなくなっていた。それから休憩時間の男子トイレに、私と銀ちゃんはいた。


「いででででででおまっ、もうちょいソフトに出来ねェのか!?」
『銀ちゃんもこんな荒かったっつの!』


茶髪のカツラをとった私は今度は銀ちゃんのカツラをとるため必死に引っ張っていた。一体化したんじゃないのもうこれ?全然とれねェ。


「いでででででで!!ヤベッ、これハゲる!絶対ハゲる!」
『とれたァァ!!』


ちょっとブチっていったけど気にしないでね。銀ちゃんの頭からサラッサラッヘアーのカツラがとれて、その下には見慣れたクルクル。


「あっーいったー。ご丁寧に接着剤までつけてやがるとはなァ」
『にしてもあんな一瞬でここまでやるなんて、一体どうやって…』
「銀ちゃん!架珠!」


神楽?


「やっぱアンタら、それの方がイカすぜ!」
「オイ、ここ男子便所だぞ。こいつは例外だが」


嬉しくない例外だな。


「やっぱりイカサマだったアルか。私、銀ちゃんも架珠もスッカリ宗教にハマってしまった思ったアル」


んなわけないっしょ。


「俺やコイツが宗教なんぞ信じる程信心深いと思ったか?どうせやるならこんなトコ潰してやろーと思ってな。探りいれてたんだよ」
「わ…私もネ。探りいれるためにだまされたフリしたアル。ごはんですよ如きでそんな」
「『ハイハイわかったわかった』」


笑顔ひきつってるし冷や汗出てるよ神楽。


「2人とも信じてないネ、ホントヨ。私だまされてないから!その証拠にトムのこと調べてきたヨ」
「ほォほォ」
「斗夢の奴は私達にやったようなデモンストレーションを、信者の前で何度か披露してるネ。ただコレが頭のハゲなおしてほしいとか、安物のバッグがほしいとかショボい夢ばっかり。簡単に実現できる夢ばかりを叶えているアル」


ホントにちゃんと調べてたんだね。


「事前に信者から夢をきいてりゃなんとでもなるわけか…」
『問題は私らのヅラにせよ神楽のアレにせよ、どうやって一瞬にして実行したかだよ』


マジ、魔法みたいに一瞬の出来事だったからね?


「目に見えねー程素早い奴のしわざとか…まさかな」
「忍者アル!私テレビで見たよ」
『忍者ァ!?』
「お前そんなベタな」
「フー」


ん?


「いててつーーーー。やべーな、また血ィ出ちゃったよ」


個室から出てきた黒ずくめの男が間を通っていく。


「いきみすぎたな。あーーーーいてて」


……なにあれ。


「銀さーん!架珠さーん!神楽ちゃーん!」


あ、新八。


「新八どーしたネ?」
「なんだ?ウンコか?ウンコもれそーなのか」
「たっ、大変だァ!姉上と花子ちゃんが!!」
『?』


なにごと?


「みなさ〜ん、残念なお知らせがあります。私達の仲間から裏切り者がでました」


新八に話を聞くと、斗夢の部屋に忍び込んだのがバレてお妙と花子が捕まり張り付けされていると。マジかよと最初に来ていた場所にコッソリ隠れて見れば本当だった。てか、なんで花子真っ黒な服着てんの?


「彼等は私の部屋に忍びこみ、教団を運営していくために皆さんから寄付してもらったお布施を、盗み出そうとしていました!これを許すことができますか!?」
「ふざけんなァァ!」
「死ねェェ!!」


信者達から石が飛んでくる。ちょ、私にまで飛んできてんだけど!


「いだっ!みなさーん、目を覚まして下さい。みなさんこの男にだまされ…いだっ!」
「てめェェ今石投げたな、顔覚えとくかんなァ!!てめっ、絶対後で殺すからな!」


…お妙なら本気でやりそう。


「私はこの者達に罰を与えたいと思う。だが、どのような罰を与えるかは皆にゆだねたいいだっ!?ドリームキャッチャーは願いを叶える力!皆さんでこの者達にどういった罰を与えたいか強く念じ…あだっ、ちょっ、痛いって。さすれば私達が手を下さずともこの罪人達に相応しい罰が下るはず!!」


ーーーーバキ!


「いだっー!!目いったー目!!」


ざまぁ。


「罰だと!?んなもん殺しちまえばいいだ!」
「そうだ殺せ!殺せ!」


消えろコールの次は殺せかよ。


「…決まったな。君達は死刑だ」
「やれるものならやってみなさいサギ師が…夢だ願いだとほえるだけほえて何もしない、全くめでたい人達だわ」
「お妙ちゃん…」
「あなた達の信じるイカサマ宗教が私達に通ずると思って?」
「フン。この期に及んで…その根拠のない自信はどこから来るのだね」
「私達はもっと確かなものを信じているからよ」
「確かなもの?なんだそれ…!」


ざわつき始めた信者達。お妙はにっこり笑って言った。


「仲間よ」


イカサマ宗教なんかより、ずっと最高だよね。


「なっ…なんだァァ」
「上に誰かいるぞォォ!!」
「なっ、なにィどこだ!?」


斗夢が走り出したのを見て合図を送れば、神楽がヒョコっと顔を出した。


「銀ちゃァァァん」


天井へと番傘を構える。


「そこねェェ!!」


弾丸は天井を貫いた。


「ドリームキャッチャー!!」


銀ちゃんの声が聞こえ、天井からパラパラと粉が降ってきた辺りに向かって走った。そこから黒い何かが降ってきて、私は足を振り上げた。


『見破ったりィィ!!』


渾身の力を込めて蹴り飛ばせば、蹴った物体は手すりに激突して床に倒れた。


『あ。忍者だ』


あれ?コイツトイレにいた奴じゃね?白目をむく黒ずくめの男には見覚えがあった。


「なんだァァ」
「梁の上から人が落ちてきたぞ!?」


信者達から戸惑った声があがる。顔を青ざめた斗夢が忍者に近づく。


「ちょっ、服部さん。アンタ困るよしっかり隠れててもらわないと。高い金はらってるのに!」
「も…もう無理。ケ…ケツに…おもっくそ二重にくらった」


木刀刺さって蹴っちゃったからね。


「てめェふざけんじゃねーぞ!お庭番衆リストラされて路頭さまよってるところを拾ってやったのに!アンタがいないと俺ただのオッサンだぞ」
「スイマセン。もうやめますわ。ここのトイレウォシュレットついてないしもうたえられませんわ、肛門が。じゃっ!!」
「おイイイ!!」


逃げちゃった。


「にっ、忍者だァ」
「なんで斗夢様が忍者を!?」


注目を集めながら屋根の上を忍者は見事に走って行く。すげー。


「まだ気付かないんですか?これがドリームキャッチャーの正体ですよ」
「!」


マイクを持った新八が登場。


「思い出して!この人の叶えてくれた夢ってなにか具体的な…ものがほしいとかそんなんばっかじゃん!」
『神楽、縄とくよ』
「ウン」


新八が喋ってる間に二人の縄をといていく。


「この人はねェ、入信時にあなた達の夢をあらかじめチェックし叶えられそうな夢だけチョイスして、あの忍者を梁の上に忍ばせ、その目にも止まらぬ速さで奇跡を演出してただけなんですよ!あなた達はだまされていたんです!」
「バ…バカな」
「そんなアホみたいな奇術に俺達がひっかかるわけねーだろ」
「そうじゃ!!わしなんてハゲてたのこんなフッサフッサにしてもら…あーコレヅラじゃねーか!」
「ホントだ!ジジーなんで今まで気づかなかったんだ!?」
「いや、抜け毛を最小限にしようとできるだけ触れんかったから!」


いやいやいや…奇跡すぎるよ。


「てめェェェ!!斗夢このヤローよくもだましやがったな」
「金返せてめェェ!」
「あわわ」


一歩下がった斗夢の背後にお妙、花子が立つ。


「教祖様何をしとんねん」
「こんな時こそドリームキャッチャーでしょ?」
「「助けてくれってホクロに願えや」」


二人に蹴り飛ばされた斗夢は怒り狂った信者達の中に悲鳴を上げて落ちていった。


「…アイツもウチらと同じかもしれへんな。夢に溺れて何も見えへんようなってもうた、哀しい男や」
「そうね。ただ違うのは、溺れた時に助けてくれる誰かが、仲間がいるかどうかってことじゃない?だから、私が溺れた時はお願いね、花ちゃん」


笑いかけたお妙に花子は手を握りしめた。


「あたり前や。今度は大阪の人情を見せたるで」


いい友達になれそーじゃん、この二人。


「架珠さん、銀さんが戻って来ないんですけど」
『え?』


どうしたのかと屋根に登ると、屋根のてっぺんの飾りのホクロに銀ちゃんは両手を突き出していた。


「……ドッ、ドリームキャッチャー。どうか僕をパチンコで大勝ちさせ…」
『何やってんの銀ちゃん?』


ハッと銀ちゃんは赤くなっていた。



next.

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