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「うらァァァァ!!」
「死ねェェコラァァ!!」
『どの面下げて来たんじゃワレェェェ!!』


悲鳴が聞こえた直後、私らは一斉にゴキブリに総攻撃。


「てめっ、一人で大きくなったよーな顔しやがってよォォ!!誰がここまで育ててやったと思ってんだァァァ!?」
『恩を仇で返すなんて何様じゃボケェ!』


ある程度痛めつけて大人しくなった頃、私らは攻撃を止めた。


「新八は?」
「見あたらないヨ」
『どこ行ったんだアイツ?』


まさか隠れてんのかとふすまの中を見るがいない。


「銀ちゃん…新八まさかコイツに」
「バカ言っちゃイカンよ。たかだかデカイだけのゴキブリに…」


ーーーーゲポッ.


「「『!』」」


ゴキブリが吐き出したものと一緒に出てきたのは見覚えのあるメガネ………。


「新八ィィィィ!!」
『出せェェェェェ!!てめっ、出せコラァァ!!』


さっきより強烈な蹴りを一斉にゴキブリに喰らわせる。


「何味だった!?新八は何味だったコルァ!!コーンポタージュか!それともめんたい味なのかァ!!」


スナック菓子かよ。


「銀ちゃん、定春もいないヨ。キノコの回以来見てないヨ!」
「何味だったコルァ!!たこやき味か!それともサラミ味なのかァ!!」
『味はどーでもいいわ!!』
「キシャアアアアアア」


は…?鳴き声を出しかと思うとゴキブリはピクリとも動かなくなった。


『オヤオヤ、泣いちゃったよこのぼっちゃん』
「泣いてすむならなァ、ポリスはいらねーんだバカヤロー」
「兄貴ィ、姉御ォ、マジこいつどーしてやりましょーか」
「とりあえず事務所こい…」


ーーーーバタンッ.


『?』


いきなりドアが倒れた?何故かとその先を見れば、埋め尽くす勢いの大量の巨大ゴキブリ大群。

…え゛……。

私らは白目をむいてフリーズしていた。


「だーこっち来るなってーの!一体どーなってんだ?」


わんさかわいて出た巨大ゴキブリ達から私らは襖の中に逃げた。這い上がってこないように銀ちゃんはゴキブリ達を踏みつけている。


「ゴキブリの逆襲かよ。こんなことならもっとゴキブリに優しくしときゃよかったなオイ」


ゴキブリに優しくって…私には無理だわ。


「オイ架珠!神楽!お前ら俺1人に任せてんじゃ…」
「エヘヘ。ゴキブリが三匹、ゴキブリが四匹、ゴキブリが五匹」
『銀ちゃん、神楽が壊れた』
「神楽ちゃァァァん!?ダメだよそんなもん数えながら寝たら!ネバネバの部屋に閉じこめられる夢見るよ!!」


さっきからペシペシ頬を叩くが神楽が戻ってこない。私だって現実逃避したいよ。これはマジで。


「オイしっかりしろ…!!」
『?どーし…』


…ゴキブリだ。神楽の向こうの壁を見れば、そこにはフッツーの大きさのゴキブリがいた。


「…………なんだコレ。なんで五朗?」


銀ちゃんが手にしたそのゴキブリの背中には、五朗と名前がついていた。何?コイツ五朗って名前なわけ?


『まさかペットとか?』
「ゴキブリなんかペットにする奴がいるかよ」


だって名前あるじゃん。


「しかし……妙なもんだな。いつもは見ただけで鳥肌モンだが、こんな状況じゃァな」


まだ可愛いモンに見えるよ、五朗が。


「運がいいぜお前。蜘蛛の糸ならぬゴキブリの糸だ」
『ゴキブリ、糸ないけどね』
「触角があるだろーが」


触角はのびねーよ。


「きっちり恩返ししてくれよな」


ポイ、と銀ちゃんはゴキブリの大群の中に五朗を捨てた。


「ぬおおおおお」
「『!!』」


なんだ!?


「銀サァァァン!架珠サァァァン!新八ただいま戻りましたァァ!!」
『新八!?』
「お前、生きてたのか!!」


なんか背中にでっかい殺虫剤背負った新八がゴキブリ駆除しながら現れた。


「何?僕がゴキブリ如きにやられるわけないでしょ。超強力な殺虫剤買ってきたんスよホラッ!」


手に抱えていた殺虫剤を銀ちゃんに投げ渡す。


「さっそくツキがまわってきやがった」
『イイ事はするもんだねェ』
「そんなことより外エライ事になってますよ」


エライ事?


「街中酢昆布ゴキブリがウジャウジャでもう大騒ぎ」
「やべーな。俺らのせいだってバレたら打ち首だぜ」
「なんか変な噂まで流れてましたよ」
『噂って?』
「こいつらが宇宙から地球をのっとるためにやってきた人喰いゴキブリだとか、背中に五朗って書かれた女王ゴキブリを殺さないと地球は滅ぶとか、もう勝手に話が大きくなっちゃってて」


私と銀ちゃんの、一切の動きが止まった。


「…新八君、もっかい言って」
「いやだから、背中に五朗って書かれたゴキブリ殺さないと地球が滅ぶんだって。もう笑っちゃいますよねアッハハハハ」
「アッハッハッ、ホント…笑っちゃうな」


笑っちゃうな、なんて言っておきながら銀ちゃんの顔はひきつってるし青ざめていた。


「俺、地球を滅ぼした魔王になっちゃったよ。アッハッハッ〜もう笑うしかねーや」
『ホント、笑うしかないよアッハッハッ』
「アッハッハッえ?え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」


笑うしかない私らに新八も察したのか血の気を引かせた。


「見たんか!五朗さん見たんか!ここにいたんかァァ!!」
「アッハッハッー。逃がしちゃったよ俺、地球滅ぼしちゃったよ俺」
「どどどどどどこぉぉぉぉ!?早く見つけないと…」
『見つけるっつっても、その大量のゴキブリの中に埋もれたよ』
「無理無理、もうどっか行っちゃったって。それよりステーキ食いに行こう、死ぬ前にステーキが食いたい」


殺虫剤を投げ捨て銀ちゃんは神楽を背負って歩き出した。つーか神楽百越えしたぞゴキブリの数。


「今日は好きなだけ食べていいぞォ。どうせみんな死ぬんだからヒッヒッヒッ。俺がみんな殺したようなもんさヒッヒッヒッ〜殺せよ〜」
『とうとう銀ちゃんまで壊れちゃった』
「ちょっとォォ!!銀さんしっかりしてくださいよォ!!」


なんかもう私は動く気力すらないよ…。


「銀さん!!」
『…ん?』


追いかけだした新八の足下をカサカサとうごめくもの…あれ?ゴキブリ?


『五朗ォォォオオ!!』


神楽の宝物、ピン子のサイン入り額縁を引っ剥がし五朗を追いかける。スパン、と居間を開ければ…。


『……定春?』


コタツから顔を出す定春。お前見かけないと思ったらここに居たのか。


『あ!』


ピタ、と定春の前で五朗が止まった。タイミングを見て叩かないと…。

ーーーーバン!!


『…………………………』


え゛。定春が潰しちゃったんですケド…。

世界を救った定春は、何事もなかったかのように寝始めていた。



next.

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