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ところ変わって、病室。


「なーにが食べ物は腐る一歩手前が一番うまいだよ!完全に腐ってたじゃねーかァ!!」
『うるさいな!アンタだって勿体ないですしね、とか言ってノリノリで食ってたじゃねーかァ!!』
「なんでも人のせいにしてんじゃねェ!!男は十六過ぎたら自分の胃袋に責任もてバーカ!」
「看護婦サーン、おかわりィィ!!」


私らは食中毒なんか忘れたかのように暴れ、食っていた。


「あっ、今日から入院った人達。仲良くしてね」


看護婦の内野ことウッチーがやってきて見れば、同室のマダオが隣で顔を青ざめてコッチ見てた。ああ、前回の爆発で入院してんのか。


「へェー、じゃあ皆さん長谷川さんのお友達なんだ。フフ、よかったね長谷川さん。これで入院生活もさびしくないじゃない」
「止めてくれ内野さん。コイツらとはただの腐れ縁」
「ちょいとちょいと。今腐れだとかそうゆう言葉に敏感だからやめてホント」


もう腐れものは食べないでおこう。


「しかしアンタもつくづくツいてねーな。謎のオッさんに襲われたって?この管理社会においてさァ、謎のオッさんに遭遇すること自体稀有だぜ」
『ある意味ミラクルオッさんだよ』
「ねェなんで人の見舞いの品当たり前のように食べてんの?」


うまいなバナナ。オッさんの事は黙っとこ。長谷川さん引いた事バレるし。


「長谷川さん見てたら食中毒如きで苦しんでた自分がバカらしく思えてきましたよ」
「アリガトネバナナのオッさん」
「いや、バナナのオッさんじゃなくてオッさんのバナナだからそれは」
「食中毒になった直後にもの食べれるなんて元気な人達ね。長谷川さんも負けてられないわよ、いっぱい食べて元気モリモリにならなくちゃ」
「なんで元気モリモリの人が食べてんですか?」


まだあるからケチケチすんなよ。


「じゃあ私仕事に戻るけど、みんな仲良くね」


ーーーーガン.


「いたた」


ウッチー思いっきりドアに頭打って行ったぞ。大丈夫か。


「…銀サン、やっぱりナースっていいですね」
「例えばさァ、7点の娘がいるとするだろ?だがナース服を着ることによってこれが10点になる」
「マジすか。じゃあ私がナースになったら大変アルヨ」
『私とか軽く万越えちゃうね。で、何点』
「「両者3点」」
「コルァ、どーゆ事だ。ゼロからの出発か?逆境からの出発か?コルァ」
『テメーらあんまナメてんじゃねェぞコルァ』


暴れまわってバナナ食って喉も乾き、銀ちゃんとマダオと病室を出る。


「どーもおかしい」
「『あ?』」
「内野さんのことだ」


タバコ吸ってるマダオを私らは飲み物片手に見る。いきなりなんだ?


「元からちょっとドジなところはあったんだが、最近は何かボーとしててな。人のバナナを食べたりとかそうゆうことする娘じゃないんだホントは」
「なんだァ、まだバナナのことひきずってんのか。チンパンジーの生まれ変わりかお前はコノヤロー」
『しつこいんだよ。それぐらい許せよ。ゴリラの次はチンパンジーかよ、もうウゼェよ』
「バナナのことじゃねーよ!!なんか調子悪いのかと心配なの!」
『…ん?噂をすれば』


廊下の少し先でウッチーを発見。


「何やってんだアレ?顔真っ赤にしちゃってどーしたんだ?」


私らはウッチーにバレないように近づく。


「病室のぞいてるみてーだな」
「ははーん。長谷川さん、こいつァ病は病でも別の病らしいぜ」
「オイオイまさか」
『あの病室ジジイだらけじゃんか。恋患いなんてありえないっしょ』
「ファザコンだよファザコン。しわだらけの玉袋見てたら死んだ親父の顔思い出したんだよ」
「なんで玉袋!?顔でいいじゃん!!お前玉袋って言いたかっただけだろ!!」


くだらね。


「……ん?うおっ!!」
『どした』
「なっ、なんだありゃ!?なんか変なのいる」


マダオが指差した先を見る。


「あれ?ありゃ確か…」


包帯巻いてベッドにいるのは紛れもなくエリザベス。てことはまさか…。


「『!!』」


いた!


「『ヅラぁぁ!!』」


ーーーーサッ.


「「『げっ』」」


大声出したらウッチー気付いちゃった。






「もぉーズルイよ。後ろからコッソリ見てるなんて……まァ、バレちゃ仕方ないか」


屋上に来てウッチーはとうとう言った。


「…そうなの。好きなの、あの人のこと」


え…マジでかウッチー。


「なんにもしらないんだけどね…担当でもなんでもないし。でも、前に廊下ですれ違った時、まっすぐでスゴクきれいな眼をしていて、気が付いたらいっつもあの人のことばかり考えるようになっちゃって」
「ウッチーよ、こういっちゃなんだが、奴ァヤバイぜ」
『そーそー。ああ見えて指名手配…「いいの!」


遮ったなウッチー。


「いいのよ。なんとなくわかってるから。あの人は私なんかが近づいちゃいけない別の世界に生きてる人だって」


しかも明日には退院するとか。


「このまま、何もしらないままで………キレイな思い出のまま………胸にしまっておくつもり」
「………いいのかよそれで」


すれ違いざまにマダオが聞く。


「……三人に話したら、なんかスッキリした。アリガト」


それから病室に戻り神楽達にもウッチーの事を伝えた。


「どうも桂さんはエリザベスのつきそいで来てるだけみたいですね」
「エリザベスも謎のオッさんにはねられたらしいアル」
「んだよ、謎のオッさんだらけじゃねーか。もう謎じゃねーじゃん、ただのオッさんでいいんじゃねーのか」
「そうもいかないでしょ…あ、そーだ。これからは短縮して「なっさん」と呼ぶのはどうでしょう?」
「どーでもいいわそんなこたァ!!」


謎のオッさんて、ひいたの私なんだけど…まいーや。


「銀サン、架珠サン。アンタら、あのロン毛の知り合いなんだろ。なんとかならんもんかね?」
「あ〜。キューピッドでもやろうってのか」
『奥さんに逃げられたキューピッドの矢なんて、ティッシュも射抜けないよ。ポッキーだよポッキー』
「ハツのことは言うなァァァ!!」
「大体、あんな堅物説き伏せるなんて無理だよ無理。カッチカチだぜ、中学生だぜ。それに俺ァ、奴に借りつくるのはゴメンだしな」
『私も』
「おめーら俺のコンビニ潰した貸しはいつ返してくれんの?」


私らは一斉に冷や汗流しながら明後日の方向を向いていた。


「…不幸続きでやさぐれてた気持ちをあの娘にゃ大分楽にしてもらったんだよ。あの娘にとっちゃ仕事の一つだったかもしれんが…色々元気もらったんだよ俺ァ。俺ももうスグ退院だし、何か返せるものがあるならよ…それに、お前よォ」


ん?


「いい女は幸せにならなきゃいけねーもんだ」




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