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「………すまねえ旦那、俺のポカだ。てめえ爆弾しこたま体に巻いてるとかじゃねえだろうな」
自分の失態に気まずそうにしながらザップは問う。
「何しろこの街で俺達を殺ろうって奴らは引きもきらねえ…」
ーーーーパチ…
「………」
誰も操作していないテレビが突然作動し、全員は意識をテレビへ向ける。
「何だ?急に」
砂嵐から、映像へと変わる。
『今犯人が機動装甲警察隊に挟まれるように護送車に向かいます。白昼堂々と起こったこの凶事に、周囲の住民は戸惑いを隠せずーーーー』
「あ。これ、さっき報道されてた銀行強盗ですね。捕まったんだ」
『お?何だ何だ!?護送を拒んでいるのでしょうか?』
車の前で犯人が動きを止めている。
『あーですね、今犯人がうずくまり…何か言っているようですが……?』
ーーーー直後、犯人の体が真っ二つに割れ陣が現れる。
一斉に薙ぎ払われた警察隊。召喚されたのは、異界の住人だった。
「白昼堂々街中で召喚魔術か」
「おうおう大胆なことで」
「呑気だな!!神業どころの騒ぎじゃありませんよこれ」
「ちょっと待って!!画像が変わるわ」
ーーーーザ.
『ごきげんよう。ヘルサレムズ・ロットの諸君。私だよ、堕落王フェムトだ』
テレビに映るのは、ヘルサレムズ・ロットを代表する稀代の怪人である堕落王フェムト。
『どうだい諸君?最近は。僕は全く退屈しているよ』
「うわ出た」
「やっぱりこの男の仕業だったのね」
「盛り上がってきたなー」
「一筋縄ではいかないということだ。気をつけろ」
『それもこれも皆君達のせいだぞ。口を開けて食べ物が落ちてくるのを待ってる豚どもよ。この本当に下らなくて息苦しい世界を作ってるのは君らだ』
うわームカつく。名前の感想にザップが頷く。
『だからね、だから僕はまた遊ぶことにしてしまったよ。ごめんね』
千年生きてあらゆる魔導を練り上げたという逸話…血界の種族、ブラッド・ブリードだという噂もある。
『さて、今回のゲームのルールを説明しよう。君達が今見ている邪神は僕の精巧な術式をもって半分に割ったまま生かしてあるものだ。まあ、半分でもご覧の通り。手を触れちゃダメだよ。まあ、その前にスッパリ両断されちゃうだろうけどね。で、気になるのは残りの半分な訳だが…当然今この街のどこかで絶賛召喚中だ。こいつがもし半身を得て合体したら…おお、おお、考えただけでも恐ろしい。この街はおろかそれを包む結界すら切ってみせるだろう。それが何を意味するか賢明な諸君なら分かるよね。そうなる前にゲートを発見し破壊したまえ。制限時間は117分。何だって?手がかりが少なくてゲームにならない?大丈夫。僕を誰だと思ってるんだい。ちゃあんとチャンスタイムを設けているよ。ゲートは13分に一度1ナノ秒だけ解放するようにプログラムした。半身の本体が出て来るには短いが、触手刀で周囲を斬撃するぐらいは容易なものだ。つまり13分に一度街のどこかでまっぷたつパーティーが起こるって寸法だ。君達はそれを手がかりにすれば良いのだよ』
「チェイン!!各位に連絡。階上にて反応検出に備えてくれ」
「了解」
「ザップと名前は待機。いつでも出られる様にしておき給え」
「おーいす」
「はい」
クラウスの指示にそれぞれ返事をする。
『…さあ、最初の解放がもうすぐだ』
3
「…あのヤロウのことだ。えげつないほどデカイのが来るぜ」
2
「街の何処でも一発で分かる奴がな」
1
ーーーーズウ゛.
ゲートが開いたのは、今この場所だった。
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