風邪引いて優しいとかベタだよね
私が所属する第七師団隊というもののトップは、夜兎という種族のまだ少年だ。だが夜兎というだけあって戦闘能力はバカにならないし、しかもドン引きするほどの大食いだ。しかも強い奴大好きっ子という戦闘バカで我が儘で自分勝手で、よく同僚が言っている言葉を借りればスットコドッコイな奴だ。
…一応私も夜兎だが、別人種なんじゃないかと最近、すごく思うようになってきた。
特に地球に言ったあの時、あのお侍さんにあってからは機嫌が良さげで、ことあるごとに私の上司は鬼ごっこという名のデスマッチを仕掛けてくる。仲間に間違いなく殺される、というなんとも悲しい現実が垣間見えた事もあるほど、アイツはマジだった。いつか私はこの宇宙の星の一部になるんだ、と毎日思ってしまう。
『まあ、今日はそんな心配もいらない』
鼻声で、しかしウキウキした声で私は自室のベットに横になりながら呟く。頭はガンガンするし、喉は唾飲み込むたびに皮が剥けたみたいに痛い。
まあ、世間一般に言えば私は風邪を引いたのだ。
『ダルい〜。でも、これで安らかな1日が過ごせる』
風邪引いて安らかな1日って、自分で言っててなんだか悲しい気分だけど…。
『にしてもお腹空いた――ドゴオォォッ……』
「や、名前」
『死に神が来たァァ!!!阿伏兎ォ助けてェェェ!!』
ダルいのも忘れて私はベットから飛び起き壁へと後ずさった。
だって目の前にオレンジ頭がいるんだもの。目の前にいつでも人をバカにしたような笑顔を浮かべている奴がいるんだもの!!
『ッッ!ヒッ…』
――――ドガァッ!!
目の前に迫っていた拳に火照っていた頬からは一気に血が引き、私は間一髪でそれを避けた。
ちょ、壁に穴が!壁に穴が!!
「なんだ、風邪引いたって聞いたからお見舞いに来たけど元気そうじゃん」
『命かかれば病弱だろうと誰だって死ぬ気で避けるわ!』
笑顔で目の前にいる上司、神威団長に私は怒鳴る。
なんて奴だ、風邪を引いてもこんなデスマッチをせなならんなんて…。
「ふーん、せっかく俺が名前にお粥を持ってきてあげたけど…」
なにっ!?
「そんなに元気ならいらないよね。よかったよ、俺ここ来るまでに食っちゃってたからさ」
『なんで食べちゃうのォ!?』
「お粥があったから」
『なにその理由!!理由になってるようでなってないからね!?』
私のお粥がァァァ!!
『う゛っ…』
あー気持ち悪い…お粥が食えると思えば目の前のスットコドッコイに食われるし、精神的ストレスバロメーターは上昇中だし…。
『あーもうダメだ…てことで団長、部下を労う気持ちがあるならでてってください。今すぐに』
「来て早々に失礼だなァ。団長として慕うなら部下として上司の俺にお茶の一つぐらいだしなよ」
『今の私の状況見て言ってます?私病人なんですよ、一応』
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