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それから二人に別れを告げて、私は帰りながら銀さんをキョロキョロと探していた。


『……源外さんとこついちゃった』


でも、見つかることはなくて、神楽ちゃんが言っていた別れた場所まで来てしまった。


『もう帰らなきゃ…』


夕日が沈んで赤と青のグラデーションの空を見上げると、私は気分が沈むのを感じながら足を踏み出した。

結局、今日も会えなかったな…。


『会いたいよ、銀さん』


ふてくされたように歩きながら、ぽつりと呟く。道の脇に立つ常夜灯が点いて、足元が明るくなった。


「ちょいとお嬢さん。こんな夜道に一人歩きは危ないよ」
『えっ…』


下に向けていた視線を前へとやる。常夜灯の下で、壁に背を預けてこちらに笑いかけている男の人。

うそ…。


『ぎんさん…?』


あまりの驚きに、言葉に詰まりながらも名を呼べば、銀さんはこちらに歩いてきた。


「万事屋帰ってみるとお前が来てたって新八に聞いてよ。先回りして待って…ごふっ!!」


私は最後まで聞かずに銀さんに抱きついた。ちょっと鳩尾に頭がヒットしちゃったかもしんないけど気にしないでおく。


「ちょ…名前ちゃん、鳩尾にヒットしたんですけど…」


やっぱりヒットしてたか。

いつもなら謝るけど、今はそんなのもめんどくさい。ぎゅう、と回した腕に力を入れると、銀さんも抱きしめ返してくれた。


「え、なに?いつにも増して積極的じゃん」
『うん』
「うんって…あんまり銀さんを刺激しないでほしいんですけど」
『…だって、銀さんに会いたかったのにずっと会えなくて…会えて嬉しいの』


嬉しさに緩んだ顔で見上げながら銀さんに言うと、面食らった顔をされた。そんなに意外か。
そうムッと言い返そうかと思っていると、ぐいっと頭を銀さんの胸におさえこまれた。


「ああ〜〜〜」
『銀さん?』


唸りだした銀さんを戸惑いながら呼ぶ。


「…名前、あんまりそんなカワイイこと言わないでくれる?」
『カワイイ、かな…』
「銀さんがカワイイって言ったらカワイイの」


なんだそれ。まあ、銀さんらしいけどさ。

思わずクスリと笑っていると、銀さんが体をはなして手を差し出してきた。


「ほら、帰るぞ。おくってやるから」
『ありがとう』


笑顔でお礼を言いながら、私は差し出された手をとった。銀さんは私の歩幅に合わせて歩き出した。


『銀さん、ハムスターは捕まったの?』
「それがよォ、あとちょっとってとこで銭湯の排水口に落ちやがって」
『銭湯まで追いかけたの?てか落ちちゃったって大丈夫なのハムスター!?』


まさかのことにぎょっとしながら私は銀さんを見る。


「もうあいつは諦めてその辺で見繕うさ」
『相変わらずいい加減…』


依頼者に同情する…。


「大体逃げるってことは飼い主の管理がなってなかったって事だろ。自分で逃がしちまったんだから、あとは仕方ねェ」
『出たよ。銀さんのすぐ人のせいにするクセ』
「人のせいじゃなくて本当のことを言っただけですぅ」


本当のことをって…。

でも、一応一生懸命捕まえようとしたのか、よく見ればところどころ痣やすり傷ができていた。


『…家に帰ったら、時間までに手当てしてあげるね』
「今日は夜勤なのか?」
『うん』
「病院までおくってやるよ」
『そう?じゃあお願いする』


久しぶりの会話に、気分は最高な私。今日の夜勤張り切って頑張れそうだよ。


「にしてもよくあのナース長と一緒に働けるよな」
『優しいときは優しいよ』


厳しいときは厳しいけどさ…。


『そういえばナース長が、もう入院するなって言ってたよ』
「好きで入院してるわけじゃねェっつの」
『…銀さん』


ん?と見てきた銀さんの頬にちゅ、とキスをした。


『もう入院、しないでね』


少し言い聞かせるように言えば、驚きに固まっていた銀さんは仕方ない、という風に息を吐いた。


「名前のために努力する」


言って銀さんの顔が近づいてきたので、私はゆっくりと瞳を閉じた。

でも、きっと銀さんは約束を破るだろうから、その時は、全身全霊をかけて私はお世話しようと思う。もちろん、新八君や神楽ちゃんも。


『銀さん、明日はヒマ?』
「仕事が入らなければ」
『じゃあヒマだね』
「じゃあってなんだ」


明日は貴方にきっと会える!


END.
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