01
例えば、そう
非現実なんて有り触れていたわけで
でも、だからといってこれはちょっと
《取り敢えず、どうしましょう》
あはは………と、沢田綱吉は渇いた笑顔で黙り込むメンバーを見回した
と言うのもそうするしかなかったからだ
「(ほんとどうなってんのーっ!?)」
見上げれば真っ青な空、これはいい
見渡せば深緑の森、これはちょっとおかしい
見詰めた何故か子供になってる仲間、これはかなり異常事態
見下ろしたオレの手、これまた小さくて頬が引き攣った
「じゅ、十代目………」
「ははっ、夢でも見てるみたいだな!おもしれー」
「この野球馬鹿が!他に何か言うことあるだろーが!!」
「(ごもっともーっ!)」
今の状況を理解しているのかしていないのか(多分後者)、小さくなっているにも関わらずTHE☆天然発言をかます山本に獄寺がブチ切れた様子で怒鳴りつけた
しかしその怒りは真っ当なもの
確かにツナ自身、非日常にはだいぶ慣れたと思っている
赤ん坊が家庭教師になったり、マフィアになれだの言われたり、命懸けの戦いをしたり、未来に行ったり
「(って、もしかして非日常で済まされないレベルなんじゃ………)」
今更ながらに体験してきた非日常の強烈さに至極当然の思考が過ぎる
と言うより現代に帰るはずだったのにどうして見知らぬ場所にいるのだろう
ワープ時にはいなかったカエル頭が見えるのがひじょーっに気にかかる
が、ツナの心配や考えは誰にも伝わらない
ぎゃーすか喧嘩(かなり一方的)を繰り広げる二人を前に銀色の軌跡が翻った
「うるさいよ、僕の前で群れるな。……咬み殺す」
「って雲雀さんー!?」
「相変わらず物騒ですねぇ」
「お前もなんでナチュラルにいるんだよ骸ーっ!!」
「僕に不可能はありませんから」
「ある!!あるから!!」
復讐者の牢獄にいるはずの仲間(だとツナは思っている)は決死のツッコミに対してクフフと笑いながら肩を竦め、その存在に一気に殺気を膨らませた雲雀がトンファーを構えて飛び掛かる
もう咬み殺すの文句もない
ツナとてこの二人が万が一、いや億分の一にも大人しくしてくれるなんて思っていたわけではないがさすが最悪の組み合わせ、訳の分からない現状なんて二の次らしい
あああ………とうなだれるツナに何故かいるフランがポンポンと肩を叩いた
「大丈夫ですよー、師匠は面倒臭い人ですけど強いですしー、あれクロームネーサンの体なんでその内引っ込みますし」
「余計ヤバいよ!!」
見た目骸でもクロームの体なんだよ!?しかもあいつ幻覚!!と叫ぶツナに「大慌てですねー」とのんびり呟くフラン
飛んできてカエルに突き刺さった三叉槍のダメージはゼロらしく、痛いですーと口先だけの泣きまね
普段なら「てめぇ恐れ多くも十代目になんて口聞きやがる!!」と割って入る獄寺は残念ながら山本と言い争い真っ只中
相変わらず二人も仲がよろしくない
「フラン君が冷静な方が分からないよ………」
だが悲しいかな、多分現在のメンバーでは一番話の通じる常識人
のんびりさ加減はともかくフラン君がいてよかったーとツナが思っていれば微妙な顔をされた
曰く
「だってミー、これでもヴァリアーの一員ですよー?」
「そうだったーっ!!」
そりゃあの荒くれ集団にいれば図太くもなるのも頷ける
思わずツナが絶叫すればやっと気が付いたらしい、獄寺が瞬く間に険しい顔でやって来ると「十代目に近寄るんじゃねー!」と威嚇
いや、獄寺君から離れてったんですけど
気のせいかカエルの帽子も呆れている気がする
山本も山本で「おー、スクアーロの後輩だったよな!お前も来てたんだなー」と言うだけで気に留める様子もない
雲雀はと言えばどろんと骸がクロームに変わってしまったために不機嫌全開
可哀相なのはクロームで「ボス……ここ、何処?」と雲雀の殺気に堪えながら消え入りそうな声できょろきょろと辺りを確認している
「(常識人が増えたけどなんかさっきよりカオスになったーっ!?)」
果たしてこんなメンバーで意味不明な状況を何とか出来るものだろうか
最初にしなければならない疑問に関する会話だってしていないのに勃発する喧嘩という名の大乱闘
話し合う前に気力が尽きそうだなぁ、とツナは遠い目をして現実逃避を計るのだった
.