三者面談






「あっ、獄寺。明日お前三者面談するから」

「………………は…あぁ!?」



山口の言葉に獄寺は固まった。




〜シロガネの嵐・番外編〜




♯ 三者面談 ♯



「ききき、聞いてねぇぞんなことッ!」

「言ってないもん、今言ったし」

「もん、じゃあるかァッ!」



獄寺の焦りを山口はサラリと流した。



「つーか何でそんな焦ってんの?」

「……………親類っつう親類がアネキしかいねぇからだ」

「あぁ、ビアンキ先生か?いいじゃんよ、ビアンキ先生」

「アネキってのが問題なんだよ、アネキがァッ!俺を殺す気か!?」



獄寺の必死な叫びに山口は首を傾げた。



「何でそんな嫌がんの?」

「な・ん・で・も・だ!とにかく俺は出ねぇ!絶っ対出ねぇからな!?意地でも出ねぇ!帰るっ!」



そう言って逃げるように走っていく獄寺。



「あっ、オイ獄寺!…ったく、困ったヤツだな…」

「お困りのようですな」



どうしたもんか悩んでいる山口に話しかける声があった。



「お前は…リボーン、だったっけか?」



それは占い師のコスプレをしたリボーンだった。



「ちゃおっス。相談承ってまわってまわってまわっておりますぞ」

「お、おぉ…よろしく…」



山口は戸惑いながらもとりあえず頷く。



「三者面談か…まぁ、獄寺にビアンキはキツいだろうな」

「そうなのか?」

「あぁ。まぁ俺に任せとけ」



ニッと年に似合わないニヒルな笑みを浮かべリボーンは去っていった。




■□■□■




翌日。




「おい獄で──」

「嫌だ」

「まだ何も言ってないんだけど」

「テメェの言いてぇことは読めてんだよ!嫌なもんは嫌なんだ!つーか俺がここで懇談してなんの意味があんだよ!」

「一応、形式状いるんだよ。それに今日来るのビアンキ先生じゃないらしいからいいだろ?」

「……どういうことだ?」



山口の言葉に獄寺が一旦落ち着く。



「リボーン?あの子に頼んだんだよ」

「リ、リボーンさんに?」



うわぁー…正直嫌な予感しかしないんですけど…。

獄寺の頬を冷や汗が伝う。



「そろそろ代わりの人が来るって…」



山口がそう言った時だった。



「かーっ、何だ何だこの野郎だらけのムッサい空間は!プリプリのプリティーな乙女が一人もいねぇじゃねぇか!」



廊下に響く、男の文句。



「………………っ……」



この声及び発言と一致する人間は一人しかいない。


──来るな来るな来るな…頼むから来ないでくれ…!


獄寺は頭を抱えながらそう祈った。

だが、その祈りは儚く。



「あー、癒しがねぇぜ…お、いたか…よぉ隼人。ビアンキちゃんに来られるのが嫌だーって駄々こねたんだって?」

「うるっせぇこの変態スケコマシがぁぁぁぁぁッ!」

「おぶっ!」



教室に入ってきたその男に、獄寺は容赦ない飛び蹴りを繰り出した。

その男とは言わずもがな、「トライデント・シャマル」と謳われる殺し屋…Dr.シャマルである。

「おー痛ェ…おい隼人、このハンサムフェイスに傷がついたらどうしてくれるんだ?」

「知るかボケ!」

「ったく、なってねぇなぁ近頃のガキは…。…お?…メガネ外した方が美人だぜぇ、先生」

「おいゴラシャマル!節操って言葉知らねぇのかテメェッ!」

「何だよ隼人、ナンパの邪魔をすんじゃねぇ」

「ナンパしに来たんならさっさと帰れ!つーかそうじゃなくても今すぐ消えろォッ!」

「ごちゃごちゃうるせーガキだなぁ…あーヤダヤダ、これだからガキは…」

「ガキガキ言うなッ!」

「ガキだろうが」



獄寺の罵倒を軽く流すシャマル。

怒涛の勢いについて行けなかった山口だったが、しばらくしてハッとし不思議そうに尋ねた。



「その人獄寺のお父さんか?」

「はぁぁぁああっ!?ふざけんなよ山口!こんなのと血ィ繋がっててたまるか!」

「全くだ。こっちがお断りだっつーの」



全否定する二人。獄寺はプイッと顔をそらした。

山口は二人を見比べて、やはり不思議に思う。



「でも髪型一緒じゃん」

「──………っ…!」



山口がそう言った瞬間、獄寺の顔が一気に真っ赤に染まる。

そんな獄寺を気にせずシャマルが前髪をいじりながら答える。



「一緒って…これはガキん頃に隼人が──」

「だああああああああああああっ!うっるせぇぇぇぇぇぇぇぇえええええッ!」



シャマルの声を遮るように獄寺が絶叫した。



「…お前が一番うるせぇよ」



呆れたようにシャマルが頭を掻く。

獄寺は悔しそうに顔を俯かせぷるぷると震えたかと思えば、急に顔を上げキッと二人を睨み付けて叫んだ。



「──帰るッ!」



荒々しく教室のドアを開け、足音荒く走っていく獄寺。

「あっ、オイ獄寺!」

「ほーれ見ろ、やっぱりガキじゃねぇか」



山口が獄寺を呼び止める横で、シャマルはクツクツとこらえきれないといった風に笑っていた。

リボーンから説明を一切受けていない山口はおずおずとシャマルに尋ねる。



「あのー…獄寺とはどういったご関係で?」

「大した関係じゃねぇですよ。ガキの頃からアイツを知ってるってだけで」



軽い敬語で話すシャマル。



「……あなたも、マフィア関係ですか…?」

「まぁそうなるかな…。そんなことより先生、今度デートしない?」

「それはちょっと…」

「なぁんだ、つれねぇなぁ子猫ちゃん」

「(子猫ちゃんだなんて言ってる人初めて見た…)」



山口が若干引き気味にシャマルを見ている中、シャマルはふっと薄く笑った。



「ったく…あの馬鹿は昔っから世話が焼ける」



山口はやっぱりよくわからず、首を傾げるばかりだ。



「なぁ、先生さん。あのガキは馬鹿だから言ったって聞きゃしねぇ…頼んでもいいか?」

「は、はい」



とりあえず頷く山口。



「ボンゴレ坊主のためにがんばりたいっていう気持ちはわかるんだが、いっつもアイツ空回りしちまうんだ。アホだからな。だから、」



──見守ってやってほしい。


──走ってコケちまった時は手を貸さなくてもいい…ただ叱咤激励をしてやってほしい。



「まぁそれでボンゴレ坊主があたふたするのを見て楽しむってのもなかなかいいんだがな」



頭をガリガリと掻くシャマルを見て、山口はクスリと笑った。



「いいですね」

「はい…?」

「仲良しの親子って感じですよ」

「は…冗談。あんなガキのお守りはもうこりごりだぜ」



鬱陶しい、と顔をしかめるシャマル。

「さてと…先生はデートに行ってくれねぇみたいだし、俺はそろそろハニー達に会いに行かないとなー。待っててハニー達ーっ♪



ロクに話をしないまま、シャマルはバイビ〜と言いながら去ってしまった。



「温かい奴らなんだな、ボンゴレっていうのは…」



一人残された山口は、その場で楽しそうに笑っていた。

これは山本やヴァリアー達が来る少し前の話…




fin...

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