雨の日の別れ






……その知らせが届いたのは視界も霞むような、雨の強く激しい日だった



「え………骸が、死んだ?」



どうしようもなかったのだと、呆然とする綱吉達に誰かが言った

単身で諜報任務にかかり、見事に役目を果たして帰国する途中に倒れた骸

幼い頃の人体実験のせいで埋め込まれた異物、六道眼

本来ならばそれは共生するはずのもので、また骸の場合も例外ではなかった

ただ、実験のせいで彼の体は免疫力及び抵抗力のつきにくい体になっていた

治りにくい病ではあるが治療の術が見出だされていた病

けれど骸の体には堪えられるはずもなく、助ける術もなかったのだと



「嘘………」



葬式の夜も雨が横殴りに降っていた

大地を削るように、穿つように降っていた

黒い棺の中、横たわる骸は眠っているようにしか見えなくて、今にも目を開いて「冗談が過ぎましたね」と食えない微笑を浮かべてくれそうで



「なんで死にやがった………!」

「はは……今にも動きそうなのに、もう、動かないんだな。もう、お前に、会えないんだな………」

「骸、さまっ………むく、ろ……さま!」



やり場のない思いが、溢れるやり切れなさが守護者達からこぼれ落ちる

ある者は俯いて、ある者は泣いて



「勝ち逃げしてもいいなんて誰が言ったのさ」



ある者は怒って、花を入れた

死に顔すら眠る美しさを保つ、若い青年に花を捧げた



「カスが………」

「餞別だぁ」

「なんで……死んじゃったんですかー………まだ、ししょーに教わってないこと、たくさんあるんですよー………?」



棺が埋まる

次々に、次々に手向けられる花によって

骸を知る者によって、棺が埋まる

二度と、顔すらも見えなくなる別れのカウントダウンを刻むように

横たわる体を焔に包む時間を数えるように



「ごめんな、骸………」



最後に花を手にしたのはボスの綱吉だった

棺の傍らに膝をつき、そっと中を覗き込んで「ごめんな」と柔らかい、今にも泣き出しそうな声で口にする

一人で行かせてごめんな、一人で死なせてごめんな、看取れなくてごめんな、助けられなくてごめんな、



「まだ、生きていたかったよな………?」



復讐者の牢獄から助け出して少し

もっと生きるはずだった、ずっと先まで馬鹿みたいな言い合いをするはずだった、うんざりするくらい長生きするはずだった

骸も仲間なんだって、少しずつでもいい、教えるはずだった綱吉の予定



「ごめん、ごめん骸………!」



一人で孤独を抱えた骸、一人で憎しみと仲間を支えた骸

悲しみを見せようとはしなかった、本当は誰よりも優しかった、残酷にしか生きられなかった青年



「ありがとう、なんて……迷惑、だよな」



散々な人生でしたね、と

そういって息を引き取ったのだと聞かされた

少ない光りを守りながらマフィアを許すことなく、散った命



「お前に幸せを、教えてやりたかったよ」



皆の気持ちを、ボスは歌う

次こそはきっと、君を幸せにーーー




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