覚えていないなら





※SS気味






「泣いていいよ」

そんな言葉が聞きたいわけじゃない

「普通に笑ってよ」

そんな要求を叶えるのは苦痛なだけ

「縛られないで」

そんな台詞で解き放たれる訳がなく

「大丈夫だよ」

そんな単語で癒される痛みではない



「僕は、マフィアも君達も大嫌いです」

「俺達は骸が好きだよ」

「とんだ戯言ですね」



重なる金色、赤銅、漆黒に白金、深緑に黒曜

遠い過去の失われた遺物

孤独を刻み込んだ右目に宿る定め



「君達となんか出会わなければよかった」

「君から来たんじゃないか」

「………いいえ」

「何言ってんだてめぇ、お前から来たんだろーが」



途切れない絆とでも言うように偶然の出逢いーーー再会を輪廻の先で果たした

皮肉だと、青年は嗤う



「君達なんかーーー」



大嫌いです、大嫌いだった

とてもとても、大切だった

顕れたのは向こう側からで

もう二度と会わないと離れ

巡る先でまた伸ばされた手



「君達なんか、存在しなければよかった」



形すら忘れた最初の願い

歪んで流れた数多の流星

ただ一人で繰り返す物語



記憶がないなら出逢いたくなかったと青年はオッドアイを揺らす




暗闇に独り、闇を切り裂いたあなたも私を見つめてくれた人も誰もいない



優しい言葉も甘い言葉もいらない

記憶のないあなた達に、される覚えはない





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