「ねぇ、」
「あ?」
「好きだよ」
「知ってるよバーカ」
背中合わせにそう呟けば、小さなため息とともに悪態混じりで返事が返ってくる。
一体何回このやり取りを繰り返したろう。この満天の星空の下で。毎年11月18日の夜中、二人だけの秘密の時間、刹那的な永遠のような時間。
夜空に瞬く星たちが優しく私たちを包み込む。
「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」
「季節が違いすぎるだろ…っつうか、どっかで聞いたことあるフレーズだな」
それはそうだろう、私が昨日カラオケで歌った歌だ。
「ねぇ、今何時?」
「12時ちょい前」
「まだそんな時間なんだ…」
私たちがここに来てからまだ1時間もたってない。やっぱりこの時間は刹那的に永遠だ。
背中から直に伝わる彼の温度は、じんわりと温かい。ほかほかと体と心が温まる。
人一倍体温が高い彼に「子供みたいだね」と言ったことがある。今年初めて雪が降った日の朝、初めて同じベッドで同じ朝を迎えた日。私含め、中も外も全部冷たかったのに、彼だけはまるで世界が違うかのように温かかった。
その時の事を思いだし、私はクスリと笑みを溢す。
「…どうした」
「いや、やっぱり子供みたいだなぁ…って」
そういうと彼は、金色に染まった自分の頭を掻きながら、みるみる間に苦い表情に。
やはり25にもなる大の男が、年下の女から子供扱いされるのは何処か嫌なものがあるらしい。
「ゴメンゴメン。別に子供っぽいとかそういう意味じゃなくてね…」
「…」
拗ねた様子でそっぽを向く彼に、必死で引っ付いている…その時だった。
「「あ」」
視線は空。二人の声が被る。そしてそれを皮切りに空に降り注ぐ大量の星。
シン、と辺りは静寂を保つ。私たちの間にも言葉はなく、ただ星だけが綺麗に降り注ぐ。
「…綺麗、だな」
「…うん」
そんな月並みの会話しかできないほど、空は圧倒的に感動を私たちにもたらす。
毎年必ず見ているこの流星群は、年を重ねる毎に流れる星が増えていくような、そんな気がする。
「二人がずっと一緒にいられますように」
「願い事か?」
「うん」
自分でも信じられないほど穏やかに笑いながら、願い事をそっと口にする。
そんな私の様子を見た彼は何か感じるものがあったのだろうか、グイと私を自分の方に引き寄せ、小さく呟いた。
「…当たり前だろ」
「…うん!」
降り注ぐ星の下で、甘い甘いキスをする。
この時間は確かに永遠だった。
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