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周は走っていた
距離にして50mにある氷屋を目掛けて

下駄の鼻緒が途中で切れてしまったがそんなのはどうでもいいようだ。
目的地に着くとドアを強く叩く

もう空は暗く時間でいうと丑三つ刻
辺りには誰もおらず聞こえるのは自身の吐息とドアを叩く音ほどだ。


「ああ?どちらさん… 随分珍しいお客さんだ」

暫くして出てきたのは平助であった

「ッ…! へいすけ、へい、すけ」

今まで我慢していた糸がぷつりと切れたように
グズッと、らしくもなく泣きながら平助に抱きつくのである。

幼少の頃からの友といえば平助ぐらいしかいない
あの頃は身分などという隔たりもなく接していたのに歳を重ねるに連れ平助以外の人々は周から離れていった。

「とりあえず上がれ」

もしかしたら追手がいるかもしれない。
そして、こんなところを人にでも目撃されたら大問題である

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